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焦点:米アマゾン、中国ロジスティクス事業拡大が示す野心
2016年2月14日 / 02:35 / 2年後

焦点:米アマゾン、中国ロジスティクス事業拡大が示す野心

 2月9日、米オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コムは、中国でのロジスティクス事業を積極的に拡大している。写真は配達前のアマゾン宅配ボックス。米マンハッタンで2016年1月撮影(2016年 ロイター/Mike Segar)

[サンフランシスコ/上海 9日 ロイター] - 米オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)は、中国でのロジスティクス事業を積極的に拡大している。数十億件もの商品発送に伴うコスト上昇を抑える幅広い取り組みの一環だ。

中国に提出された申請書類によれば、アマゾンの中国計画には、日本、欧州、米国の港湾に向かう商品に関する貨物取扱いと通関手続きが含まれている。

こうした動きによってアマゾンは他社にも配送サービスを提供できる立場となり、いずれは米貨物輸送大手のユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)(UPS.N)やDHLといった企業と競合するようになる可能性があると一部のアナリストは指摘する。

それは、同社内でもっとも速いペースで成長しているクラウド・コンピューティング部門「アマゾン・ウェブ・サービス」の戦略と重なる。このサービスが開始されたのはアマゾン自身のリテール事業のためだったが、現在では他社のデータもホストしている。

シアトルに本社を置くアマゾンの商品配送コストは直近の四半期で前年同期比37%増えており、コスト抑制を求める株式市場からの圧力に直面している。

同社の広報担当者からはコメントが得られなかった。

アマゾンは中国での計画について、中国当局への提出書類のなかで明らかにしている。

アマゾンは昨年、輸送機関を自社で保有せず、他社の輸送機関を利用して貨物運送を取り扱う「非船舶運航業者(フォワーダー)」として、中国子会社のBeijing Century Joyo Courier Serviceを中国運輸省に登録。これによって中国から他国に貨物を輸出することが可能になった。

また11月には、アマゾンの中国子会社が米国海運委員会にも同様の申請を行っている。

さらに同社は、上海─ロサンジェルス間、上海─独ハンブルク間を含む12の通商経路に関して、海運仲介業を営む許可を上海海運取引所に申請している。

「これらは主要なゲートウェイ港湾だ。アマゾンは大規模なフォワーダー事業に向けて基礎を固めているように見える」と、ロジスティクス分析を専門とするトランスポート・インテリジェンス社を率いるジョン・マナーズベル氏は語る。

アマゾン中国子会社は上海海運取引所に提出した書類のなかで、上海からハンブルクまで40フィート型ドライバンコンテナを輸送する際に顧客に請求する料金として530─2530ドルを予定していると述べている。この料金はフォワーダー他社と同等であり、料金設定の幅が広いことで、量に応じて価格を調整する柔軟性を担保できる。

フォワーダーは通常、船会社と料金を交渉し、それを貨物の所有者に転嫁する。

昨年11月、同中国子会社は、北京での事業登録を更新した。同社は国内配送及び商品の輸出入処理といった一連のロジスティクス・サービスを提供している。

申請書類に署名したのは、中国におけるアマゾン事業を担当するBrian Xue副社長である。同副社長は2014年にアマゾンに入社し、中国における同社のロジスティクス構築を指揮してきた。

アナリストらは、アマゾンが新たに取得したフォワーダーとしてのライセンスを活用することで、中国の販売企業・製造企業は主要なハブ港湾に商品を輸送しやすくなると予想。アマゾンはそうした港湾に倉庫を保有しており、そこから顧客に商品を出荷するのである。

アマゾンは書類処理を行い、商品を輸送する船会社を選び、貨物を自社の配送センターに持ち込むために仕向港にトラックを用意しておくことになるだろう。販売元の企業では、アマゾンと取引するだけで、トラック輸送、倉庫、海運など複数の企業に対応する必要はなくなる。

 2月9日、米オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コムは、中国でのロジスティクス事業を積極的に拡大している。数十億件もの商品発送に伴うコスト上昇を抑える幅広い取り組みの一環だ。写真はアマゾンの宅配ボックス。米コロラド州ゴールデンで2014年8月撮影(2016年 ロイター /Rick Wilking)

