銀行の保険部門売却、信用収縮で今後加速か
[ロンドン 7日 ロイター] 英銀大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)(RBS.L: 株価, 企業情報, レポート)が保険部門の売却を決めたが、業界関係者の間では、今後も銀行による保険部門の売却が続くとの見方が出ている。
世界的な信用収縮をきっかけに、金融・保険商品を幅広く取りそろえる方針を見直し、非中核の保険部門を売却して現金を確保する動きが出てくる可能性があるという。
クレディ・スイスの投資銀行部門の欧州保険担当責任者、マーク・オールドコーン氏は「保険部門の価値は、商品開発力ではなく、販売力にあることを銀行は認めつつある」と指摘。
「ただ、こうした認識の背後には、現在の市場の混乱がある。多くの銀行は、市場の混乱の影響で資本不足に直面している」と述べた。
すでにトルコのヤピ・クレディ銀行YKBNK.ISが、保険部門の売却先や提携先を探しているが、今後多くの欧州の銀行が資金調達のため、保険部門の一部売却や完全売却を実施するとみられている。こうした銀行は、保険部門を売却して、他社が開発した保険商品の販売に力を入れる見通しという。
英保険大手アビバ(AV.L: 株価, 企業情報, レポート)のグループ戦略・開発担当、アヌパム・サヘイ氏は「(銀行の保険部門の売却は)大きな流れになっている。信用収縮で一気に拍車がかかった。今後2─3年は、かなり大規模な再編が続くだろう」と予想。
「欧州全土でこうしたことが起きるだろう。アジアでも同じようなことが起きる」と述べた。
会計上の問題から、保険会社の所有に難色を示す銀行も出てきている。会計ルールの変更により、保険部門の資本を銀行業の自己資本に算入できなくなるためだ。
また銀行業と保険業の性格の違いという問題もある。キャッシュフローを重視する銀行と、長期的な価値の創出を目指す保険業では、会計手法や事業戦略の面であつれきが生じやすい。
世界的な信用収縮を受けて、銀行は資本やキャッシュフローの確保を急いでおり、こうした問題が一気に表面化した格好だ。
<M&Aが活発化との見方>
業界では、複数の金融機関に保険部門売却の観測が浮上している。
ベルギー・オランダ系のフォルティス(FOR.AS: 株価, 企業情報, レポート)(FOR.AS: 株価, 企業情報, レポート)をめぐっては、ベネルクス3国か英国の損害保険部門を売却する可能性があるとの観測が浮上。フォルティスはコメントを控えている。
英銀行大手HBOS(HBOS.L: 株価, 企業情報, レポート)が、保険部門のクレリカル・メディカルを売却するとの観測もある。HBOSは、資産運用部門のセント・ジェームズ・プレース(SJP.L: 株価, 企業情報, レポート)の株式を売却する可能性も指摘されている。
HBOSは、40億ポンド(78億ドル)の株主割当増資を実施する計画。同行は、保険部門の売却を一時検討したことを認めたが、安値での売却は望まないとして、現在は売却の可能性を否定している。
ただ、保険会社の株価が銀行に比べて割高であることを考えると、銀行にとっては魅力的な売却資産となる可能性がある。KBWによると、保険会社の株価予想収益率は08年ベースが11.5倍、09年ベースが10.5倍。銀行は08年ベースが10.8倍、09年ベースが8.3倍となっている。
ある投資銀行の関係者は「銀行傘下の保険会社は、ほとんどの場合、財務内容が良好で、保険会社からの引き合いも強い。売り手市場と言えるだろう」と述べた。
英アビバ、仏アクサ(AXAF.PA: 株価, 企業情報, レポート)、フィンランドのサンポ(SAMAS.HE: 株価, 企業情報, レポート)、スイスのチューリッヒ・フィナンシャル・サービシズ(ZURN.VX: 株価, 企業情報, レポート)といった保険大手は、事業拡大の機会をうかがっており、優良な保険部門であれば売却先はいくらでもある。
銀行にとっては、保険部門の売却で資金を調達できれば、追加の資本増強や大型増資を回避できる可能性もある。
資金力のある銀行が、本業強化のために保険部門を売却することも考えられる。
業界関係者は、英ロイズTSB(LLOY.L: 株価, 企業情報, レポート)が、保険部門のスコティッシュ・ウィドウズを80億ポンドで売却し、英中堅行のアライアンス・アンド・レスター(A&L)(ALLL.L: 株価, 企業情報, レポート)の買収に乗り出す可能性があると指摘している。
ロイズTSBの最高経営責任者(CEO)は今年2月、買収を実施する可能性を示唆、同行の株価上昇要因となったが、スコティッシュ・ウィドウズの売却で買収資金を調達する可能性は否定している。
ただ今後、合併・買収(M&A)が活発化する可能性が高いとの見方は根強い。
オールドコーン氏は「(銀行による保険部門の売却は)大きな流れになっており、今後しばらくこの流れが続く可能性がある」と指摘した。
(ロイター日本語ニュース 原文執筆:Simon Challis、翻訳:深滝 壱哉)
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