09年3月期の業績予想は+9.3%、後半回復を予想の企業目立つ
水野 文也記者
[東京 13日 ロイター] 企業の2009年3月期の業績予想は、現時点で増益が想定されている。アナリストの業績予想を集計するロイター・エスティメーツがまとめたTOPIX500の2009年3月期アナリスト平均予想EPS(1株利益)は、第3四半期決算発表のピークだった2月8日時点で78円09銭となり、今期の平均予想値71円44銭に対して9.3%増となる見通しだ。
企業財務関係者や市場関係者によると、09年3月期は後半に回復を想定する「追い込み型」が目立つとみられるほか、新興国市場を開拓したかどうかで勝ち組になるのか、負け組みに転落するかの明暗が分かれるという。
<1月11日時点との比較では─0.6%>
集計対象は東証1部上場企業(TOPIX500構成銘柄)のうち、アナリストのカバー状況が良好な454社で、アナリスト平均予想EPSベースで増減率を算出した。この中には、金融61社を含んでいるが、これらを除いた予想値は77円72銭(今期予想値72円36銭)と、伸び率は7.4%増と鈍化する。
決算発表シーズンが始まる前の1月11日時点との比較では0.6%マイナスとなり、発表が進むにつれセンチメントが悪化する格好となった。また、08年3月期予想値の前年対比は12.0%増で、09年3月期はサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題など不透明要因があることを反映し、伸び率は鈍化する。
<新興国のシェア抑えた企業が勝ち組に>
現時点における来期の見通しについて、好調業種の関係者からは「北米以外ではサブプライムの影響はみられない。米国を除いて需要は非常に好調で、勢いを持続するとみられる」(日立建機(6305.T: 株価, ニュース, レポート)の桑原信彦専務)、「中国向けの基調は変わらず、大幅増益にならないまでも現状維持はできる。減益になることはないだろう」(川崎汽船(9107.T: 株価, ニュース, レポート)の佐伯隆常務)などの声が出ている。
このように新興国市場でのシェア開拓に成功し、新興国の需要拡大が北米景気の悪化による影響を引き続きカバーするような企業が、来期も「勝ち組」として残る展開だ。
他方、最大の消費地である北米のダウンが目立ち、北米の依存度が大きい企業にとって、これから先の収益見通しは厳しさが増している。
米国での売上高が全体の25%を占めるソニー(6758.T: 株価, ニュース, レポート)では「(米国でのビジネスは)サブプライムを理由に(売り上げが)下がっている兆候は見えないが、今後じわじわと効いてくるとみている」(同社の大根田伸行取締役)としている。
自動車業界でも、北米の自動車販売は1月に入ってから低迷が続いており、1─3月期以降は予断を許さない。加えて円高に振れた為替相場も収益を圧迫する。
マツダ(7261.T: 株価, ニュース, レポート)のダニエル・ティー・モリス取締役は今後について「(今年の)米国はどう動くか不透明。政府がどのような景気刺激策を打つかにもよるが、前半は厳しいだろう」と述べた。
<米は実質マイナス金利、08年度後半の収益回復に期待感>
ただ、サブプライム問題の影響が残る08年前半は「守りの経営」を余儀なくされそうな企業が多い中で、年後半にかけて回復を想定する声も出ている。
キヤノン(7751.T: 株価, ニュース, レポート)大澤正宏常務は、08年度の事業環境について「年の初めはまだサブプライムの影響がある。各国の政策協調で、後半に回復してくる」との観測を示した。
市場関係者の間からも、先見性を示す株価から年後半の北米景気の立ち直り、企業業績の再浮上を読む向きもいた。
エース証券・専務の子幡健二専務は、最近の株価・金利動向などを踏まえ「過去の経験則では、実質金利がマイナスになった時点で株価が底を打つ。今回の場合は、米国が緊急利下げを実施した1月がそれにあたる」とした上で「金利低下と大規模な経済対策の効果を市場は読み出した。もっとも、金融・景気対策の効果が出るまで半年程度かかる」と指摘する。
12月米消費者物価指数(CPI)は前年比プラス4.1%、1月の緊急利下げによってFF金利が3.50%となったことで、実質金利はマイナスに転じた。食品とエネルギーを除くコア指数はの通年は同プラス2.4%だが、子幡氏によると「恒常的に価格が高くなったエネルギー価格を考慮して判断すべきだ。日米ともに株価が1月22日安値で底打ちとの見方が出ているのも、実質金利マイナスと意識しているためではないか」という。
1990年以降の金利低下局面において、米国で実質金利がマイナスになったのは、92年10月と2002年10月。いずれも、それと前後して米国株式は大幅下落相場の大底を打った経緯がある。
<さらに開く企業間の格差>
他方、来期の収益見通しに関して増減率とは別に、厳しい収益環境のため、好調/不調の二極化が進むとみる関係者が少なくない。
ある大手生保系投信の運用担当者は「成長地域である新興国向けビジネスを早い段階から開拓したか否か、原料高に対応するため価格転嫁が進むかどうか──こうした点から業種、企業で業績内容に格差が広がる可能性がある」と指摘する。
岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏は、「同一業種の中でも、底力で差が付くケースが増えそうだ。厳しい環境である時こそ、経営そのものが厳しく問われ、株式市場ではそれを織り込んでいく」と語っていた。
(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)
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