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インタビュー:2050年代の脱原発は不可避=橘川・一橋大大学院教授

2013年 03月 15日 16:06 JST
 
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[東京 15日 ロイター] 昨年末に政権復帰した自民党が、民主党前政権による脱原発政策の転換を打ち出して以来初めてエネルギー政策の見直しを議論する「総合資源エネルギー調査会総合部会」の初会合が15日に開かれる。

一昨年秋にスタートした議論の仕切り直しとなる会議だが、従来から議論に参加する一橋大学大学院の橘川武郎教授はロイターのインタビューで、核燃料を後始末する「バックエンド問題」の近い将来の解決は事実上不可能だとし、2050年ごろには原発は「やめざるを得ない」と語った。

原発依存度を下げていく中で、代替する火力発電における液化天然ガス(LNG)などの燃料費引き下げが重要だと強調したほか、国策民営による原発の事業体制については「株主の観点からもリスクマネジメント上、(原発を電力会社から)分離すべだと思う」と語った。実際に原発を電力会社から分離することは、加圧水型軽水炉を持つ電力(関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)など4社が)では依存度が高いために早期には難しいと指摘する一方、再稼動がより困難と見込まれる沸騰水型軽水炉(東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)など5社)において先行することは「大いに可能性がある」と述べた。

インタビューの主な内容は次の通り。

──一昨年10月に始まったエネルギー基本計画の見直し議論が再開する。中断前には原発依存度の低減ということで有識者の方向性は一致していた。

「私は2030年での原発依存度は15%(2010年実績26%)を主張した。(政権交代により)議論のメンバー構成は変わったが、3.11(東日本大震災)があったのだから、依存度を減らすというのは大原則。(議論の)試金石の1つが、火力発電が増加する中で、燃料費低減に向けてシェールガス革命にどう手を打つか。もう1つがバックエンド問題をきちんと議論するかだ。使用済み核燃料をドライキャスク(金属製の円筒形容器)で40─50年保管して、(最終処分への)技術革新を待つべきだ。そのほうが後世の人が扱いやすい」

「原発からの出口戦略は理屈上は難しくない。原発立地は、長期的には火力電源地帯として残るし、廃炉の雇用がある。使用済み核燃料の保管料を収入とすれば、地元の経済は成り立つと思う。要するに問題は核のゴミだ。ゴミ問題は(近い将来には)解決できないと思う。工程表を持って原発をたたんでいかないといけない」

──割高なLNG輸入価格は低減できるか。

「米国からのシェールガス輸入で効果を上げるには、まとめ買いが重要だ。米国で建設中のLNG輸出基地は、1基当たり年間350万─450万トンの装置で送り出すので、それに合った単位で買うのが最も安い。ただ、年間購入量が1000万トンを超えているの東電、東京ガス(9531.T: 株価, ニュース, レポート)、中部電力(9502.T: 株価, ニュース, レポート)で、大阪ガス(9532.T: 株価, ニュース, レポート)が700万トン、関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)が500万トンくらい。残りは300万トン級だが、特定の調達先から1社当たり350万トンの輸入量はリスクが高い。韓国ではKOGAS(韓国ガス公社)が1社でまとめ買いし、KEPCO(韓国電力公社)の分まで買えるから、あらゆるロットに対応できる。ただ日本は、原発が2基しか動いていない状態でLNGを購入すると交渉力が弱い」

「あと重要なのは、LNGのスポット市場を東アジアに作ることだ。(中核となる)ハブ港は、日本の半分の面積敷地でLNG基地が建てられる韓国の釜山になるかもしれないが、マーケットメカニズムを活用することで、(英熱量単位当たり)16─17ドルの(東アジア)LNG価格が欧州並みの11─12ドルに下げられる可能性がある」

──八木誠・電気事業連合会会長(関電社長)が、発送電分離では「原発を持つのは難しい」と発言した。原発の国策民営の見直しは。

「理想的には国営だが、現実問題としては沸騰水型(東電、中部電、東北電力(9506.T: 株価, ニュース, レポート)、中国電力(9504.T: 株価, ニュース, レポート)、北陸電力(9505.T: 株価, ニュース, レポート))と、加圧水型(関電、九州電力(9508.T: 株価, ニュース, レポート)、北海道電力(9509.T: 株価, ニュース, レポート)、四国電力(9507.T: 株価, ニュース, レポート))ではシナリオが違う。四国と九州は企業努力により稼働率が沸騰水型よりも平均で10%くらい高い。だから依存度が高くなった」

「沸騰水型は、新安全基準では再稼動する時点でフィルター付きベントが必要になる方向だ。一番早いのが2015年に付く東電柏崎刈羽原発で、沸騰水型は数年間は再稼働しないだろう。しかし、事故を起こした東電が再稼動することには(社会の)抵抗感が残ると思うから、事業主体を変えざるを得ない。そこで、(敦賀原発の廃炉危機に直面する)日本原子力発電が沸騰水型の運用会社になるというシナリオがある。日本原電の筆頭株主は実質国有化された東電で、原電も半ば国営会社だ。原電に国がある程度出資して、東京都など関東広域連合に新潟県が入って自治体運営するのも奥の手。安全に運転すればもうかるから、(自治体の)財政も潤うのではないか」

(インタビュアー:浜田健太郎、前田りさ、インタビューは14日)

(ロイターニュース、浜田健太郎:編集 山川薫)

 
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