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コラム:混迷のホワイトハウス、存在感増す軍出身の幹部
2017年8月10日 / 02:18 / 2ヶ月後

コラム:混迷のホワイトハウス、存在感増す軍出身の幹部

 8月7日、無軌道で型破りなトランプ米政権下では、うまく仕事を進め、生き残り、そして成功すらできるのは、少数だが拡大しつつある元軍幹部らのグループだけとみていいだろう。写真中央は、軍出身の政権幹部らと共にEU高官と会談するトランプ大統領。ブリュッセルで5月撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[7日 ロイター] - 米行政管理予算局のミック・マルバニー局長は、トランプ大統領が元海兵隊大将のジョン・ケリー氏を首席補佐官に指名した理由を聞かれて、単純明快に答えた。

「彼は、軍人となら仕事がしやすい」

無軌道で型破りなこの政権下では、うまく仕事を進め、生き残り、そして成功すらできるのは、少数だが拡大しつつある元軍幹部らのグループだけとみていいだろう。トランプ氏は、彼らの規律正しさ、忠誠心、部下をうまく動かす能力にますます信頼を置いているようだ。

米国で大きな尊敬を集める「将軍3人組」が、政権の中枢に迎えられている。国防長官にジェームズ・マティス元海兵隊大将、大統領補佐官(国家安全保障担当)に現役のヒューバート・レイモンド・マクマスター陸軍中将、そして、大統領首席補佐官に就任した元国土安全保障長官のジョン・ケリー氏である。

前任のラインス・プリーバス元共和党全国委員長に代わってケリー氏がホワイトハウスの通常執務を担当するようになってからは、彼ら3人組の影響力が強まり、外交や安全保障政策にとどまらず、国内政治まで及ぶ勢いだ。

政権内外では、現政権に決定的に不足している健全性と経験を、3人が補ってくれることを期待する声が大きい。しかし、軍が政治性を帯びたり、自ら稼いだものではない信用を政権が「借用」してしまうリスクがあるとの批判も出ている。

もっとも内実は、大統領の信用と尊敬を獲得し、トランプ氏が耳を傾けることを期待できるのはこうした軍出身者以外ほとんどいないということかもしれない。

もちろん米国では、初代ワシントン大統領と独立戦争の時代から、軍指導部が国政に定位置を占めてきた。軍人から大統領になった直近の例としては、第二次世界大戦の連合軍最高司令官を務めたドワイト・アイゼンハワー、その前には南北戦争のユリシーズ・グラント将軍がいる。しかし、近年では、これほど多くの軍出身者が政治の中枢ポストに集中した例はない。

当然のことながら、瞬く間に「政治」に巻き込まれた軍人もいる。現役の軍人でありながら、政治任用が通例となっているポストに指名されたマクマスター氏がまさにそうだ。

先週、マクマスター氏は、新たな政敵から厳しい内容のブリーフィングを受ける立場に陥った。その多くは、スティーブ・バノン大統領上級顧問の一派とみられている。マクマスター氏は、対ロシア制裁、イラン核合意、アフガニスタン増派部隊の規模をはじめとする数々の問題をめぐって、バノン氏と対立していると広く報じられている。

これから、さらなる政治闘争が起こるのは間違いない。特に、ケリー氏にとっては切実だ。議会対策などの重要分野での経験があまりないにもかかわらず、ホワイトハウスの政治機構全体を運営する責任を担っているからだ。

すでにトランプ政権から去った軍出身の閣僚も1人いる。外国政府とのつながりを明らかにしなかった問題を巡って米大統領補佐官(国家安全保障担当)を辞任した、マイケル・フリン元国防情報局長だ。もっとも、フリン氏は軍幹部としても最も毀誉褒貶が激しい人物の1人であり、その後任にはもっと協調性に富む者が収まることが多かった。重要なのは、ポストに残った軍出身者らが団結を強める傾向にあるということだ。

マティス、ケリー、マクマスターの3氏や、軍の現役幹部は、みなイラクやアフガニスタンで複数回の従軍経験がある。(マティス氏はイラクで、現米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長の直属の上官だった)

こうした構造から、米国の現役軍幹部にとっては時として面倒な状況も生まれている。中には、率直に不満を表す者もいる。先週、沿岸警備隊幹部の1人が、先日発表されたトランスジェンダーの入隊禁止を公然と批判し、自身のトランスジェンダーの部下を守ことを優先すると発言した。他の幹部はこの方針について直接コメントを避けている。この入隊禁止方針は、トランプ氏がマティス国防長官の休暇中にツイッターで不意打ち的に表明したものである。

マーク・ミリー米陸軍参謀総長は先週、ナショナル・プレスクラブで、トランプ氏によるツイッター投稿までトランスジェンダーの入隊禁止案など全く知らなかったと述べた。ミリー氏はさらに、軍の上級幹部でも、大統領の決定を報道で初めて知ることは珍しくないとも付け加えた。

このコメントは、ブッシュ政権とオバマ政権に対する当てこすりのようだ。両政権とも、国防総省や現地の司令官に知らせる前に、アフガニスタン派遣部隊の規模などの情報を発表することで有名だった。

オバマ政権時代は、大統領が軍人を苦手としており、直接の接触をほとんど避けているという不満が軍幹部からしばしば聞かれた。一方で逆説めいているが、オバマ政権は、特殊部隊絡みを中心に軍事作戦への指示が細かすぎるという批判も受けていた。

対照的にトランプ氏は、司令官に作戦を委ねるほうだ。トランプ政権になってからは、軍の作戦実行の裁量は従来よりもはるかに広くなった。また、トランプ氏は、マティス氏に、アフガニスタン追加派遣の決定権限を与えたと報じられている。

専門家の一部は、軍に対する文民統制が弱いと、軍務に悪影響を及ぼすと危惧している。報道されているイラク、シリア等での軍事行動による民間人の死傷者数は、トランプ氏が就任してから増加しており、軍が、国民の知らないうちに無差別な武力行使に傾いているのではないかとの懸念も出ている。

しかしトランプ氏にとって心配なのは、「軍出身の閣僚3人組が、大統領と米国に代わって謝罪してばかりいる」という評判が広がることだ。また、「#presidentMattis」(マティス大統領)というハッシュタグが先週ツイッターでトレンド入りしたこともあり、3人組の野心も心配しなければならないところだ。

「もう少し辛抱を願う」

6月にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議で、マティス氏はこう発言したうえで、第二次世界大戦中のウィンストン・チャーチル英首相の「米国は最終的に正しい選択をする。他の選択肢をすべて試した後の話だが」との言葉をアレンジして引用した。

米軍出身の閣僚が、トランプ政権の暴走を防ぐ功績をあげられれば、彼らのうち誰かが、後に大統領になる道が開ける可能性もある。しかし失敗すれば、大統領のすべての失政について、適正以上の責めを負うことになるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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