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コラム:トランプ氏に立ち向かう欧州の「存在感」
2017年5月31日 / 08:03 / 4ヶ月前

コラム:トランプ氏に立ち向かう欧州の「存在感」

 5月30日、トランプ米大統領(中央)が、先週行った初めての欧州訪問で鮮烈な印象を与えようと考えていたとすれば、そのもくろみは間違いなく成功を収めた。写真左はマクロン仏大統領、右はメルケル独首相。NATO首脳会談が行われたブリュッセルで25日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[30日 ロイター] - トランプ米大統領が、先週行った初めての欧州訪問で鮮烈な印象を与えようと考えていたとすれば、そのもくろみは間違いなく成功を収めた。

ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン新大統領も、それぞれのやり方で、世界におけるアメリカのリーダーシップに対する信頼がいかに失われたかを如実に示した。北大西洋条約機構(NATO)首脳会議と、主要7カ国(G7)首脳会議におけるトランプ大統領の振る舞いに対する直接の反応と言えるだろう。

独仏両首脳は、それぞれの国民受けを考えている。9月に連邦議会(下院)選挙を控えるメルケル首相は、大きく報道された28日の演説で、英国と米国にはもはや依存できないと述べ、聴衆から1分間に及ぶ喝采を浴びた。

大統領選に勝利したばかりのマクロン氏も、トランプ大統領やロシアのプーチン大統領にも対抗できる力強い中道勢力としての自らの評判を確立するのに熱心だ。

間に挟まれたのが、英国だ。メイ首相が率いる政府は、欧州連合(EU)からの離脱を協議しており、欧州と大きく足並みが乱れている。

トランプ大統領とのマッチョな「握手対決」で一歩も引かなかったマクロン大統領は、週末には、プーチン大統領と公の場での対決に及んだ。パリ郊外での共同記者会見で、隣のプーチン氏を尻目に、マクロン氏はロシア政府系メディアやウクライナや中東などでのロシアの行動を強く非難した。さらに、シリアで再び化学兵器が使われれば、フランスが軍事行動に出ると警告した。

古参のメルケル氏と新顔マクロン氏の新欧州中道派コンビが、これほど素早く自信に満ちた行動に出たことは、特筆に値する。つい最近まで、フランス、ドイツ両国とも、極右の手に落ちるかのように見えていた。そうならなかったことで、政治エスタブリッシュメントが再び力を得たようだ。

経済的には、ユーロ圏は過去10年間で最も良い状態にある。第1四半期の成長率は、米国を上回った。移民危機もやや緩和され、それに伴って武装勢力による攻撃がもたらす政治的影響も落ち着いた。こうした問題や、欧州極右勢力の勢いは、再燃するかもしれない。だが今は、政治の勢いは中道にあるようだ。メルケル首脳とマクロン大統領は、それを利用しようとしている。

米国にとって、状況は「良くても複雑」だ。米国の歴代指導者、特にトランプ大統領は、欧州が自らの防衛などの課題にもっと責任を持ち、自立するよう、長年説得を繰り返してきた。だが、それがこんな形で実現しつつあることについて、顔を平手打ちされたかのように感じている。実際、そういうことなのだ。

普通の状況であれば、メルケル、マクロン両氏はともに大西洋主義者であり、米英両政府との強い関係を求めるところだ。だが両氏は、EU離脱(ブレグジット)とトランプ大統領の登場によって、どちらの国も驚くべき誤った道を取ろうとしていると感じている。そして、彼らはその穴を埋めようとしていると見られたがっている。

その意思は、トランプ大統領が先週のNATO首脳会談で見せた振る舞いで一層強固になった。トランプ氏は、他国の指導者を文字通り押しのけ、期待に反して相互防衛を定めた北大西洋条約第5条を尊重すると明言せず、加盟国の負担金の仕組みを未だ理解していないようだった。

非公開会合の場で何があったか分からないが、メルケル氏やマクロン氏の週末の行動を見れば、建設的なものではなかったと察せられる。

多くの点で、大きな変化が起きる訳ではない。NATO同盟は、欧州防衛の屋台骨であり続け、米軍の軍事力に依存し続ける。外交上のレトリックとは対照的に、米欧の軍隊は関係をさらに深めるだろう。

だが欧州の大国はいまや、米国不在の日に備えて、自らの手でより多くのことを担う決断をしたように見える。

欧州連合(EU)は、計画や調達、訓練など、防衛面でより多くの共同行動をとるようになるだろう。NATOは、欧州大陸の国々が、米国や英国と交流する道具になる。だが欧州の中心国は、必要があれば単独で戦うための計画をより積極的に進めるだろう。

英国にとって、この新たな潮流は、外交上の命取りとなるリスクをはらむ。

英国政府は、ブレグジットの交渉にあたり、不必要に高圧的な態度を取っている。前倒し総選挙においてメイ首相が狙う、過半数を大幅に上回る議席獲得は、もはや難しそうだ。

そして欧州で最も大きな権力を持つ政治家、メルケル首相はいまや明らかに、英国は、米国やロシアと同様に、欧州の中核国にとって協力はできるが頼りにならない国の1つだと位置づけている。

これは、ブレグジットには良くない材料だ。同時に、欧州大陸で何かを成し遂げようとする際に、英国の交渉力がずっと弱くなることを示唆している。

マクロン、メルケル両氏が世界をどう見ているかは、いまや明らかだ。ロシアは脅威だ。彼らは、それぞれの自国民の多くがトランプ大統領をばかにしていることを知っており、トランプ氏に立ち向かうことで、政治的な成果を得られることが分かっている。ブレグジットが大失敗に終わるよう画策することも、その戦略にあてはまるかもしれない。

こうしたことは、すべてよく理解できるし、欧州が自信を新たにしたことで、得られる成果もあるかもしれない。だが同時に、新たな不確実性への扉を開くことになる。

もしトランプ氏が再び欧州を訪問することがあれば、今回よりもさらに波乱に満ちたものになるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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