足元の物価上昇に目が行き過ぎると、必要な金融政策対応が遅れる危険=日銀総裁

2008年 05月 28日 11:13 JST
 

 [東京 28日 ロイター] 白川方明日銀総裁は、日銀金融研究所主催の国際コンファランスであいさつし、バブルの経験を踏まえて「近年発生したバブルの多くは、物価安定が達成されたりデフレの危険が意識される中で、低金利が持続した後に生じている」と指摘した。

 また、「足元の物価上昇率に目が行き過ぎると、必要な金融政策の対応が遅れ、結果として経済活動の大きな変動を招く危険がある」との認識を示した。

 白川総裁は、日本のバブルは資産価格・景気・金融システムが相互に影響し合って発生したことを踏まえ、金融政策の目的として物価安定と金融システム安定は区別できるものではないとの考えを示した。総裁はかつてフリードマン(米経済学者)が行った講演を紹介し、「伝統的な意味での金融政策と金融システムに関する政策は通常は別の政策として位置づけられているが、クリティカルな局面では、両者は複雑かつ微妙な形で関連している」とした上で「中央銀行が用いる様々な政策手段は、結局のところ流動性の供給やその配分であり、そうした政策手段は、それぞれの政策やその目的、すなわち物価の安定や金融システムの安定に厳密に対応づけられているわけではなく、それらの政策の境界線は、時としてそれほど明確ではなくなる」とした。

 現在のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン) 問題に端を発した欧米での金融市場の動揺について、日本のバブル期より損失規模が小さいことや、市場価格を通じて損失額を認識することが可能な点、金融機関の資本調達が早期に行われている点などが異なると指摘。一方、バブル発生・崩壊である点や、資産価格の下落が金融面の悪化を通じて景気に悪影響を及ぼしている点は類似点だと述べた。

 その上で金融政策の対応に言及。「近年発生したバブルの多くは、逆説的ではあるが、物価安定が達成され、あるいはデフレの危険が意識される中で、低金利が持続した後に生じている」と指摘し「こうした状況の下で、足元の物価上昇率に目が行き過ぎると、必要な金融政策の対応が遅れ、結果として経済活動の大きな変動を招く危険がある」とした。

 また「バブルがいつ崩壊するかを正確には予測できない。そうした変化を認識した場合には、現在の米連邦準備理事会(FRB)の対応のように、標準的なテイラー・ルールが示唆する以上のペースで金利引き下げを行うことは適切な対応」だと評価。さらに「日本の経験が示すように、企業や金融機関のバランスシートの毀損(きそん)が激しい場合には、金利の引き下げだけでは十分緩和的な金融環境を作り出すことは非常に困難」だとしてバブルの生成を招きにくいような金融システムに関する政策や制度の設計も重要だと指摘した。

 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 佐々木美和)

 
 
 
 
 
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