福井日銀総裁会見一問一答

2008年 03月 7日 19:58 JST
 
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 [東京 7日 ロイター] 福井俊彦日銀総裁は任期最後となる金融政策決定会合後の記者会見を行った。詳細は以下の通り。

 ──本日の金融政策決定会合の内容とその背景となる景気認識について。

 「前回の決定会合から約3週間でそれほど際立って大きな変化はなかったが、子細にみると、米国中心に世界経済のダウンサイドリスクがやや強まっている。あるいは国際金融資本市場では2月末あたりを境にやや不安定性が増している。また国内経済では生産が横ばい圏内に入っている。一方で原油価格が100ドルを超え、一次産品市況の高騰が目立つようになっているなど、変化がみられるが、私どもはそういう状況の中で、日本経済の前向きの循環メカニズムが維持されているかということにいつも焦点をあてながら分析を加えている」

 「国際金融市場だが、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン) 問題に端を発した動揺が続いていてやや不安定な状態にあるということ。証券化市場は機能が低下した状態が続いており、社債スプレッドの上昇や貸出態度の厳格化など、金融環境はタイト化している。また株式市場や為替市場は振れの大きな展開になっているのはご承知の通りだ。米国を中心に世界経済が全体としては拡大を続けているが、ダウンサイドリスクが増していることと連動した動きと理解している」

 「日本経済だが、外需の面では日本の輸出では米国向けが米経済の減速を受けて弱めの動きが続いているが、エマージング諸国や産油国など幅広い地域に向けて輸出が増加しているという状況には変わりはない。今のトレンドからみて先行きは、海外経済が減速しつつも拡大を続けていくもとで、輸出は増加を続けていくと見ている。国内民間需要は企業収益が少し伸び悩みつつあるという感じがあるが、水準自体は高水準で推移しており、その中で設備投資は引き続き増加基調にあるとみている。この間、先月少し強調して申し上げた、改正建築基準法の影響から減速してきた住宅投資だが、これはこのところやや回復の動きが見えてきた。ただ水準そのものはまだ低いと思っている。雇用面・所得面であるが、一人当たり賃金はやや弱めの動きだが、雇用者数は増加しており、あわせて雇用者所得は引き続き緩やかな増加を続けている状況。各種の販売統計を見ても、全体として個人消費が底堅く推移しているという状況は変わりはない。こうした内外需のもとで、生産はやや強めに推移した昨年後半の反動もあり、このところ横ばい圏内の動きとなっている。先行きどう見るかという点は、もう少し推移を見ないと正確にはわからないが、私どもは生産は当面横ばい圏内で推移するけれども在庫と出荷がバランスのとれた状態にあることから、その先は増加していくとみている。もとよりこの点は海外の動向に左右される点も大きいと思われるので、海外からの影響という点は注意深くみていく」

 「物価の方では、国内企業物価は国際商品市況高などにより3カ月前比でみて上昇しており、これは当面上昇を続ける可能性が高い。消費者物価は当面石油製品や食料品の価格上昇から、またより長い目でみると需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。物価についての判断は前回の会見で申し上げたことと変わっていない」

 「日本経済は生産・所得・支出の好循環メカニズムが基本的に維持されている。その中で緩やかな拡大が続く蓋然性が続くと判断しているが、足元住宅投資の落ち込みやエネルギー・原材料価格の影響などから減速していることは事実であり、かつまた世界経済や国際金融市場をめぐる不確実性も大きい。したがって日本銀行としては今後公表される経済指標や情報、内外の金融資本市場の状況などを丹念に点検し、見通しの蓋然(がいぜん)性とそれに対するリスクを見極めた上で適切な政策判断を行っていく必要がある」

 ──政府がきょう、武藤副総裁を次期総裁に昇格させる人事案を国会に提示した。武藤副総裁の人物、仕事ぶりについてどう評価するか。また、財政と金融の分離を厳格にすべきとの観点から反対する声もあるが、財務省出身である武藤副総裁は過去に財政当局の意向を金融政策や日銀の業務に何らか形で反映させようとしたことがあるか。

