シルバー特集:元社長はシニア大学院生、研究テーマは「資本論」
[東京 1日 ロイター] 7年前に日野自動車グループ会社の社長だった横塚紘一さん(66歳)は、現在、東京経済大学で週に4コマの授業を受ける大学院生だ。テーマはマルクスの「資本論」。ゴルフ三昧(ざんまい)の余生を捨て、第2の人生を研究・勉強に捧げる理由は充実感にあるという。
──なぜ、もう1度勉強しようと思ったのか。
「これまでの人生は面白かった。日野自動車(7205.T: 株価, ニュース, レポート)に入社した1960年代は、まだ自動車産業がどうなるかもわからない時代だったが、結果的にどんどん成長していく過程に携わった。自分達のアイデアや努力の結果が実を結び、非常に楽しかったと言える」
「引退後、旅行やゴルフなど好きなことをするという選択肢もあった。実際、定年直後は毎週のようにゴルフに行っていた。しかし、充実感という点で満足できず、つまらなかった」
横塚さんが通うのは東京経済大学のシニア大学院。単なる聴講ではなく実際に論文を提出し単位を取得するという「ホンモノ」の学生だ。同大学院の学生数は横塚さんを含め9人。少子高齢化で学生数が減少する中、シニアに門戸を広げ始める大学も増え始めてきている。
──なぜ大学院なのか。
「カルチャーセンターに通ったり、大学の一般授業を聴講していたが、次第にもっと突っ込んだ勉強がしたいとの思いが強くなってきた」
「書籍には何万円とお金をつぎ込まなくてはならないが、授業料でみれば毎週ゴルフに行くよりも安い」
──資本論をテーマに選んだ理由は何か。
「昔、目を通したがきちんと理解したわけではなかった。会社に入った1960年代当時はマルクスと言っただけで左がかってるというような目で見られる時代だ。しかし、資本論は果たして、皆が言うような『社会主義の教科書』なのかという疑問がずっとあった」
「イデオロギー的に社会主義者というわけではない。ただ、貧困や格差の問題を社会制度の問題として考える中では、資本主義というものにどうしてもぶつかる」
「日野自動車では調達部門や総務・労務部門を経験してきた。調達部門では大企業と中小企業の間でどうしても資本の論理が働くし、労務部門でも資本家と労働者の関係というものをみてきた。こういうことも資本論を勉強してみたいと思った理由の1つだ」
──研究三昧の日々を家族はどう言っているか。
「夏休みに小論文がうまくできず、部屋にこもってとりかかっていたら、妻との時間がほとんどなくなってしまった。研究に没頭すると妻との時間がなくなるので、うまく調整しなくてはと思っている」
──旅行などに興味はないのか。
「かつて日野自動車時代に台湾などアジアでの現地工場立ち上げの仕事をした。以前の台湾はGNP(国民総生産)も低い国だったが、今ではものすごい成長を遂げており、もう1度訪れたいと思っている」
(ロイター日本語ニュース 伊賀大記)
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