短期筋のドル売り/株売りに弾み、水準感は通用せず
[東京 3日 ロイター] 3日の東京市場は、株安を巻き込みながらドル安/円高が一段と進行した。ファンダメンタルズではなく、相場の動きに賭(か)ける海外の短期筋が為替や株式、円債市場で活発に動いており、一部では投資家のポートフォリオ見直しに伴う売買も出ている。
米国の金融システムや景気実態への懸念が高まっている中で今週は重要な指標発表を控えており、一段のドル安/株安への警戒感は根強い。水準感からのドル買い/株買いは出にくい状況だ。
<ドル売りの余力残る>
為替市場ではドル/円の下落に弾みがつき、2005年1月以来3年ぶりの円高水準となる102.65円まで下落した。短期筋の円買い仕掛けが強まり、前週末海外の安値をあっさり下抜けた。ドルの先安見通しが強まるなか「ドル買いは散発的にしか入ってこない」(都銀)という。
ドル安/円高が急ピッチで進んでおり、ある外銀の為替担当者は「複数の金融機関から複数通貨に対して、同時に円買いが入っている。金融機関自体のポートフォリオも傷んできたようで、オプション絡みや金利系ポートフォリオの修正など幅広い向きから円買いが出ている」と話す。
三菱東京UFJ銀行チーフアナリストの高島修氏は「ドル/円は、来週までに101円半ば付近に下落することを覚悟しなければならない。投機筋のドル売りの余力がまだ残っているほか、輸出企業の遅れた売りもあるためだ」と指摘している。
三井住友銀行、市場営業推進部チーフストラテジストの宇野大介氏は「各国が協調してドル安阻止を狙って口先介入でもやらなければ、ドル売りは止まらない」とし、今晩がポイントだと指摘する。米国は口先介入にも反対する姿勢を示しているが、ここまでドル売りが進行しているため、宇野氏は「状況が変わってきた」という。
<先行き不透明で株の打診買い弱い>
ドル売りとの相乗で株価は大幅下落。日経平均は600円以上下げ、約3週間ぶりに1万3000円を割り込んだ。米経済減速と信用収縮への懸念が強まっているほか、急速な円高進行で企業業績に対する先行き不安も高まり、輸出関連株や金融株などを中心に幅広く売りが出た。「朝方から大口のバスケット売りが出て下げ幅が拡大した。海外金融機関によるポジション整理売りとみられている。円高、業績の先行き不安、米景気懸念など悪材料が噴出し、先物への売り圧力も強い」(大手証券エクイティ部)という。この日は業種別で鉄鋼業が下げ率トップとなるなど、来期の業績を懸念した売りが目立った。
モルガンスタンレー証券ストラテジストの神山直樹氏は「最悪期は脱してないということだろう。クレジット関連の損失発生や資本のき損の度合い、そして景気指標悪化などの情報が全て出尽くしたとは言えず、その点ではあまり早く楽観できない」という。
米国では3日に2月ISM製造業景気指数、5日にISM非製造業景気指数、さらに7日の2月米雇用統計など重要指標の発表が目白押しとなる。1月にはISM非製造業景気指数と雇用統計の落ち込みが米国景気の先行き不安を強めた経緯があるだけに、投資家の多くは新規の買いに慎重になっている。「弱い数字が出て為替が1ドル100円近いドル安に進めば、株式市場はさらに波乱含みとなる可能性もある」(国内投信)との指摘も出ている。
ピクテ投信投資顧問・ヘッドトレーダーの小野塚二也氏は「急激なドル安/円高が株式相場を壊した格好だ。ここまで円高が進むと主力の輸出企業の業績は厳しくなる。現在の為替相場は、日本企業の強さを買ったといった理由ではないため、ドル安が落ち着くまで相場は不安定な状態が続くのではないか」と話す。
<救世主は政府系ファンドか>
一方、急速な円高が企業業績に与える悪影響は避けられないとの見方が大勢だが、「直近でみると電機、精密、自動車の輸出セクターでは米州地域よりもアジア地域の方が営業利益ベースで上回っている。ドル以外の通貨に対し円高がそれほど進まなければ下値では海外の政府系ファンドなどがバリュエーション面で買いを入れてくる可能性もある」(大和証券SMBC・エクイティマーケティング部部長の高橋和宏氏)という。紙パルプ、電力など円高メリット業種やディフェンシブセクターなどは注目できるとの指摘もあった。
モルガンスタンレー証の神山氏は「1月22日の日経平均1万2572円68銭は2008年度の企業業績で約15%の減益を織り込んだ水準だ。当社では来年度の増益率はゼロ%と見込んでおり、仮に1月安値を切ることになれば割安感が強まることになるため、それ以上、下値が叩(たた)かれることはない」と予想している。
<モメンタム系ファンドが円債買い増し>
ドル安、株安を受け、円債市場はこの日も堅調地合い。モメンタム系の海外ファンド筋が買い増しに動いたほか、保有債券の年限長期化をにらんだ年金基金の買いも入った。
前週末の海外市場では米長期金利が3.5%に迫り、先行きの景気不安の根深さを浮き彫りにした。3月の国債大量償還を控えて債券需給はなお良好さを維持しており、遅かれ早かれ10年最長期国債利回り(長期金利)が心理的な節目とされる1.3%に迫る公算が大きいとの読みは少なくない。米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)がサブプライムローンに絡む巨額損失計上で赤字に陥ったと発表。これにより、米国株式相場が下落したこともあり、リスク資産の逃避先として国債に資金が流入しやすかった。
UBS証券・チーフストラテジストの道家映二氏は「これまでは、サブプライムローン問題を発端にした信用リスクや流動性に関する議論がされてきたが、景気悪化は避けられず、すでに第2のステージに入っている。今後は米景気後退の深さと期間を見極める時間帯に入っている」と述べている。
<日銀の利下げ思惑>
日銀の利下げの思惑が再燃するとの指摘も出ている。日銀が主張している「生産・所得・支出の好循環メカニズム」の崩壊を意識する参加者も増えている。総務省が29日発表した1月全国消費者物価指数は、原油高を背景に前年比0.8%の上昇だった。一方、家計調査で実質消費支出が前年比3.6%増えたことには意外感が示されたが、実収入が減少しており、日銀の利上げ再開にはなおハードルが高いと受け止められている。
金融政策の影響を受けやすい5年債利回りは、1月23日以来ほぼ1カ月半ぶりに0.8%を割り込み、前週末比4ベーシスポイント低い0.790%に低下。2年債利回りは3bp低い0.525%まで買われた。
邦銀勢からとみられる買いが入った、という。今年に入り、サブプライムローン問題の深刻化による米景気減速をアジアや欧州などで補う「デカップリング論」が疑問視され、主要国による協調利下げの思惑が急浮上。1月23日には2年債利回りが政策金利を下回り、同ゾーンまでの利回り曲線が逆イールド化する場面があった。「世界的な金融緩和局面入りの思惑は根深い」(外資系証券)との指摘があり、再度、日銀の利下げを想定した金利形成がなされるとの読みが出始めている。
(ロイター日本語ニュース 記事執筆:橋本 浩、編集:石田 仁志)
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