 「きょう政府の方から国会に対して総裁および副総裁の人事について提案が出されたということは承知している。これから政府・国会のレベルで所要の手順が運ばれていく段階であるので、現段階で私から候補者その他についてコメントを申し上げることは差し控えたいというふうに思っている」

 ──グローバル経済の中での中央銀行の政策だが、日本は金利据え置き、米国は引き下げなど、世界の中銀で政策の方向性が違うが、どう考えるか。

 「大変重要な質問だ。先般のG7でも、いろんな角度からこの問題への議論が深められたと思う。時の経過とともに経済のグローバル化、それから金融資本市場の中におけるクロスボーダーな資金、資本の流れがますます活発になっている状況なので、実体経済、金融資本市場ともインテグレーションがさらに進む方向に動いているということは間違いない。個々の国においてマクロの経済政策、なかんずく金融政策を行っていく場合にどうしても、世界経済全体として現状どうであり、今後の見通しはどうか、あるいは金融資本市場の変化が経済にどういう影響をもたらすか、あるいは経済の変化を金融資本市場がどういうふうに映し出しているかというふうなことについては、各国間で相当丹念に議論しあって、できる限り共通の認識を持つ、ということがどうしても政策運営の出発点になるというふうに、やはり確認されていると思う。それだけでなく、その後、各国それぞれに政策を取ったときに、その政策の効果、これが国内の実体経済、国内の金融資本市場にとどまらず、国境を越えた他国の経済、あるいはグローバルなマーケットに影響を及ぼしていくということもあるので、金融政策を判断し、決定し、実行していく点においては、グローバルな効果の波及、影響の及ぶ範囲を常にフォローしながら、次のことを考えていく。こういう繰り返しが非常に大事になってきているということも認識された。しかし同時に、経済、市場のインテグレーションが進んでいるといっても、世界経済が単一になってきているわけではないし、金融資本市場も、それぞれの国の中で市場をみていると、市場の地合い、あるいは市場の中における金融機関や投資家の行動というふうなものは、かなり違っているのも実際である。したがってグローバルな経済の現状見通し、あるいは金融資本市場の動向について、どうみるかという点で、かなり共通の判断をシェアしたとしても、それぞれの国のマクロの政策、なかんずく金融政策については、いずれの国も同じ方向で、例えば金利政策については同じ幅だけ金利を動かせば、最適の政策になるかというと、そこまで経済や市場の一体化は進んでいないということだ。したがって、それぞれの政策舞台における現状、先行きの見通し、これはグローバルな連関を含んだ上での見通しだが、それに立って、それぞれの国のかなり先まで読んだ、フォワードルッキングに見通した情勢判断をベースに、これに対しては寸分スキのない政策を打っていくということが、全部あわせてみるとグローバル全体に対しても、最適の解になる、そういう解を見出す努力を共同でしているということになると思う。今、米国において、これまでアグレッシブな金利引き下げが行われているし、英国でも引き下げが行われている、しかしECBは据え置いている、中国は引き締め気味の政策をしている、いろいろそういう意味では、政策のあらわれ方は違っているが、その基礎にあるグローバルな経済や市場の見方は、かなり共通のものをシェアしている。行動は違っているが、目指すところはグローバルな経済の新しい均衡点に、いわば秩序だって調整を進めていくという共通の感覚を背中に背負って、政策判断をしているという点で、以前に比べて協調体制はいっそう強まっていると認識している」

 ──為替が1ドル=100円に近づく円高になっているほか、日経平均株価も1万3000円を大きく割り込むという状況になっているが、どうみているか。

 「為替市場あるいは株式市場においては、欧米の市場、日本の市場を含め、世界各地の市場においてかなり相場の変動幅が大きいというか、われわれの用語で言うとボラティリティが高まっていると言うが、とにかく目まぐるしく上下動を示している。こういう状況で、広く金融資本市場の中で投資家が従来に比べるとリスクを取る姿勢が消極的になっている。債券市場、株式市場、為替市場、その他いろいろな市場における投資家としてのポジションの形成の仕方を、より安全な方へ安全な方へ調整している。その結果として、いろいろな市場で従来みられない変化が出ている。株式市場や為替市場においては、かなり不規則な動きが日々みられるようになっている。日本の金融資本市場をみると、そういったグローバルな変動との連関度合いが比較的少ないマーケットではもちろんあるが、株式市場あるいは為替市場においては、海外の動きとかなり似通った動きを示す日が多い。直接的な連関メカニズムが、より働きやすい市場となっているということは否定できないと思っている」

