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焦点:中国で過熱するシェアリング起業、一過性のブームか
2017年5月30日 / 06:56 / 4ヶ月前

焦点:中国で過熱するシェアリング起業、一過性のブームか

5月30日、ロイターが中国のデータ会社「IT桔子」のデータを集計したところ、4月から5月にかけ、シェアリング・サービスを提供する24社以上の新規スタートアップ企業に、少なくとも16.9億元の初期投資が実行された。写真は北京市内で24日、バスケットボールのシェアリングを利用する男性(2017年 ロイター/Thomas Peter)

[北京 30日 ロイター] - バスケットボールをしたいのに、ボールが手元になかったり、雨降りなのに傘がなかったりしたことがあるだろうか。スマートフォン(スマホ)の電池切れで困ったことは。

そんな時、中国で急速に拡大する「シェアリング・エコノミー」が助けになる。すでに、車の相乗りサービスや、自転車のシェアなどが実現している。

北京語言大学の学生ネイト・リウさんは、1時間わずか2元(約33円)でバスケットボールを借りている。コート脇の自動貸し出し機にスマホのバーコードをスキャンするだけだ。

「自分のボールをなくしたけれど、周りに聞いて回って借りるのが嫌だったので、これを試してみることにした」と、リウさんはロイターに話した。

降雨量が多い中国南部の広東省深セン市では、傘2万本の貸し出しが街角で始まった。同じようにスマホのバーコードをスキャンして傘のロックを解除する方式で、料金は30分0.5元だ。

借りた傘は、好きな場所に返却できるが、そのまま持ち帰ることもできると、「Eアンブレラ・シェアリング」設立者のZhao Shupingさんは言う。傘のシェアを提供するスタートアップ企業は、このほかいくつかある。

中国政府も注目しており、シェアリング・エコノミーは今年約40%成長し、市場規模が4兆8300億元(約78兆円)規模になると予測する。2020年までに国内総生産(GDP)の1割程度になるとみており、「シェアリング・エコノミー」で世界の最前線に立とうという中国の意気込みが伝わる。

プライスウォーターハウス・クーパース(PwC)は、シェアリング・エコノミーは今後、カーシェア、旅行、金融、人材、そして音楽と映像ストリーミングの5つの分野で発展すると予想。世界全体の売り上げ規模は、現在の150億ドル(約1兆6600億円)から2025年までに3350億ドルへと成長する余地があるとみている。

中国各地でスマホアプリを使ったシェア自転車サービスが急速に普及している。どこでも好きなところから乗れて、どこでも好きなところで乗り捨てられる手軽さがうけて爆発的に普及した。その一方で、新たな社会問題を巻き起こしている。

中国で膨らむシェアリング・エコノミーに流入している資金は、ほとんどがエンジェル投資家や、ベンチャー・キャピタルからのものだ。

ロイターが中国のデータ会社「IT桔子」のデータを集計したところ、4月から5月にかけ、シェアリング・サービスを提供する24社以上の新規スタートアップ企業に、少なくとも16.9億元の初期投資が実行された。

携帯充電器などの電源を提供する会社だけで12社あり、合計で11.3億元の投資を確保した。バスケットボールや傘などをシェアするより新しいサービスの会社は、合計で2500万元の投資を得た。

モバイル機器に敏感で利便性を追求する中国人がこうした新サービスを歓迎する一方、こうした需要が本物で持続的なものか疑問視する向きもある。売上高が少ない一方で資本集約型なビジネスであり、採算性が確実ではないとの見方だ。

「若い人は、モノを所有するのではなく、借りるという生活様式を受け入れている」と、北京を拠点とする投資ファンド「英諾天使基金」投資ディレクターのエマ・ジュウさんは言う。同ファンドは、こうしたスタートアップ企業への投資を見合わせている。「だが、シェアリングのモデルが、全ての状況で機能する訳ではない。本物の需要をとらえようとしているものもあるが、そうでないものもある」

こうした投資熱に、中国で何百もの共同購入クーポン(グルーポン)アプリ運営会社が参入し、倒産した2010ー12年のブームを思い出す投資家もいる。ほとんどの運営会社は、厳しい価格競争を経て倒産し、損失は総額で約10億ドルに上ったとされる。

「中国では、参入障壁は資本集めだけだ。それは良くもあり、悪くもある」と、北京のユニティ・ベンチャーズで投資マネージャーを務めるXu Miaochengさんは言う。「利点は、会社を立ち上げるのに必要なファンドが多くあることだ。特に専門性や新しい技術がなくても良い。欠点は、多くの資金が無駄になる可能性があることだ」

<スピードがすべて>

バスケットボールのシェアサービスZhulegeqiuを創立したCai Minさんは、早期にビジネスを中国全土に拡大して、推定10万あるとみられるバスケットボールコートの全てでサービスを提供し、数十億元規模の会社に成長させたいと語る。いずれ、バスケットボールだけでなく、シェアできる製品はすべて提供したい考えだ。

浙江省に拠点を構える同社は、Caiさんがビジネスのアイデアを考え付いてからわずか2カ月以内となる今月5日、上海のモダン・キャピタルから約1000万元の初期投資を獲得した。

「われわれは、どんな犠牲を払ってでも拡大していく。スピードが全てだからだ」と、Caiさんはロイターに語った。「もちろん初期段階ではコストが高額になる。1カ月ですべてをやらなければならなかったからだ」

具体的な数字は明らかにしなかったが、太陽光発電を採用したバスケットボールのレンタル機は、北京、上海、杭州、天津、成都の各都市に設置されており、一台あたり「数千元」するという。

「成功のカギは、競争相手よりも多く資金を集めて、早く拡大することだ」とCaiさんは言う。

だが、バスケットボール愛好家の中にも、疑いの目で見る人はいる。バスケットボールを使う機会はたまにしかなく、借りる必要性も限られるというのだ。

全てのシェアサービスは、利用開始時にデポジットを払う必要があり、サービス提供者は一時的に資金のバッファーを得られるようになっている。バスケットボールの場合、デポジットは99元からある。だが利益の伸びが遅ければ、こうしたバッファーでは長期的に不十分だと批判する人もいる。

最近のシェアリング起業ブームは、中国の自転車シェアリング会社の成功に触発された部分が大きい。「Mobike(摩拝単車)」や「ofo(共享単車)」は、2年あまりで計130億元近くを稼ぎ、中国の各都市だけでなくロンドンやシンガポールにも事業を拡大している。

EアンブレラのZhaoさんは、自分の3人の子供が、今年初めに深センで急速に広まった自転車シェアに飛びついたのをみて、ビジネスの着想を得たという。「これはただの自転車だ。これでできるなら、シェア傘ができない訳はない、と考えたんだ」

Zhaoさんは3月、コードで傘をロックする特許を取得しており、傘メーカーと鍵メーカーから引き合いが殺到しているという。最大30日間の支払いを免除してくれるオファーもあるという。

「傘のコストは、今は基本的にはゼロだ」と、彼は言う。目標は、中国南部に今年3000万本という「控えめな数」を展開することだ。

このビジネスは、すでに中国人寿保険601628.SAなどの関心を引いており、同社はシェア傘のビジネスを香港やシンガポールで展開したい考えだと、Zhaoさんは話している。

(Yawen Chen記者、Ryan Woo記者)

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