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アングル:トランプ氏の「壁」発言、米メキシコ国境に移民殺到
2016年3月2日 / 08:23 / 2年前

アングル:トランプ氏の「壁」発言、米メキシコ国境に移民殺到

 3月1日、犯罪組織の暴力と貧困が、過去数年にわたりメキシコ人や中米諸国の人々を米国へと向かわせたが、最近では新たなけん引役が浮上。トランプ氏の反移民キャンペーンだ。写真は「壁を造れ」と書かれたTシャツを着る同氏の支持者。米ニューハンプシャー州で2月4日撮影(2016年 ロイター/Brian Snyder)

[シウダーフアレス/ワシントン 1日 ロイター] - 犯罪組織の暴力と貧困が、過去数年にわたりメキシコ人や中米諸国の人々を米国へと向かわせたが、最近では新たなけん引役が浮上している。不動産王ドナルド・トランプ氏の反移民キャンペーンだ。

中米諸国のスラム街から米国の移民社会に至るまで、米大統領選で共和党候補陣の先頭に立つトランプ氏の躍進ぶりは注目の的となっており、米入国を試みる移民数急増の理由の1つとなっている。

そのような移民のなかには、保護者なしで米国に渡ろうとする子供も含まれる。

移民や越境請負業者、当局者への取材から明らかなのは、11月8日の米大統領選でトランプ氏、もしくは別の共和党候補者が勝利する可能性に備え、不法移民対策が強化される前に米国へ渡ろうとしている多くの移民がいるということだ。

「もしトランプが勝つなら、私たちヒスパニック系は全員終わり」だと、エルサルバドル出身のイザヤ・フランコさん(46)は話す。フランコさんは、昨年に米国から国外退去させられた。現在は、米メキシコ州エルパソから国境を越えたところにあるメキシコの都市シウダーフアレスの移民保護施設に身を寄せ、米国への再入国を試みようとしている。

米税関・国境取締局(CBP)のデータによると、昨年10月から今年2月までの間に米・メキシコ国境を越えようとして拘束された移民の数は、前年同期比24%増の15万0304人に上る。

保護者のいない子供の移民に関する同時期の統計はまだ確認できないが、昨年10月から今年1月の期間においては、2万0455人の子供が拘束されている。1年前と比べ、2倍以上の増加率だ。

移民の数は通常、夏に向けて増加する。

フランコさんは他の移民と同じように、米大統領選、とりわけ1100万人以上いるとみられる不法移民全員を国外退去にするというトランプ氏の公約を意識している。共和党候補のテッド・クルーズ上院議員もトランプ氏と同様の方針を打ち出している。

「ニュースを見ると、ヒスパニック系は大きな恐怖に包まれる」と言うフランコさん。共和党が勝利するなら、多くの移民に今よりも法的安全を与える移民改革法案に終止符が打たれることになると語る。

トランプ氏の広報を務めるホープ・ヒックス氏は、移民たちがトランプ氏の政策を理解しているとし、「彼ら(移民)はトランプ氏がタフで、壁を造って不法移民を阻止することを認めているようだ」と述べた。

シウダーフアレスの移民保護施設を運営するブランカ・リベラ氏は、最近の移民急増に気づいていたとし、そのような扇動的な発言を非難。「彼らは利用が可能な間は利用しなくては、と考えている」と語った。

<今しかない>

トランプ氏が共和党候補指名争いで、他候補を引き離しリードしている理由の1つに、移民に対する厳しい姿勢がある。

トランプ氏いわく、メキシコは安い労働力で米国を「殺し」、国境をまたいで「犯罪者」と「レイプ犯」を米国に送りこんでいる。同氏はまた、国境沿いに大きな壁を造ることを明言し、イスラム教徒の入国を一時禁止にすることを提案している。

トランプ氏が最も辛辣(しんらつ)だが、他の主要な候補も、主にメキシコ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスからの不法移民の流入を阻止しなくてはならないと主張している。

トランプ、クルーズの両氏、そしてフロリダ州出身のマルコ・ルビオ上院議員は、オバマ大統領が提出した一部不法移民の強制送還を免除する大統領令を覆すとしている。

2014年、家族を伴わない子供の移民が米南部国境に大挙して押し寄せ、政治危機の引き金となった。2015年にその数は減少したが、過去数カ月で再び急増している。

米メリーランド州で暮らすグアテマラ出身のブレンダ・バリオスさん(30)は2003年、両親と姉妹2人と共に米国に不法入国した。

バリオスさんの両親はその後、グアテマラに送還された。両親は危険過ぎて米国に戻れないと考えているが、バリオスさんは、トランプ氏が勝利する場合に備え、年末までに米国に来るよう促しているという。

「彼(トランプ氏)は、人々が国境を渡ってくる理由の1つだ。皆、彼のことを独裁者のようだと思っている。国境越えはとても危ないが、彼が大統領になったらもっとひどくなる」と、バリオスさんは語る。

とはいえ、バリオスさんや取材に応じた他の移民たちは、たとえ不法移民を阻止しようとする政権下でさえ米国は、母国の貧困や暴力よりはましだと口をそろえる。

2014年以降、組織犯罪による暴力がエスカレートするなか、エルサルバドルの殺人率が劇的に上昇する一方、中米を襲った干ばつにより、特にグアテマラから多くの人が北へ向かうことを余儀なくされている。

さらに、「コヨーテ」と呼ばれる越境請負業者が反移民発言を利用し、今こそ米国に行くときだという考えを広めている兆候も見える。

ビクトリア・コルドバさんと11歳になる娘のジェネシスちゃんは2014年、テキサス州から米国に入ろうとしたところを拘束され、ホンジュラスに強制送還された。

コルドバさんは、ホンジュラスの首都テグシガルパにいるコヨーテたちが、今が行き時だと吹聴していたと話す。コヨーテは1人当たりの代金として約7000ドル(約80万円)請求するという。

「多くの女性が話題にしているし、私も行くか聞かれた。6月には新たな入国許可が下りるのではないかと話していた」と、コルドバさんは語る。

エルパソの移民保護施設のディレクターであるルベン・ガルシア氏は、次の米大統領が誰であろうと、移民流入という同じ課題に直面すると指摘する。

「中米の状況はひどい。これからも人々は逃れようとする。ここでの暮らしは本当にきついから」

(Gabriel Stargardter記者、Julia Edwards記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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