 ──金融正常化は道半ばという状況にあるとの見方もあるが、それについての認識を伺いたい。

 「経済や市場がダイナミックに動くように、金融政策も先行きを見ながらも生きた金利政策でなければいけないと思う。スチールカメラで一瞬を捉えて金利が高すぎる、低すぎるというのも分析の道具としては意味がある場合があるが、実際は生き物としての市場と呼吸が合っているかどうかということが経済のよりよいパフォーマンスにつながっていく金融政策だ。そういう意味でスチールカメラで捉えて将来の望ましい経路との関係で金利水準が高いか低いかというと、それは非常に低いんだと、極めて緩和的な金融政策が展開されていると思う方がおそらく多いと思う。が、しかし経済そのもはかなりのダウンサイドリスクに直面している、一方でアップサイドリスクにも直面している。その狭間(はざま)で経済が大きく取り乱した姿で次の局面を迎えるということがないような金融政策は何かということになると、今のところ日本の場合は、今日はその点も十分議論したわけだが、スチールカメラで撮影すれば低すぎるかもしれないが、この金利水準を今は据え置くことが将来に経済をどう持っていくかという観点からは最適であるという判断だ」

 「毎回申し上げている通り、先々どう読むかというのは、政策決定会合の都度、新しい材料を吸収しながら判断していくので、常にスチールカメラを無視するわけでは決してない。が、スチールカメラでとった金利が低すぎるから、何が何でも金利を上げるんだ、というこのセリフはないということだ。先行きの読みといかに合致した判断ができるかが一番重要なことで、それを今までそのようにやってきたし、体制は変わるが、これからの日本銀行はそうした姿勢でやっていくのだと想像する」

 ──日銀人事の決定プロセスが政争の具にされているのではないか。

 「私は今の政治状況の中で最適な最適な人を選んでいただけるものと確信を持っているとかねがね申し上げているし、そういう方向に沿って政府ないしは国会の手順が進められつつあると思う。日本銀行の信任というのは、政策判断に誤りないこと、そしてタイムリーに必要な判断をきちんとやっていくこと、それ以外に信任の源はないと思っている」

 ──円高が企業業績とか国内経済に与える影響をどう考えているか。

 「円高だけに焦点を当てて議論することは、難しいし適当でないと思う。企業行動に与える影響については、為替だけでは最早ないわけで、世界経済全体の変化、あるいは市場の変化が、日本経済の需要環境をどう変えるかということが一番根本にある。一方で、世界経済の成長がもたらす結果としての、エネルギー、一次産品ないし食料品価格の高騰というのが、やはり日本経済、企業行動に影響をもたらす。最近では、いわゆる原材料価格の高騰は、油を産出しない、あるいは一次産品も産出しない日本のような先進国にとっては交易条件の悪化という形で、企業収益は非常に高い水準にあるが、さらなる収益の増加に対して、若干陰りをもたらしているということがある。更に複雑なのは、為替の影響というのは、さらにそれに上乗せする要因として理解しなくてはいけない。為替は輸出企業にとって円高の方向は、競争条件上不利な条件ということに変わりないが、今申し上げた一次産品、原材料高、原油高というような海外からのコスト高に対しては、為替高はむしろ交易条件を改善する効果がある。そういうふうに全部組み合わせてみた結果として、日本経済へのストレスがどれくらいか、企業経営上のストレスが、これは産業別、企業別で違うが、全部集積してどうか、この判断をすり合わせて分析しないと正確な答えがでてこない。昔に比べると、日本でもそうだが、海外のそれぞれの国においても、為替の変動については単に輸出産業の競争力への影響ということではなく、交易条件の変化にどういうふうな追加的な影響を与えるかということも、かなり同じくらいのウエートを置いて、吟味されるようになってきていると感じている」

