2月鉱工業生産が上方修正、エコノミストの景気後退論弱まる
[東京 17日 ロイター] 経済産業省が17日に発表した2月鉱工業生産確報は前月比プラス1.6%となり、民間エコノミストの間では、景気後退論が急速に弱まり、利下げ期待も後退している。
背景には同統計の基準年を2000年から2005年に修正したことがあるが、結果としてこれまで前期比マイナスになるみられていた2008年1─3月期の生産がプラスないし横ばいにとどまる公算が大きくなり、景気動向に対する見方が様変わりする可能性が出てきた。
<基準年の変更で生産指数ピークが後ずれ、薄らぐ景気後退懸念>
今回の基準年変更で、2月の生産は速報値の前月比プラス1.2%から1.6%に上方修正された。そればかりではない。旧基準では07年年10月だった生産指数のピークが、新基準では今年2月にシフトした。旧基準では、直近ピークの07年10月から生産は低下基調となっており、それが景気が後退局面入りしたとする見方の有力な根拠の1つとなっていた。
三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミストの宅森昭吉氏は「昨年11月ごろを景気の山とする景気後退懸念は消えたといっていい」と指摘。カリヨン証券・チーフエコノミストの加藤進氏は「生産面からは、景気は拡大が続いていることになる」と述べ、モルガン・スタンレー証券・チーフエコノミストの佐藤健裕氏も「鉱工業生産ひいては景気が、まだ山を付けていない可能性が出てきた」とみている。
2月生産指数の修正要因として、業種別のウエート変更がエコノミストの間で注目されている。カリヨン証券の加藤氏は「国際的な需要の減退で弱かった電子部品・デバイス工業のウエートが新基準で大幅に低下した。一方、世界的な需要が好調である鉄鋼や自動車を含む輸送機械のウエートが新基準では高まった」ことが影響したと分析する。新基準での電子部品・デバイスのウエートは、旧基準での1140/10000から799/10000に引き下げられた一方、輸送機械のそれは1229/10000から1685/10000に引き上げられた。
また、3月生産の見通しは前月比プラス0.2%となっており、それが実現すれば、1─3月期の生産は前期比プラス0.5%と、4四半期連続の上昇となる。
旧基準では、1─3月期生産は同マイナス1.9%と、4四半期ぶりに明確な落ち込みとなると予想されていたが「足元の生産については、ベクトルが統計改定で大きく変化した」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏)格好だ。
民間エコノミスト30余人を対象にしたESPフォーキャスト調査(4月調査)では、36人中9人(25%)が、景気は既に後退局面入りしたとの見方を示していた。しかし、統計修正を受けて「足元の景気は厳しい環境下ながらも、在庫調整の必要がなく『踊り場』でとどまる可能性が大きくなった」(宅森氏)、「景気後退入りするところまでは、行かないのではないか」(農林中金総研・主任研究員の南武志氏)との見方が強まっている。
<生産動向は日銀シナリオに近づく、利下げ期待も急速に後退>
こうした生産への認識の転換は、日銀の金融政策にも影響を与える。マーケットでの日銀の利上げ期待は、07年後半に比べると徐々に後ずれする一方、利下げ期待が強まっていた。ESPフォーキャスト調査(4月調査)でも、次期金融政策変更は利下げとの見方は32人中5人と、徐々に増加しつつあった。
だが、今回の修正を受けて「日銀は、足元および先行きの生産につき『当面横ばい圏内での推移』との評価を示している。生産活動が日銀のメーンシナリオにより沿った内容となったことが明らかとなった以上、目先の利下げの可能性が低下するのは明らか」(ABNアムロ証券・エコノミストの西岡純子氏)、「少なくとも生産については、足元で底堅さを維持しているという判断を日銀が強めるであろうことは疑いない。早期の利下げを見込んでいる向きにとって、今回の改訂は決定的な打撃になったと判断される」(みずほ証券の上野氏)など、利下げ期待は一転して弱まるとの見方が台頭している。
<IT関連財は在庫積み上がり局面に、先行き慎重論は健在>
一方、新たな懸念要因も発生している。これまでも景気・生産のかく乱要因だった電子部品・デバイスは、旧基準では「前向きの在庫積み増し局面」とみなされていたが、新基準では「意図せざる在庫積み上がり局面」に入っていることが確認された。
今回の大幅改定について「強い違和感」(佐藤氏)を訴える声も少なくない。生産統計と相関の強い日銀短観やロイター短観では、製造業の業況悪化が顕著だったためだ。4月ロイター短観の製造業DIはプラス1と前月比7ポイント悪化、03年7月(マイナス5)以来の低水準となった。佐藤氏は、うるう年の調整を変更したことや、中国の旧正月の影響などが、生産のデータに過大に出ている可能性があるとみている。
こうした要因もあり、景気への悲観論はやや後退したものの、エコノミストの多くが楽観論に転じるまでには至っていない。佐藤氏は「1─3月期は前期比ほぼフラットでも、4─6月期は自動車とIT関連財を主因に減産となる見込み。日米ともに景気はミニ後退局面入りとの見方を維持している」と述べる。
BNPパリバ証券・エコノミストの丸山義正氏も「2月生産が過大評価されている可能性と3月以降の弱含みの生産予測、加えて業況判断の動向などを踏まえれば、製造業セクターが調整局面入りしつつあるとの判断を変更する必要はない」とみている。
(ロイター日本語ニュース 児玉成夫記者、取材協力:武田晃子記者;編集 田巻 一彦)
© Thomson Reuters 2008 All rights reserved.



総裁選や代表選、問われる成長と停滞の岐路











