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コラム:トランプ政権、なぜロシアと関係修復すべきか
2017年4月30日 / 00:18 / 5ヶ月前

コラム:トランプ政権、なぜロシアと関係修復すべきか

 4月27日、米共和党のタカ派はもちろん、民主党の一部にも、トランプ大統領の親ロシア姿勢の転換を歓迎する声があるが、両国間にどのような違いがあろうとも、ロシアとの関係改善は米国にとって利益になる。写真は5日、ロシアのプーチン大統領。クレムリンで5日代表撮影(2017年 ロイター)

[27日 ロイター」 - 昨年の米大統領選の期間中、ドナルド・トランプ候補がロシアのプーチン大統領に対して言葉で示した親愛の情は、米国政界の主流派をひどく困惑させた。

トランプ氏が「無自覚のうちに、ロシアのスパイに仕立て上げられている」、あるいはトランプ氏がロシアから見て単に「利用しやすい間抜け」なのではないか、などと憶測をめぐらせる向きもいた。

トランプ政権発足100日を経るなか、こうした憶測はまったくの誤りだったように思われる。シリアのアサド政権による化学兵器使用に対する報復を米国が行ったことで、両国政府のあいだで厳しい批判の応酬が見られる。

いまやトランプ氏が「(米ロ関係は)過去最悪かもしれない」と指摘する一方、プーチン氏は、トランプ大統領就任以来、関係は悪化していると述べている。

共和党のタカ派はもちろん、民主党の一部にも、トランプ氏の対ロシア姿勢の転換を歓迎する声があるが、しかしここで1つ確認しておこう。米国とロシアのあいだにどのような違いがあろうとも、ロシアとの関係改善は米国にとって利益になる。

理由は以下のとおりだ。

合計14000発以上の核兵器を保有するロシアと米国は、お互いを(もちろん他国も)何度でも繰り返し破壊する能力を手中に収めている。どちらも、自らの核軍備をより破壊力の高いものにしようと近代化を進めており、偶発的な核戦争のリスクは高まっている。

だがトランプ大統領は、米ロ両国が配備する核弾頭の数に上限を設ける条約を否定するかのように「軍拡競争をやればいい」と発言しており、このリスクを無視しているようだ。

トランプ氏が本当に「米国第一(アメリカ・ファースト)」の外交政策を信奉するのであれば、米ロ核戦争のリスクを低減することに集中すべきだろう。そのためには、米国政府からロシア政府に向けて働きかけるしかない。

両国とも、世界的なテロリズムを打倒したいと考えている。先日ロシアのサンクトペテルブルクの地下鉄で起きた自爆攻撃や、1月にトルコ最大都市イスタンブールにあるナイトクラブで起きた爆弾攻撃が示しているように、旧ソ連圏の出身者が過激派に転じるケースが増えている。そのうち、ロシア出身者2400人を含む5000─7000人がイスラム派過激組織「イスラム国(IS)」と同調していると推定されている。

また、紛争地域におけるさまざまな危機を解決、もしくは、少なくとも封じ込めるためにも、米国はロシアの協力を必要としている。

たとえばシリアでは、アサド体制に肩入れしているロシアの協力がなければ、内戦終結に向けた解決策は不可能だ。特に、トランプ政権が今やアサド政権の退陣を望んでいるのであればなおさらだ。

ロシアは北朝鮮政府との経済的なつながりを深めており、国連安保理の常任理事国5カ国の一角を占めるだけに、米国が北朝鮮に対する経済的・政治的な圧力をさらに強めようとした場合に、これを助けることも、妨げることもできる。

 4月27日、米共和党のタカ派はもちろん、民主党の一部にも、トランプ大統領の親ロシア姿勢の転換を歓迎する声があるが、両国間にどのような違いがあろうとも、ロシアとの関係改善は米国にとって利益になる。写真は12日、モスクワでの米ロ外相会談後の共同記者会見に臨むティラーソン米国務長官(左)とロシアのラブロフ外相(2017年 ロイター/Sergei Karpukhin)

だが米国にとっては残念なことに、ロシア政府は、北朝鮮の最新のミサイル実験を非難する安保理声明の米国案を妨害することで、米国の国益に影響を与える力があることを改めて誇示した。

欧州における北大西洋条約機構(NATO)とロシアの軍事衝突のリスクを軽減するという点でも、米ロは共通の利害を持っている。

しかし不幸にも、ロシアがクリミア併合を強行して以来、米ロ間のコミュニケーション経路はほとんど停止しており、双方のあいだのちょっとした偶発事件でさえ、エスカレートして制御不能となるリスクが高まっている。敵に後退を強いる手段として核使用をちらつかせるというロシア側の戦略は、破局に至る可能性を増大している。

最後に、ロシアと中国が手を組んで対抗してきた場合、米国は手を焼くことになる。冷戦時代、当時のキッシンジャー国務長官はいわゆる「三角外交」を追及した。共産主義国家である中国とソ連のあいだの関係よりも、米国が双方と良好な関係を築くことを目指す戦略だ。

このところ米ロ関係が冷え込んでいるせいで、ロシアは中国側に取り込まれてしまう可能性があり、米国は新たな三角関係のなかで孤立化するかもしれない。

今後しばらくは、中国が米国にとって地政学上の最大のライバルということになるため、米国としてはこうした孤立化シナリオの回避に努めるべきだ。そのためには、米ロ関係の改善がプラスになるだろう。

大きな障害はある。

トランプ大統領が任命した政府高官の多くは、たとえばリチャード・グレネルNATO大使や、国家安全保障会議に新加入したロシア専門家フィオナ・ヒル氏、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)のように、選挙期間中のトランプ氏に比べ、対ロ強硬派として知られている。

米大統領選挙に対するロシア政府の干渉についての捜査が進められていることもあって、たとえトランプ大統領が対ロ関係の改善を望むとしても政治的に難しい状況だ。アサド政権に対して新たに強硬なスタンスを採用したのは、トランプ大統領の姿勢が、依然としてロシア寄りすぎるとの印象を薄めたい米政権の意向があるという憶測も出ている。

トランプ大統領がこのような政治的障害を克服できるとしても、重要な問題の多くについてプーチン氏と合意できる保証はない。ミサイル防衛からシリア問題、ウクライナ問題に至るまで、米ロ双方の見解は大きく分かれており、その克服が困難な可能性もある。

*筆者は米国際開発庁(USAID)の元プロジェクトオフィサーで、旧ソ連の経済改革プロジェクトに従事した経歴を持つ。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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