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コラム:次のスーパー兵器は「バイオ」か
2017年4月23日 / 02:22 / 6ヶ月前

コラム:次のスーパー兵器は「バイオ」か

 4月19日、第1次世界大戦では化学兵器が、第2次世界大戦では原子爆弾が登場した。一部の専門家は長年にわたって、時代を特徴付ける次の大戦では生物兵器が使われるのではないかと警告し続けている。写真は軍事訓練でガスマスクを装着する学生たち。ソウルで2011年1月撮影(2017年 ロイター/Lee Jae-Won)

[4月19日 ロイター] - シリアの化学兵器や北朝鮮の核兵器に対する脅威が増すなかで、生物兵器の危険性については国際的な関心事から抜け落ちてしまっているようだ。しかし、テクノロジーと遺伝子工学の進歩が、新たな危険への扉を開く恐れがある。

「9.11」米同時多発攻撃の発生後、炭疽菌入りの郵便物が送付され5人の死者を出す事件があったが、これ以外には、近年では生物兵器による攻撃が本格的に試みられた例はほとんどない。

主要国は1970年代に生物兵器の研究を縮小してしまった。脆弱なバクテリアやウィルスを生かしたまま爆弾やミサイルで投下する、あるいは単に散布することが困難だったからである。

アルカイダやイスラム国(IS)のような過激派組織は、もっぱら、テクノロジー面では対極の方向に向かっており、フランスのニースやドイツのベルリンなどで、乗用車やトラックを使って歩行者を攻撃するという、原始的ではあるが残虐な戦術に転じている。

大半の科学者やセキュリティー専門家は生物兵器のリスクは比較的低いままだとみているが、その状況は変化するかもしれない。基本的な遺伝子工学技術の普及によって小規模で低コストのものが自宅でも使えるかもしれないのだ。昨年、米航空宇宙局(NASA)に勤務していた生物工学の専門家が開発した遺伝子編集キットが売り出されている。

犯罪者たちがバクテリアやウィルスのDNAに手を加えて、はるかに致死性が高く、治療困難なものに作り変えることが可能な時代なのだ。

生物学や遺伝学研究に対する規制は、国によって非常に異なっている。だが、そのような手法による兵器製造は、1975年の生物兵器禁止条約によって、ほぼ違法とされている。

だが一部の専門家は、近年の技術的進歩によって、より効果的で致死性の高い新たな病原体を設計することが容易になっているのではないかと懸念する。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は2月に、こうした兵器を使った紛争により、核戦争よりも多くの死者が出る可能性があると警告した。

科学者が最初にヒトゲノムの配列を確定したのは2003年だが、これには膨大な労力と費用がかかった。現在ではコンピューターの能力向上により、この種のテクノロジー(個々の人間、動物、植物、病原体のDNAにおける差異の分析)のコストは年々急速に低下している。

まだ意見は分かれているものの、科学者の一部からは、基本的な遺伝子工学手法が普及するにつれて、特定個人のDNAや、下手をすると民族集団全体を標的にするような高度な新兵器を創り出すことが容易になるかもしれないという考えが提起されている。

ジョセフ・リーバーマン米上院議員は、「9.11」以前から生物兵器による攻撃への警戒を呼びかけており、米国がこれを回避できているのは「まったくの幸運」であったと述べている。同上院議員は先月、ドナルド・トランプ大統領と連邦議会に対し、生物兵器に対する防御を国家的な優先課題にするよう求めた。

米中央情報局(CIA)の元職員ロルフ・モワトラーセン氏は、2010年の論文のなかで、アルカイダが核兵器入手と同じレベルの優先課題として生物兵器の獲得を求めていた状況を紹介している。アルカイダはいずれも果たせず、代わりに従来型攻撃に注力することになった。

米国陸軍士官学校の対テロ戦闘センターによる昨年の報告書では、ISも生物兵器獲得に熱心だと結論付けられている。ISはすでにモスルをめぐる戦闘などで原始的化学兵器を使用している。ただし、それによって大きな犠牲を与えることには失敗している。

意図的な攻撃がないとしても、大規模なパンデミック(感染症流行)の脅威は現実的だ。

米疾病管理予防センター(CDCP)や世界保健機構などの組織は、常に大流行の兆候への警戒を怠らない。科学者らが数十年にわたって警告を続けているように、人類は、1世紀前に推定5000万人─1億人の死者を出したスペイン風邪(インフルエンザ)と同等規模の深刻なパンデミックのリスクを抱えているのである。

現代社会は、感染症対策をたくさん用意してはいるが、弱点もある。航空機を使った移動により、感染症が以前よりも急速に拡大しやすくなっているのだ。

米陸軍士官学校の報告書によれば、IS構成員から2014年に押収されたラップトップに保存された文書では、動物から抽出した腺ペスト菌を培養・使用する方法が検証されていたという。ただしこの報告書は結論として、他の武装グループ同様、ISが生物兵器を使って多数の犠牲者を生むような攻撃を仕掛ける能力を獲得する可能性は「非常に低い」と述べている。

2014年の西アフリカ地域におけるエボラ熱流行するなかで、ISなどの過激派組織がこの状況を利用するのではないかと欧米諸国の当局者は案じていた。米陸軍士官学校の報告書によれば、特に、ISが感染者を確保し、他の地域にエボラ熱を拡散させるために利用するのではないかという懸念があったという。

しかし実際には、こうした手法が用いられたとしても、その効果は限定的だろう。感染者は必ず発症するだろうし、そうすれば比較的迅速にエボラ熱患者として特定できる。大流行における他の例と同じように、感染抑制措置によって、患者は管理下に置かれることになる。

それでも、単純な攻撃が功を奏する可能性はある。

1984年、インドの神秘思想家バグワン・シュリ・ラジニーシ氏が主宰する宗教団体が、10店舗のサラダバーでサルモネラ菌を散布したことにより、オレゴン州を中心に751人が食中毒を起こし、45人が入院した。死者は出なかったものの、依然として、最近の米国史における最大規模のバイオ攻撃である。首謀者たちが一時検討していたように、腸チフス菌を使っていたら、死者が出ていても不思議はない。

1995年に東京で13人が犠牲となった地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は、民間集団による最も高度な生物兵器プログラムを有していたと一般に考えられている。だが、オウム真理教による炭疽菌などの病原体による攻撃は成功しなかった。それが化学兵器に重点を切り替えた大きな理由の1つである。

何よりも危険なのは、専門知識を有する少数の人間のうちの誰かが、単独攻撃を決意することかもしれない。2011年後半に政府などの機関に炭疽菌入り封筒が送付される事件の発生以来、連邦捜査局(FBI)は、米陸軍に所属する微生物学者ブルース・アイビンスの単独犯行であると結論づけた。

アイビンスは2008年、予定されていた逮捕の直前に自殺した。後に科学者らによる調査委員会は、アイビンスの犯行であるとしたFBIの証拠に疑問を投げかけている。

他にも危険はある。北朝鮮の金正恩体制が崩壊する場合、天然痘菌を含む可能性のある生物兵器を同国政府が放出するのではないか、と一部で懸念されている。

第1次世界大戦では化学兵器が、第2次世界大戦では原子爆弾が登場した。一部の専門家は長年にわたって、時代を特徴付ける次の大戦では生物兵器が使われるのではないかと警告し続けている。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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