政局混迷で資本流出の可能性、ドル110円の予想も
[東京 7日 ロイター] 外為市場は、政局混迷に伴う円売り観測が、対ドルでの円高のゆがみを是正するきっかけになりそうだ。ガソリン税などの国会運営のまずさから、7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)をはさみ、政局が緊迫化する展開が予想される。
政権の弱体化や政策決定・執行力に大きな疑問符が付けば、日本からの資本流出が始まるとの懸念が、マーケットの一部で浮上している。
ドル/円は3月に95円台を付けた後、100―105円のレンジが続いているが、日本の政局混迷を引き金に110円近辺へと予想外にドル高/円安が進展する可能性をにらむ参加者も次第に増えつつある。
<支持率低下に歯止めかからず、もはや政権末期>
複数の国内メディアが実施した世論調査によると、福田康夫内閣の支持率が軒並み急落している。日本経済新聞が実施した直近の緊急世論調査で、福田内閣の支持率は21%まで低下、内閣発足以来最低となった。逆に不支持率は68%で最高を更新した。昨年7月に参院選の与党惨敗を受けた当時の安倍晋三内閣に関する調査でさえ、支持率は30%近かった。世論調査では、揮発油税などの暫定税率が復活し、ガソリン価格が再値上げとなったことなどをめぐり、政府・与党に対する強い反発が示されている。
4月27日に行われた衆院山口2区の補欠選挙では、事前の予想通り敗北。この直後、与謝野馨前官房長官はロイターとのインタビューで、「ねじれ国会」解消の打開策として「政界再編が現実的になっていく」とした上で、秋以降の政局の流動化の可能性をにじませた。与謝野氏は、現在のような低い内閣支持率・自民党に対する低い評価の下で「選挙があれば、自民党は自ら死を招く」との危機感を示し、解散・総選挙の先延ばしで野党転落を回避したいという思いをにじませた。福田首相に解散権を行使させないというムードが自民党内に高まっており、政権末期と言ってもよい様相を日に日に濃くしている。
<資本流出で対ドル、対ユーロの円レートが是正>
ある邦銀関係者は「現在の市場環境がたまたま米国をターゲットに動いているため、日本発の話題が取引の材料にならない」とし、「国全体として(パフォーマンスが)ぜい弱であれば、投資に不適格という議論にもなってくるのではないか」と警鐘を鳴らす。
そのきっかけが政局だ、と別の邦銀関係者も指摘している。ドル売りの潮が引き、日本の政治基盤の危うさが露見されるようになれば資本の流出が始まり、対ドルでの円買いのゆがみが是正される、というシナリオだ。実際、ある資本筋は対ドルでの円の適正レートは110―115円程度との見方を示す。
ユーロ/ドルは4月23日に一時1.6ドルまで上昇したが、「明らかに行き過ぎた水準」(ドイツ証券・シニア為替ストラテジストの深谷幸司氏)との声がマーケットの多数派だ。連休明けの東京市場では1.55ドル付近まで下落しているが、ドイツ銀グループが購買力平価などを基準として出した試算で、08年のユーロ/ドルの想定レンジは1.15―1.2ドルとなった。現状の水準はその試算値から遠く離れている。円は対ユーロで162円台の円安圏だが、複数の市場参加者は140円程度が適正水準と指摘する。
<サミット後に政局流動化、金融市場で失望売りも>
内閣支持率の低下に勢いづく民主党だが、念願の解散・総選挙に福田内閣を追い込む切り札がないことも、次第に国民の目に明らかになりつつある。複数の新聞は、民主党が5月中に参院で首相問責決議案を提出せず、通常国会の会期末に再度検討する方針を固めたと伝えた。
自民党内からも「現時点で福田首相の自発的な解散は考えられない」(中堅の衆院議員)との声が出ており「次の総選挙をにらんだ政策を掲げながら、新しい顔(党総裁)に代えるべきだ」とロイターの取材に答えた。わかりやすく言い直せば、福田首相がサミット後に退陣し、新首相の下で今年秋以降、解散・総選挙を想定して準備するべきだとの意見だ。その議員によれば、自民党内にはこうしたムードが急速に広がりを見せているという。
ただ、金融市場では、このような駆け引き主体の政界の動向に「ほとほと嫌気がさしてきた」(邦銀関係者)との声も多くなってきた。ドイツ証券の深谷氏は、グローバルな視点を欠き、内向きな議論に終始している国内の政治動向に対し、海外勢の不満が高まってくると予測。「例えば埋蔵金の一部を減税などに回す議論が全く出てこない。内向きな対応が嫌気されることになるだろう」と指摘している。
これでは、内閣支持率が低下も続けても、内外の市場関係者の注目を集めることはなかった。しかし、政治への不満がある水準を超えて高まった場合に、ダムが決壊したような資金の移動が起きるリスクも否定できない。
(ロイター日本語ニュース 吉池 威記者;編集 田巻 一彦)
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