新興国通貨が軒並み下落、クレジット市場大荒れでリスク回避姿勢
基太村 真司記者
[東京 7日 ロイター] 外為市場では投資家のリスク回避姿勢が一段と際立ってきた。南アフリカランドなど新興国通貨が軒並み下落する一方、円やスイスフランなど低金利通貨の買い戻しがさらに活発化している。
米サブプライムモーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅融資)問題を背景に投資家の不安心理が増幅、保有ポジションの圧縮を急いでいる。出遅れ感が指摘されるドル/円は12年ぶりの100円割れをめぐる攻防に入る公算が高まってきた。
<新興国通貨が軒並み急落、クレジット市場大荒れで投資家がポジション圧縮>
複数の市場筋によると、前日海外からきょうにかけて、南ア・ランドやメキシコペソ、ブラジルレアル、トルコリラなど新興国通貨に対する売りが目立った。特に値動きの大きかったメキシコペソは6日、1米ドル=10.7ペソ付近から10.8ペソ付近半ばと1カ月ぶりドル高/ペソ安水準へ急落。国内の電力供給危機で売りが強まっていた南ア・ランドもさらに売られて1米ドル=8ランド台と、4年半ぶりドル高/ランド安水準をつけた。こうした新興国通貨売りは対ユーロでも活発で、ユーロ/南ア・ランドは1ユーロ=12.0ランド付近と2001年以来のランド安水準を更新した。
新興国通貨に対する売りが強まったきっかけとされているのが、クレジット市場の崩落だ。6日の海外市場では、サブプライム担保証券(RMBS)のリスク指標であるABX指数が過去最安値を更新。モーゲージ債(MBS)や資産担保証券(ABS)価格も下落する一方、社債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)プレミアムは急上昇、金利スワップ・スプレッドも過去最大となった。
ある外銀関係者は、米住宅ローン会社ソーンバーグ・モーゲージ(TMA.N: 株価, 企業情報, レポート)が債務不履行通知を受けたことなどが、今回のクレジット市場動揺の一因としながらも「ユーロ/ドルもすでに急上昇しており、リスクを求める動きが一気になくなっている。個別企業の話でここまで市場が動揺するのは考えづらいが、市場のセンチメントがリスク回避に大きく傾いたのは確かだ」と話す。
これまで外為市場では「過剰流動性相場が長引き、相場の変動率が低下する中では、金利水準に着目したキャリートレードが最も効果的だった」(外銀)ため、円やスイスフランといった低金利通貨が売られる一方、新興国をはじめとする高金利通貨に買いが強まっていたが、そうしたポジションは急速に縮小している。実際、前日の取引でスイスフランには買い戻し圧力が大きく強まり、対米ドルで過去最高値を更新。対ドルで最高値を更新したユーロでさえ、スイスフランに対しては下落するほどの勢いを見せた。
<「買い通貨なし」がドル安ピッチ抑制、通貨オプションは数カ月以内の100円割れ織り込む>
投資家のポジション縮小に伴うリスク回避が強まる一方、サブプイラム問題の震源地である米ドルを売り込む動きも強まっている。きょうの取引でも、主要6通貨に対するドルの値動きを示すドル指数は過去最低水準を更新。「米景気の減速、リセッション懸念の高まり、明らかに金利が低下していく見通しであること、経常赤字の問題など、ドルは売り通貨としての条件が揃ってきた」(三井住友銀行・市場営業部直物為替グループ長の高木晴久氏)という。
しかし、同時に参加者の頭を悩ませているのが「ドル売りを何の通貨に対して進めるべきか」(別の外銀)だ。多くの参加者がドルの先安見通しを保つ中、ユーロは対ドルですでに最高値へ上昇、資源高でインフレ基調の豪ドルも24年ぶり高値を更新している。前日にはトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が理事会後の記者会見でインフレへの懸念をあらためて示したことでユーロ/ドルは2日ぶりに最高値へ進んだが、ユーログループ議長のユンケル・ルクセンブルク首相兼財務相らが3日にユーロ高をけん制した後、前日までユーロ/ドルは高値圏のもみあいとなっていた。「ドルが売りなのは分かっているが、歴史的高値のユーロや豪ドルを大きく買い上げるのは難しくなってきた。ドル売りの一方で買いを入れる通貨が限られていることが、ドル安ピッチをまだ抑制している側面もある」(同じ外銀)状況だ。
そのため市場では、今後は円にも買いが強まるとの見方が広がりつつある。低金利・低成長の円は「買い通貨にならない」(都銀)ため、対円ではドル安が急速に進まないとされるが、すでに歴史的な水準へ下落しているドルにとって「対円の100円だけが世界的に重要なポイントな訳でもない」(先出の外銀)。
最近の通貨オプション市場では、1―2カ月後の100円割れをストライクとするドルコール/円プットオプションに買いが強まっている。「目先は100―101円付近で一進一退となるが、数カ月以内には100円割れと予想する向きが大勢」(別の都銀)だ。
(ロイター日本語ニュース 基太村真司記者 編集 橋本浩)
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