またフォワーダーとしての認可を得ることで、アマゾンは中小規模の企業からの製品をまとめてコンテナに積み込み、配送コストを削減することが可能になる、というのがアナリストの読みだ。

アマゾンのライバルであるアリババ・グループ・ホールディング(BABA.N)は、小荷物配送会社の株式の購入、倉庫への投資を進めるロジスティクス担当部門の設立に数十億ドルを投じて、中国国内のロジスティクス網に対する支配を強めてきた。

貨物監査コンサルタント会社のオーシャン・オーディットの分析によれば、昨年、アマゾンが米国に直接輸入した貨物は20フィート型コンテナ約1万個分であり、この他、同社の「フルフィルメント by Amazon」(FBA)プログラムの一環として販売元企業から2万個分を受領しているという。

FBAを使えば販売元企業はアマゾンの倉庫に製品を保管し、「アマゾン・プライム」扱いを受けられる。「プライム」は、消費者が年会費99ドルを払えば、同プログラムに加入している販売元の商品について翌日配送が保証される仕組みだ。

オーシャン・オーディット社によれば、貨物の約90%は中国発だという。

 2月9日、米オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コムは、中国でのロジスティクス事業を積極的に拡大している。数十億件もの商品発送に伴うコスト上昇を抑える幅広い取り組みの一環だ。写真はアマゾンのロゴ。ブルックリンで昨年8月撮影(2016年 ロイター/Brendan McDermid)

アマゾンの貨物運送サービスを契約した販売元がどれだけあるかは明らかではない。アマゾン・チャイナは昨年10月、中国の販売元向けに新たな国際ロジスティクス・サービスの開始を発表した。海上貨物運送もサービス内容に含まれているようだ。

だが、アマゾンに商品を供給している販売元を顧客とする既存のフォワーダーは、取引先を失うことになる。香港貨物フォワーダー・ロジスティクス協会のクリフ・サリバン会長は、アマゾンが販売元に自社のフォワーダー・サービスを利用するよう指示する可能性があると指摘。「そうなれば我々は切り捨てられるかもしれない」と言う。

アマゾンは最近の決算報告のなかで、自社のロジスティクス産業における野心への懸念を払拭しようと努めており、UPSなど既存事業者に「取って代わろう」とする計画ではなく、ピーク期における自社の配送をもっと自前で処理しようとするものだと説明している。

だが、米証券取引委員会に対する最近の提出書類のなかで、アマゾンは初めて、「自社又は第三者のために通販代行サービス、ロジスティクス・サービス」を提供する企業を、競合他社と見なしていると記している。

アマゾンは世界中に120カ所以上の配送センターを持ち、第三者の販売元とアマゾン傘下の販売元が供給する何百万点もの製品を保管している。そこでは倉庫労働者が発送するアイテムを選別し梱包している。

アマゾンは昨年、自社保有のトレーラー数千台を配備し、配送センターから顧客の家庭まで荷物を届ける、いわゆる配送の「ラスト・ワン・マイル」を処理するための米配車サービス「ウーバー」方式の配送サービスを立ち上げた。

フォワーダーとロジスティクス事業者をつなげるオンライン市場を提供する新興企業FreightosのZvi Shreiber最高経営責任者は、「アマゾンは少なくとも自社の貨物を自分で処理し始めるだろう。次の段階は、第三者のクライアントへのサービス提供かもしれない」と語る。

業界内には、アマゾンのような企業が本来のビジネスモデルから逸脱していくことを危ぶむ声もある。

ロジスティクス産業への新規参入企業に関する一般論として「彼らは非常に不安定なものになりかねない事業に移行しつつある」と、南北アメリカ大陸のDHLグローバル・フォワーディングで海運事業を率いるアンドレアス・クルーガー氏は語る。

航空輸送・海運における最大手企業の一つであるDHLグローバル・フォワーディングは、顧客に合わせてカスタマイズしたロジスティクス・プログラムを扱っている。

「起こりうる最悪の事態は、この業界にまた新たな競合他社が登場することだが、それでも私は心配していない。われわれはこのビジネスを1815年からやっているのだから」とクルーガー氏は述べた。

(Mari Saito記者、Brenda Goh記者)(翻訳:エァクレーレン)

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