米債市場にインフレ警戒の声、CPIが長期金利上回る
[ニューヨーク 24日 ロイター] 米金融市場では、信用収縮や景気後退に対する懸念から米国債に資金が流入しているが、一部の市場関係者からは、インフレリスクを再認識する必要があるとの声が出ている。
グローバル・フィナンシャル・データの主任エコノミスト、ブライナ・タイラー氏は、消費者物価指数(CPI)上昇率が、10年債利回りを上回っていると指摘。CPI上昇率が10年債利回りを上回るのは、1980年12月以来2度目だという。
前回は2005年9月に、一時的にCPI上昇率が10年債利回りを上回った。
今年11月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比4.3%、24日の10年債利回りは4.21%となっている。
債券ストラテジストの間では、食品・エネルギー価格が高止まりすれば、長期金利上昇のリスクが高まるとの見方が出始めている。
米国みずほ証券のエグゼクティブディレクター、テッド・アケ氏は「インフレ率が4%を超えているときに、質への逃避で利回り4%の10年債を買うことが果たして得策といえるだろうか」と指摘。
「教科書通りに言えば、10年債価格はインフレ率とトレードオフの関係にある。米連邦準備理事会(FRB)も、欧州中央銀行(ECB)も、中国もインフレに警鐘を鳴らしている」と述べた。
<食品価格の値上がり>
現在、債券市場では、米経済が景気後退局面に近づいており、需要が減少すれば消費者物価の上昇も収まるとの見方が多い。
ただ、食品価格は、天候不順、新興国の需要拡大、エタノール生産に伴う穀物需要拡大などを背景に、記録的な水準まで上昇している。
シカゴ商品取引所のトウモロコシ価格は、前週末に11年ぶりの高値に上昇。小麦価格も米欧で年初の2倍以上に値上がりしている。
原油先物は、1バレル100ドルを視野に入れる展開だ。
JVBフィナンシャル・グループの主任エコノミスト、ウィリアム・サリバン氏は「インフレが加速すれば、10年債の名目利回りは非常に低く感じられるようになる」と指摘。
CPI上昇率が4.3%、10年債の名目利回りが4.2%であれば、10年債の実質利回りはマイナス0.1%となる。
サリバン氏は、CPIの大幅な上昇はおそらく一時的な現象ではないと分析している。消費者はガソリンや食品価格の値上がりを肌で感じており、インフレ期待が高まっているという。
<Sワード>
FRBは、食品・エネルギーを除くコア指数だけでなく、他のインフレ指標も重視する姿勢をみせており、一部の市場関係者は、FRBが総合インフレ率の動向を大きな脅威と感じている証拠ではないか、と指摘している。
つい最近まで、「Sワード」(スタグフレーション)のリスクを警告する市場参加者は、一部の逆張り投資家に限られていたが、最近はテレビでもスタグフレーションのリスクが取り上げられている。
過去の事例が参考になるなら、FRBは、利下げの中止だけでなく、利上げを迫られる可能性さえあるという。
米国のCPI上昇率は、1970年代から80年代初めにかけて、石油ショックの影響で14%を超える水準にまで加速した。
当時のボルカーFRB議長は政策金利を大幅に引き上げ、商業銀行の最優遇貸出金利(プライムレート)は80年12月には21%まで上昇。米国は景気後退に突入し、10年債利回りは81年に15%を超えた。
アケ氏は「景気減速でインフレが抑制されるとの見方があるが、70年代を知らない若い世代の市場関係者も多い。低インフレがあまりにも長く続いたため、インフレの怖さが忘れられている」と語った。
(ロイター日本語ニュース 日本語執筆:ジョン・パリー、翻訳:深滝壱哉)
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