新興国向け輸出が堅調、株式市場はデカップリングのシナリオ継続
水野 文也記者
[東京 22日 ロイター] 貿易統計で新興国向けの輸出が堅調なことが確認されたとして、株式市場では、関連銘柄が引き続き物色されるとの見方が出ている。北米の景気悪化が欧州から新興国へ波及する懸念は残るものの、デカップリング論が生きるシナリオが継続しそうな状況だ。
財務省が22日に発表した4月の貿易統計速報によると、4月の輸出は前年比4.0%増、輸入は同11.9%増となった。輸出は2カ月連続で5%未満の伸びにとどまったものの、4月としては過去最高で内需の不振を外需で補う構図には変化がみられない。これまでにほぼ発表が一巡した2009年3月期の企業業績予想は、円高が響く形で減益が予想されながらも輸出の増加を背景に売上高は増収が見込まれており、今回の貿易統計はこうしたミクロの状況を裏付ける内容となっている。
輸出を地域別でみると、最大の輸出先である米国が前年比9.1%減と8カ月連続減となり、景気の減速をそのまま示した格好だ。EUについても、昨年4月に二輪自動車の輸出の伸びが大きかったことや「イースターの反動などテクニカル的な要因で伸び悩んだ」(外資系証券ストラテジスト)との見方がありながらも、同1.3%増と2005年10月(同0.6%減)以来の低い伸びとなるなど、金融問題の影響がジワジワと効いてきたとみることができる。
ところが、新興国向け輸出は依然として増勢にあり、日本の輸出産業が全体としては健闘している様子をうかがわせる。とりわけ、3月にプラス3.1%に鈍化し先行きに不安を感じさせた対中国輸出が、4月はプラス14.1%と再び2ケタ増に戻ったのが目を引く。さらに、オーストラリアが同21.4%増、ブラジルが同31.7%増、中東が同17.7%増、南アフリカが同10.6%増と、市況上昇の恩恵を享受している資源国向け輸出の伸びが際立っており、足元はデカップリング論が生きていることを示した格好だ。
エコノミストからは「アジア向け輸出数量は再び大幅な増加に転じ、日本経済がアジアからの強い需要で支えられていることが明らかになった。今後は、米国向けが回復する中でアジア向けも好調さを保てば、輸出数量全体としては堅調さを保ちそうだ。景気全体には純輸出は引き続きプラスの寄与を続けるだろう」(カリヨン証券の加藤進チーフエコノミスト)との指摘もある。
09年3月期見通しについて、年後半から米国景気の復調を背景に回復を見込む企業が大半を占めており「このままデカップリングの状態が続けば、米国景気が上向くとともに、電機や自動車など輸出産業の収益改善が進む」(大手生保系投信運用担当者)という。
ジーク証券・投資情報室長の水谷秀夫氏は「円高による目減りが懸念される現状だが、新興国向けに数量は伸びており、為替相場が円安に振れれば収益上乗せの余地が生じる。輸出の中心である米国の景気が回復すれば、さらに業績は良くなりそうだ」と指摘する。
ただ、輸出数量をみると、EU向けが同5.9%減と3月の同9.8%増から大きく減速しており、この点を懸念する向きが少なくない。市場では「現状はデカップリングした状態だが、クレジットクランチが再び悪化した場合、北米から欧州、新興国へマイナス効果が波及する懸念は残っている」(UBS証券・ストラテジストの清水麻希氏)と慎重な見方も出ていた。
(ロイター日本語ニュース 編集 橋本浩)
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