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焦点:中国で高まる労働法批判、過剰な保護が改革阻害との声
2016年3月15日 / 23:21 / 2年前

焦点:中国で高まる労働法批判、過剰な保護が改革阻害との声

 3月12日、中国の強力な労働者保護に対する批判が上層部からも浮上している。写真は北京の人民大会堂を警備する兵士。7日撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)

[北京 12日 ロイター] - 中国の強力な労働者保護に対する批判が上層部からも浮上している。経済のリストラが進むなかで「硬直した政策が雇用創出を阻み、賃金を抑制している」との主張に対して、政策当局が社会不安を懸念しているからだ。

中国の労働契約法と最低賃金法のせいで、業績不振に苦しむ経営者が、業績の好転を図ったり、事業の売却先を探すことが困難となっているとの批判は、海外や民間の企業幹部を中心に以前からあった。

今や同じような不満が、減速経済の現代化を進め、重工業部門の過剰生産能力の削減に腐心する政策当局者からも、漏れるようになっている。

輸出部門が盛んで、市場改革の先鞭をつけることも多く、経済規模が1兆ドルに達する広東省は8日、同省における最低賃金の定期上昇を停止。2016年から2018年までは2015年の水準、つまり月1500元強(2万6000円)に据え置くと発表した。

国営新華社は同日、中国の楼継偉財政相が、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の演説で、自国の労働契約法を批判する意見を述べたことを大きく伝えている。

労働契約法の制定は2008年に遡る。当時の中国は、薄給の労働者を酷使する労働搾取工場として有名になっており、社会主義を掲げて権力を独占する共産党にとって頭痛の種となっていた。

この法律は、大半の労働者について週40時間労働と法定産休期間を定め、能力不足又は犯罪、重大な懲戒対象行為を理由として従業員を解雇する場合に、企業側に立証責任を負わせた。

実施状況はお粗末だったとはいえ、この法律が定める基準は、新興市場諸国よりも先進諸国のレベルをめざす野心的なものだった。

たとえば、EUでは週労働時間を48時間に制限しているが、中国では、月最大36時間認められている超過勤務を計算に入れても、最長労働時間はほぼ同じとなっている。

最低賃金の規定は当該地域の平均の40─60%(実際には通常30─40%)とされているが、米国では約30%、イギリスでは50%だ。解雇に対する保護は日本の基準と同等となっている。

「中国政府は、可能な限り最善かつ最も洗練された労働法制を追求し、経済の方はそれに対応できないにもかかわらず、簡単に適用してしまった」と語るのは、労働者の権利を擁護する監視団体「中国労工通報」で広報担当ディレクターを務めるジェフリー・クロソール氏だ。

中国の賃金は2008年の法律制定以来、2桁の伸びを見せており、工場労働者の賃金は、バングラデシュ、ベトナム、カンボジアの賃金を大幅に上回っている。労働者保護のせいで、長期的に見れば労働者にとっても利益となる経済改革が妨げられていると考える人もいる。

「企業と従業員にとって、労働契約法が与える保護の範囲がアンバランスになっている」と楼財政相は述べ、企業が中国から他国に雇用をシフトさせる誘因になっていると付け加えた。

「最終的にそのコストを負担するのは誰か。この法律が守ろうとしている、当の労働階級なのだ」と財政相は言う。

労働運動家は、労働者保護は引き続き必要であり、企業が労働契約法に違反しても、特に地方政府とのコネがある場合には罰せられていないと指摘する。

新華社の報道は中国語と英語の双方で配信されており、規制当局者から肯定的なコメントが寄せられていることから、法改正の動きが進んでいるのではないかという憶測が浮上している。

いくつかの産業において生産能力過剰を解消し、その過程で国営企業において推定600万人規模の一時解雇を行おうとしている中国政府にとっては、ちょうどいいタイミングかもしれない。

中国政府は、失業率の急上昇や国内需要の圧迫を招くことなく、こうした改革を進めたいと思っているが、強力な労働者保護のせいで、企業は、新たな雇用創出や、創出した雇用に高い賃金を支払うことに対して消極的になっている。

<当局の干渉>

広東省東莞市に工場を保有するダニー・ロー氏は、政府が近日中に労働契約法を「統合・整理」して、製造業者にとってのコストを引き下げてくれると期待しているという。

これは、事業運営に対する当局の干渉に苛立っている企業にとっては朗報となるだろう。

東莞市にオフィスを構えるGMMノンスティックコーティング社を経営するラビィン・ガンディー氏は、「政府の官僚は、我が社を訪れては、給与明細を見せて下さいと言うんだ」と話す。「そして『御社の労働者の30%は昇給が必要。この人たちには15%の昇給を』などと言ってくる。収益性なんか何一つ気にかけてくれない」

その結果、同社は次の生産施設をインドに建設することになった。ガンディー氏によれば、インフラの点では中国に劣るものの、コストは40%も安かったという。

「もちろん、今後(中国では)あまり力を入れないつもりだ。その分の投資をインドに回す」とガンディー氏は言う。

ロイターが1月、重慶市にある印刷工場を訪れ、工場長へのインタビューを行っていた最中に、地元官僚の邪魔が入った。春節(旧正月)休暇前に給料を支払ったかどうか確認に来たのだという。

「(昨年には)我々を会議に呼びつけて、従業員の解雇は許されないと言われた」と彼は付け加えた。

多くのエコノミストは、中国のビジネス活動や投資が振るわない原因は(ただし公式統計では失業率は5%以下に留まっている)、まさしく、企業にとって高い賃金と低い利益率が負担となり、債務の削減や投資に踏み切れないからだという。

「赤字企業を支援するよりは労働者を保護する方がマシだ」と、北京大学の経済学者、厲以寧教授は6日、全人代会議の合間に語った。

とはいえ、地方官僚には、労働者保護の後退を危ぶむべき理由がある。自分が担当する地域で労働者の抗議行動が盛んになれば、物理的な危険も伴うし、キャリアにも響くからだ。

経済調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの労働アナリスト、Cui Ernan氏は、特に石炭・鉄鋼部門での大規模な一時解雇が見られた地域では、扇動された労働者をなだめるために、政府が労働給付の積み増しさえ行うかもしれないと語る。

「このところ、2015年末から2016年初めにかけて、労働者のストライキが過去最多水準になっている」と同氏は指摘する。

(Pete Sweeney記者)(翻訳:エァクレーレン)

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