 ──総裁の後継者選びのプロセスでは、財政と金融政策の分離がひとつの焦点になった思うが、総裁自身はこの点についてこれまでどのように心がけて運営してきたのか。

 「財政と金融の分離という言葉よりはもう少し広く、政府の経済政策と中央銀行の金融政策。これは日本銀行法でも、政府と日銀の間で十分意思の疎通をはかり、コミュニケーションを良くして、大きな経済情勢判断とか大きな政策の方向性について、基本的なそごがないように努めるべき、と定められている。しかし、金融政策そのものについては、日本銀行の金融政策委員会、金融政策決定会合において100パーセント責任を持って決める、というふうになっている。従って、その組み合わせの中で、つまり日銀法のその基本的な趣旨を踏まえて行動するということが、今おっしゃった意味の財政と金融の分離そのものだというふうに、少なくとも私および現在の政策委員会のメンバーは、明確にそこを認識して行動しているというふうに思っている」

 ──日銀の判断では緩やかな景気拡大としているが、国民の生活実感はやや異なると思われるが、その点についてはどう認識しているか。

 「経済全体の動きは毎回会見で説明している通り、海外経済のダウンサイドリスクは日本の企業も認識して行動しているでしょうし、国内的にも建築基準法の影響などがある。生産・出荷・在庫のバランスは比較的良い状況できているが、それでも地震の影響の波を吸収するために自動車生産の波があったりするので、それは総合してみると、緩やかな拡大過程にあっても足元はやや減速しているというのは正確な分析だと思っている」

 「皆さんの実感と合っているかというと、実感というのは少し幅が広くて、身の回りの食料品などの値上がりなどがこのところ加速していて、これはインフレ期待を呼ぶというよりは今のところ生活水準を悪くするのではないかという気持ちを刺激しているようだ。そういう意味で経済の動きを客観的に捉えたときの表現と、心理的な要素まで入れたときの表現とは若干ギャップがあると思う。しかしわれわれはそういう風に企業家心理、さらには消費者マインドがどういう状況にあるかについては、経済全体のセンチメントが次の局面への人々の行動がどれくらい前向きかということに影響していくるので、十分織り込みながら先行きの判断をしていく」

 ──賃金・給与がなかなか上がらない状況にあり、労働需給がタイト化しても今後も賃金は上がらないのではないか。また景気が減速しているということは、前向き循環メカニズムが小休止していると考えてよいのか。

 「メカニズムは基本的には損なわれていると思っていないので、小休止したというところまでは考えていない。今メカニズムは少し弱っていると思う。先ほどの交易条件の悪化などもあり、特に中小・零細企業の企業所得にマイナス影響が及んでいるので、それらの分野で賃金への所得還元が一層遅くなっている。ひいては、個人消費は引き続き底堅いのだが十分強くないという面につながっていると思うし、消費者心理が少し弱気にさせている面にも影響が出ている。生産・所得・支出の循環メカニズムが完全に頑健かと言えば、今は少し弱っている局面だと思うが、これは基本的に崩れているとは思っておらず、今後世界経済および国際資本市場が多少時間はかかってもオーダリーな調整が進むという環境であれば、日本経済もかつてに比べればショックを吸収する力は相対的に強くなっているので、多少時間はかかるかもしれないが、次のいい局面につなげている力は十分残っていると思っている」

