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日銀マイナス金利に限界論、株高が進む異例の展開
2016年3月11日 / 07:11 / 2年前

日銀マイナス金利に限界論、株高が進む異例の展開

 3月11日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が10日、追加利下げに否定的な発言をしたことで、日銀のマイナス金利政策の限界が、市場で早くも意識され出した。写真は2月18日、国会で発言する日銀の黒田東彦総裁[2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 11日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が10日、追加利下げに否定的な発言をしたことで、日銀のマイナス金利政策の限界が、市場で早くも意識され出した。その結果、銀行収益の圧迫など副作用の面が強く警戒されてきた銀行株は、11日に急伸。金融政策の「限界論」が強まりながら、株高が進むという異例の展開となっている。

<「先駆者」ECBが限界示唆>

日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和策(QQE)を1月29日に決めてから1カ月あまり。マーケットでは早くも限界論が浮上してきた。

きっかけは10日のECB理事会後のドラギ総裁の発言だ。ECBは主要3金利の一斉引き下げや、月額の資産買い入れ枠拡大など市場予想を上回る追加緩和策を発表したが、ドラギ総裁が「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」と発言すると、市場の雰囲気は一変。欧州市場では金利上昇・ユーロ高・株安が進んだ。

ドラギ総裁は「新たな事実が、状況や見通しを変えることはあり得る」とも発言しており、追加の利下げを全否定したわけではない。しかし、「銀行システムに何ら影響を及ぼすことなく、望むだけマイナス幅を拡大できるのか。答えは『ノー』だ」と断言。マイナス金利の限界を示唆したと受け止められている。

現在の日銀のマイナス金利幅は0.1%。マイナス金利政策を日銀に先駆けて導入している欧州地域・各国の政策金利のマイナス幅は、ECBが0.4%、スイスやデンマークは0.75%となっており、水準的には日銀にも拡大余地がある。

しかし、日本は欧州などと比べ、貸出金利の水準が低い。昨年末時点の貸出金利(国内銀行)は0.9%程度。ユーロ圏の2.2%程度などと比べると引き下げ余地は小さい。預金金利をマイナスにできない以上、金利低下がさらに進めば、利ザヤは一段と縮小し、銀行の収益を圧迫する。

マイナス金利政策の「先駆者」であるECBが限界を示唆したことで、市場では「少なくとも、日銀は来週の会合でマイナス金利の引き下げをできる環境ではなくなった」(UBS証券・デスクストラテジストの井川雄亮氏)との見方も広がり始めた。

<外債投資トレンドは変化なしか>

日銀の追加緩和を織り込んできた円債市場では、これまでの反動から金利が急上昇。10年長期金利JP10YTN=JBTCは一時プラス0.015%とマイナス水準を脱し、2月18日以来の水準に上昇した。

しかし、マイナス金利の限界論が高まったとしても、日銀が国債の「爆買い」をしている状況は継続中だ。需給的に円債市場は締め付けられており、市場では「金利上昇は限定的」(外資系証券ストラテジスト)との見方は多い。

 3月11日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が10日、追加利下げに否定的な発言をしたことで、日銀のマイナス金利政策の限界が、市場で早くも意識され出した。写真はフランクフルトで10日撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

日本は実質金利、名目金利がともにマイナスとなっている主要国で唯一の国だ。この状況は日本にお金を置いておけば、目減りするということを意味する。それゆえ、日本の投資マネーが海外に向かうという構図が、崩れることはないとみられている。

「金利が多少上昇しても、絶対的な金利水準としては依然として低い。国内投資家は海外への投資を止める可能性は低い」とHSBC証券東京支店 ・グローバル・マーケッツ債券営業本部マクロ経済戦略部長の城田修司氏は話す。

<マイナス金利拡大に株安リスク>

一方、日本株市場にとって、マイナス金利の「限界論」が浮上してきたことは、むしろプラス材料とみられているようだ。

11日の東京株式市場では、銀行株.IBNKS.Tが値上がりトップとなり、日経平均.N225を一時1万7000円台に押し上げた。日銀によるマイナス金利政策の決定後、日本株が急落したのは、世界的なリスクオフに巻き込まれたことが大きいが、収益圧迫懸念から銀行株が売られたことも、株安に拍車をかけた一因だ。

個人投資家の保有が多い銀行株の上昇は市場のムードも明るくする。

JPモルガン・アセット・マネジメント、グローバル・マーケット・ストラテジスト の重見吉徳氏は「日本株市場は、金融機関の収益き損への警戒感に支配されているようだ。日銀のマイナス金利拡大が遠のいたとすればプラスに働く」とみる。

さらに金利・量・質の「3次元緩和」のうち、量に比重がかかってくれば、ETF(指数連動型上場投資信託)の購入枠拡大への期待も高まる。「効果がわからないマイナス金利の拡大より、ETF拡大の方が需給に直接的に影響を与えるだけに、株価にはインパクトがある」(国内銀行エコノミスト)という。

とはいえ、金融緩和に「限界論」が強まれば、一般的には株安材料だ。それにもかかわらず、11日の日本株が上昇したのは、マイナス金利に対する市場の「嫌悪感」を表しているともいえる。

今後、日銀がマイナス金利幅を拡大させる追加緩和策を実施する場合は、株安リスクを警戒する必要がありそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

*写真を更新しました。

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