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コラム:米企業買収、トランプ砲から身を守る「切り札条項」
2017年1月12日 / 04:36 / 9ヶ月後

コラム:米企業買収、トランプ砲から身を守る「切り札条項」

[ニューヨーク 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ次期米大統領によるツイッターでの放言や気まぐれな政策に翻弄され、米企業は今後、買収計画を撤回したくなる場面が増えるかもしれない。そこで切り札となる可能性があるのが「MAC条項」だ。

 1月11日、トランプ次期米大統領によるツイッターでの放言や気まぐれな政策に翻弄され、米企業は今後、買収計画を撤回したくなる場面が増えるかもしれない。写真はニューヨークで当選後初の会見に臨むトランプ次期大統領(2017年 ロイター/Lucas Jackson)

これは買収計画に「不利益をもたらす重大な変更(material adverse change)」が生じた場合、調印から買収完了までの間に契約から手を引く余地を与えるもの。これまで執行された事例は乏しいが、今後は状況が変わるかもしれない。

買収計画に予想外の事態はつきものだ。米医薬品大手アボット・ラボラトリーズ(ABT.N)は米診断薬・医療機器会社アリーアALR.Nを58億ドルで買収することで合意したが、その後、同社の財務諸表の報告が遅れたほか、販売慣行や収賄を巡り当局の調査を受けていることが発覚した。

通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ.N)が米インターネット検索大手ヤフーYHOO.Oの中核事業を取得する計画は、ヤフーの大規模なユーザー情報流出事件で遂行が危ぶまれている。

現在、買収を取り巻く環境は通常にも増して困難だ。

金融規制、最高裁、貿易、移民、税制、外交政策の行方が不透明で、買収企業の業績に与える影響は測り難い。トランプ氏がツイッターでプーチン・ロシア大統領に親愛の情を示したり、米国外に工場を維持する企業を罵倒するといった言動が、企業の不安に輪を掛けている。

どうやらMAC条項を活躍させる機は熟したようだ。

これまでのところ、特定の規制変更などはMACの定義から除外される場合が多かったが、企業はトランプ政権下の突発事項から身を守るため、声高に異を唱え始めるかもしれない。同条項の執行をより強く働きかける可能性もある。判事側の姿勢も以前より好意的になった。

デラウエア州衡平法裁判所のレオ・ストライン判事は2001年、下級審の判事として、米食品大手タイソン・フーズ(TSN.N)によるIBP社の買収計画について、業績が2四半期連続で悪く、子会社の経営が不振だというだけで撤回することはできないとの判決を下した。この際判事が示した有名な法的見解では、MACが「対象企業の潜在的利益全体を著しく脅かし、その脅威が持続的に大きい未知の出来事」と定義されている。これはあまりにも高い基準であるため、満たされたことがない。

しかし、しばしば忘れられがちなのは、ストライン判事が「何が正しい判決なのか、心が千々に乱れた」と打ち明けてもいることだ。判事がタイソンの訴えを却下したのは、IBPの業績サイクル等を知りながら買収に合意したからというのが主な理由で、言い換えればMACを理由に買収を撤回するのは見た目の印象ほど難しくないのかもしれない。

法廷がMAC条項の幅広い解釈に前向きになっている様子を示す事例もある。2013年にインドのアポロ・タイヤ(APLO.NS)が米クーパー・タイヤ&ラバーの買収を破棄できるはずだと訴えた裁判では、デラウエア州衡平法裁判所の判事がクーパーの中国部門での労働紛争がMACの事由に含まれるとしてアポロの訴えを認めた。

目下のところ、一番の注目案件はアボットによるアリーアの買収計画だ。アボットは先月、買収破棄を裁判所に申し立てた。アリーアの抱える問題は深刻なため、アボットの訴えは説得力を持っている。トランプ次期政権の出方に神経を尖らせている企業幹部にとっては幸先の良いことだ。トランプ氏は、何はともあれMACを再び偉大な存在にした功績で、後世に名を残すことになるかもしれない。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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