焦点:米証券化バブル崩壊で行き詰まる投資銀行

2008年 05月 14日 17:26 JST
 
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 [東京 14日 ロイター] 米証券化バブル崩壊後の信用収縮は最悪期を脱したとの見方が広がる一方で、米住宅価格の下落は止まらず、米不動産・商用ローンの証券化市場では価格形成もままならない。信用バブルの崩壊で、ビジネス縮小を迫られる米金融・証券界の先行きには引き続き暗雲が立ちこめている。

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は13日「流動性供給対策により金融市場は幾分回復してきた」としたものの、「多くの証券化市場は依然として瀕死状態のままだ」と述べ「究極的には、市場参加者自らがレバレッジを外し、資本を増強し、リスク管理を徹底して、金融市場の緊張の源泉を根本的に解決するべきだが、これには時間がかかるだろう」 との見解を明らかにした。

 だが、証券化市場を介して無限大とも言われる信用バブルを造った欧米証券会社のレバレッジ外しは、一朝一夕にはいかないだろう。

 <道を踏み外した投資銀行>

 「米住宅ローン証券化をめぐる一連の問題の本質は、米証券会社(投資銀行)が絡んだ証券化商品という名の一種の不正融資。その商品化手法が時間を経るに従って、極端に悪質になっていったことが表面化したわけで、最悪期云々(うんぬん)という問題ではない」とファースト・インターステート・リミテッド香港社長の中山茂氏は語り、証券化ビジネスを含む欧米投資銀行のビジネス・モデルの行き詰まりを指摘する。

 証券化ビジネスは、間接金融から直接金融への変遷、つまりBuy and Hold からOrigination and Distribution モデルへの転換のなかで拡大した。

 企業は資金調達の際に、伝統的には銀行借入に依存してきたが、証券会社(投資銀行)は、企業が債券発行によって投資家から資金を集める直接金融の世界に企業を引き込んだ。投資銀行は債券の引受・募集・販売で手数料収入を得るフィー・ビジネスに収益の軸足を移した。

 証券化は銀行借入では審査で融資対象外となるような信用力が低い企業にも資金調達の道を開いた。80年代後半からは、信用力の低い個人にまで資金調達の道を開いたことが、今回のサブプライム問題の始まりだ。

 「貸してはいけない人に貸す」という一線を越える行動に出た投資銀行は、このビジネスによって投資家(顧客)サイドに生じたリスクを、格付けや債務保証等の仕組みで補うと同時に、様々な証券化手法を駆使して意図的にリスクを覆い隠したことは、今となっては誰もが認める事実だ。

 「アメリカ型資本主義の究極目標は株主利益の最大化。投資銀行のフィー・ビジネスは資本を食わないので、資本の効率化、株主利益の最大化に貢献した」(投資銀行)とはいうものの「金融業は本来的に虚業であるからこそ、絶対に越えてはならない一線があるはず」(中山氏)との指摘もある。悪質なリスク隠蔽(ぺい)により、投資銀行の信用は失墜した。このことは今後のビジネスにも影響を及ぼすだろう。

 <信用膨張とクレジット・デリバティブ> 

 今回の危機がなかなか収束の兆しを見せないのは、無限の信用創造が生んだ巨大なポジションの塊が市場に横たわっているからだ。

 「この金融危機が一過性ではなく、しかも損失規模がきわめて大きい原因は、RMBS(住宅ローン担保証券)からABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)までの相互関連の複雑性にある」とファンド・オブ・ファンズのインベスター・セレクト・アドバイザーズ東京支店長・関村正悟氏は語る。

 危機の入り口には、サブプライムローンを担保とするRMBSを組み込んだABS―CDO(資産担保証券を担保にしたCDO)があり、そのCDOを含んだSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)があり、そのSIVが資金調達に発行したABCP(資産担保CP)に対する投資家の資金の引き揚げが、危機の直接のトリガーとなった。

 1998年のLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)危機の折には、顧客の資金引き揚げに対して、ヘッジファンドは金融商品を投げ売りしてキャッシュを捻出したが、今回はそう簡単には行きそうにない。

 その理由は、クレジット・デリバティブ市場の発達と、単体でも複雑なCDOの派生商品等の登場だ。「CDOはデリバティブと融合することにより、爆発的に増加した」と関村氏は指摘する。

 2003年7月以降CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のインデックスが統合されCDX、iTraxxとして流動性と取引量が拡大。CDOやSIVのヘッジに利用できるため、それらの商品への投資規模が拡大した。同時にインデックスを原資産とするデリバティブが登場し、CDS契約を内包したシンセティックCDOも普及した。

 証券化の世界では、借りるために発行した債券(一次証券化商品)の一部を使って、2次証券化商品を組成・発行して、また資金を調達するという「また借りの原理」 が前提となっているが、採算が組成当初より悪化した既存のCDOをリパッケージ(再証券化)して、より高い格付けと高利回りのCDOスクエアの発行も拡大した。

 「CDSなどのクレジット・デリバティブの技術は、信用リスクの移転を容易にし、ディールのスピードを上げることを可能にした。つまり回転数が上昇することとなり、従来の信用乗数では計測できない信用膨張が発生している」(関村氏)という。

 この結果、不動産バブルがはじけた時点で、時価評価不可能な巨額の資産を欧米証券・銀行や世界の投資家は持つことになった。ゴールドマン・サックスなど米大手証券4社が保有する時価開示が困難な資産の合計は2月末に2994億ドル(約31兆円)。保有額は3カ月で28%増えている。

 他方、アセット圧縮を急ぐ米銀の融資態度は厳格化している。4月の銀行上級貸出担当者調査によると、米国内の銀行は、過去3カ月間で企業・個人向けの貸出条件を厳格化した。危機は既に米経済の心臓部である個人消費に迫っているといえる。

 (ロイター日本語ニュース 森 佳子)

 
 
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