 「賃金もいろいろ難しい要因があり、団塊世代がまとまって退職し、また再雇用されたら賃金が低くなったということもだんだん薄まってきたと思っているし、パートタイマーが常用雇用に振り変わる動きも少し出てきている。一人当たり賃金が減るという要素は少し少なくなり、あるいは増えるという要素が増えるということがある。しかしそれでは決定的な要因にはならないので、やはり経済が減速している間は需給のタイト化は進む度合いは減り、あるいは需給が緩和するということなので、賃金上昇圧力が一本調子で強まるというよりは、今はマクロの需給からみても賃金上昇圧力がやや強まりにくい局面だ。しかし先行き日本経済が実質2%程度の成長軌道に戻っていくというシナリオが崩れずにその軌道の上に経済が戻っていくのであれば、賃金上昇圧力もあまり急速ではないかもしれないが、じわじわと高まっていくことは間違いないと思う。企業の経営者も海外との競争を考えれば固定費抑制という姿勢は絶対崩さないと思うが、しかし企業というのは新しい需要に直面しないと次の前向きのビジネス計画が立てられないので、経済全体の循環のことを考える経営者は、所得が家計部門にも相応に流れないと経済というのは流れないのだという原点に思いを馳せることはあるわけで、現にそういう考え方は経営者の頭にじわりと浸透していると思っている」

 ──5年前に総裁が就任したときは、イラク戦争もあり、日本経済もデフレスパイラルの淵にあり、その中で株式買い入れ枠拡大など政策を打ち出した。今、日本経済の下方リスクが実現するがい然性が強まった場合、日銀としてどういう対応をすべきと考えるか。

 「過去の局面と比較して同じペースでないので、経済ないし経済政策、なかんずく金融政策について、比較論的にものを考えることは難しいと思う。5年前は、不良債権処理の最終局面に近づく中で、一方、実体経済のほうは、そろそろ良くなり始めていた。振り返ってみると2002年の初めから少しずつ良くなり始めていたわけだが、良い方向の芽を、戦争勃発(ぼっぱつ)という大混乱の中で、踏みにじられるリスクが強く感じられる状況だったと思う。つまり、ようやく長時間の苦しい過程を経て立ち上がり始めたところへのものすごく大きなショックということなので、ショック吸収力がゼロに近い状況にあったと思う。だからそれに対する対応と、今やっぱり世界的にダウンサイドリスクが強まっているが、実体経済のバランス、それから金融面における健全性、それぞれにおけるショックの吸収力という点で、2003年の頃とずいぶん違っているし、諸外国の経済ないしは金融システムとの対比でみても、日本経済がとりわけショック吸収力が弱いという状況では、もうなくなっているので、情勢判断を十分すり合わせて、それぞれの国の状況において最適な政策をとる、そういう意味では、日本の金融政策も、あまり異常なやり方にとびつくというよりは、地道に冷静な判断を重ねながら、最適な政策を選んでいく、しかし時来たれば機動的に行動するというポイントさえ忘れなければ、金融政策が軌道からそれるという心配は少ないのではないかと思う」

 ──日銀の独立性というのは制度上担保されているものであるが、独立性を保つ努力を続けていかないといけないものなのか、考えを聞きたい。

 「まず、法律で中央銀行の政策決定に独立した決定権限が決められていないと、そもそも物事が決められないので、主要先進国は中央銀行に独立的な政策決定権限を与えている。しかしこれは出発点だ。その上に中央銀行の政策が、結果としてその国の長期的な物価安定、そしてその上に立った持続的な経済発展を成果として現実に国民に感じてもらえる状況が作り出されていくこと、これが法律で与えられた独立性を信任でもって裏付けていくプロセスとなる。したがって中央銀行の仕事はまさに休む暇がなく、法律で独立性があるからといってひと時も安閑としていられない。経済の状況が現に良いときも悪いときも、あるいは周囲の環境が現に良い時も厳しい時も、いずれも同じぐらいの努力と根気を持って先々を正確に読み取っていく、そして判断がつけば機動的に動く決断力。これは欠かせないと思う」

 ──再任への意欲はなかったのか。

 「私は任期を100%全うすること以外考えていない」

 ──最後の政策決定会合だったが、どのような気持ちだったのか。

 「至らぬ総裁だったが、ボードメンバーの皆さんに協力していただいて今日まで来た。ありがとうございましたと感謝の言葉を申し上げた」

 
 

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