「正しいドル金利」が示す欧米金融機関の2極化、バランスシート圧縮が鍵
森 佳子記者
[東京 18日 ロイター] 英国銀行協会(BBA)は16日、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の算出方法の見直しを前倒しにした。信用収縮を背景に、複数の金融機関が実勢よりも低いLIBORをBBAに提供し、数値の信ぴょう性に疑義が生じたためだ。
LIBORは変動利付き企業向け貸出や住宅ローンの基準金利となっており、信頼回復は待ったなしだが、実勢に見合う金利を提示することで、欧米金融機関の2極化が際立つ可能性がある。
<ドルLIBORが上昇>
BBAは貸出金利を提示する際に市場をゆがめる行為を行った銀行をLIBOR算出から除外する方針も合わせて打ち出している。BBAの措置をうけて、3カ月物ドルLIBORは17日、2.81750%となり前日の2.73375%から急上昇。昨年8月以来の上げ幅を記録した。
欧米金融機関のなかでも、比較的信用力が弱いとされる金融機関にとってドル資金調達の環境がますます厳しくなっている。金融機関は一義的には資金取引市場でドル資金を調達するが、サブプライム関連商品の値崩れに端を発した不良債権問題で欧米金融機関の信用が揺らぐなか、取引相手の信用リスクを強く意識する資金の出し手は、一部の欧米金融機関に対してクレジット・ラインを絞り込むなど選別的な貸出を実施している。このため、信用力が低いとみなされた金融機関は、既に資金取引市場で必要十分なドル資金を安定的に調達できなくなっている。
ドル資金調達の最後の頼みは、円やユーロを調達して、為替スワップによってドルに転換することだが、ドルLIBORが上昇したことで、事情が一変してきた。
<2極化する欧米金融機関>
「大手の金融機関は相当な勢いでバランスシート圧縮に動いており、その過程で、企業やヘッジファンドの資金繰り倒産もあり得るが、金融システム不安が起きる確率はかなり低下している。ただ、この動きに乗り遅れているところもあるようだ」と欧州系金融機関の資金担当者は述べ、2極化する欧米金融界の現状を指摘する。
ドル資金をとれない金融機関が、例えば円投でドルを調達する場合、ドルLIBORの上昇によって、日米金利差(スプレッド)が拡大し、フォワードのディスカウント幅が拡大するので、ドル資金調達コストは割高になる。
ドル/円フォワード取引での3カ月物のディスカウントは56.4銭(年率2.16%)で1週間前の49.8銭(年率)1.95%から大幅に上昇した。
0.55%付近で円資金(翌日スタートのオーバーナイト物)を調達してスワップすると、ドルの調達コストは2.95―3.0%付近となる。3カ月物の場合は3.3%付近となる。
ここへきて、一部の欧米金融機関は円投ではドル資金が十分に確保できないとし、ユーロなどの他の通貨を介してのドル調達に傾いている。このため、円のLIBORは低下する一方、ユーロLIBORは上昇してきた。
3カ月物円LIBOR(ロンドン・フィクシング・レート)は17日時点で0.92750%となり1週間前の0.93250%から低下しているが、3カ月物ユーロLIBORは17日、約4カ月ぶりの高水準となる4.7840%まで上昇した。
金融機関の信用力を示す金利スワップ・スプレッド(2年物)は、17日に一時100.25ベーシスポイント(bp)となり、前日の91.50bpから急拡大した。
<バランスシート圧縮の時間に注目>
市場は、6月末(半期末)や年末など資金繰りが厳しい時期をにらんで、ベアー・スターンズBSC.Nに類似するケースが今後も浮上するとの警戒を解除していない。
「資金調達圧力は、コストに見合った収益性がないアセットを削ること(バランスシートの圧縮)によってのみ軽減される」(欧州系金融機関)というが、過去に不良債権問題で信用力が低下した日本の金融機関は、バランスシートの圧縮と信用の回復に10年を要した、との見方がある。
これについて、一部の欧米金融機関は2年程度で成し遂げるとの見通しもあり、今後の展開が注目される。
(ロイター日本語ニュース 森佳子;編集 石田仁志)
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