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コラム:離脱後の英国二分する「不完全な羅針盤」
2017年4月4日 / 01:41 / 6ヶ月前

コラム:離脱後の英国二分する「不完全な羅針盤」

 3月31日、デービッド・グッドハート氏は自著「The Road to Somewhere」のなかで、階級の概念を中心には回っていない英国社会について論じている。写真はEU旗とビッグベン。ロンドンで2月撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)

[ロンドン 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - デービッド・グッドハート氏の著作「The Road to Somewhere」は注目すべき1冊である。同作のなかでグッドハート氏は、階級の概念を中心には回っていない英国社会について論じている。

欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の決定は、国際的なエリート層と急速な変化によって置き去りにされた人たちの分断を露呈したと同著は主張している。しかし、緊張は実際に存在するものの、そのような区別は政策を語るうえで不完全な羅針盤だと言えよう。

英国は29日、正式なEU離脱手続きを開始した。しかし離脱を決定した昨年の国民投票以前にも、社会科学者たちは左や右といった旧来の区別を超えた新しい政治的志向を提案していた。

その一方は、経済発展と社会的自由の強化という「2重のリベラリズム」を広く支持する高学歴の都市居住者。もう一方は、自由化の恩恵をあまり共有しておらず、その影響によって不安定な状況に置かれている人たちである。グッドハート氏は、この2つのグループを「Anywheres」と「Somewheres」と呼んでいる。英国の国民投票によって、後者による前者の拒絶が示された。

人口6500万人の国家を2つのグループに分けようとすることは全くの一般化につながる。英国民投票における投票パターンはそのような単純化とは一致しない。例えば、英国の政治エリートの権限を拒否するスコットランド国民党支持者の多くはEU残留を支持しているし、EUの規制を嫌う自由貿易の強い支持者たちの多くは、離脱運動に加わった。

グッドハート氏も、大半の人が自身の区分けにうまく当てはまらないと認めている。とはいえ、同氏は人々の見方を単純化したり誇張したりすることをあきらめてはいない。

「より良いグローバル化は可能であり、多くのSomewhere国家の協力に基づく世界秩序は、1つの超国家的なAnywhere大国によるものよりもはるかに好ましい」と同氏は指摘。だが、この場合のグローバルな政府を誰が支持しているかについては説明していない。

グッドハート氏は、Somewheresがあまりに長きにわたって無視されてきたと考えており、大半の英国人が地理的な流動性に欠け、多様性を受け入れず、彼らを代表して決断を下す政治的・官僚的階級よりも不平等の拡大に苦しんでいることを示す統計や世論調査を振りかざしている。これらの要因は、ブレグジット派にとって決定的問題の1つである反移民姿勢に表れた。

このような分析には重大な欠陥がある。

英国で最も外国人が少ない地域において、反移民感情が最も強くなることがよくある理由を説明していない。また、経済不安は、数世代前から英国で暮らす南アジア出身のマイノリティーと比較的新しい東欧出身者との文化的対立のせいだと混同している。しかしこうした議論において、感情が事実を支配している。

グッドハート氏は、遠い昔の英国を気難しく嘆いている。それは、自由貿易が製造業を空洞化し臨時雇いの雇用を生み出す以前に、減税とグローバルな資本主義が富の分配を二極化する以前に、ポーランドから配管工がやって来る以前に、そしてイスラム教徒の前に「過激派」と付く以前に存在した英国である。

英国の首都については次のように豪語している。「一部が主張するように、もしロンドンが国全体の未来だというなら、それはほとんどの人が望んでいない未来である」と。

リベラルな「プロスペクト」誌の元エディターであるグッドハート氏は、自身の恵まれた経歴と、最終的に都会的な仲間を拒絶するに至った思考過程について正直に記している。しかしながら、「白人の英国人」という種族に対する擁護が時に押しつけがましく感じられる。それはかつて、ロンドンのサロンにいながら労働者階級を称賛した社会主義者の知識人を思い起こさせる。

さらに言えば、Somewheresとしてグッドハート氏が一緒くたにするあらゆるグループが、一元化された目標を認識しているわけではない。イングランド北東部の元工場労働者と同南西部の農業従事者に、明らかに重なる利害はほとんどない。このような共通点の欠如は、格差を縮めるための政策を立案する難しさを浮き彫りにしている。

グッドハート氏は、英国市民のために公共部門の雇用確保、退学者の将来に道を開くために徒弟制度の復活、そして小政党や地域政党の声をより届けるため選挙制度の改革などを提唱している。だが、そのような政策課題を支持する確かな協力は存在しないと認めている。

同氏はまた、英国の高齢化する労働力を活性化する移民の役割や、ロンドンと南東部の活動が他の地域を支援する規模といった経済的考察については重視していない。

ブレグジットが決まってから9カ月が経過したが、英国の政治は抜本的な再編成をまだ経験していない。国民投票は、経済的・社会的リベラリズムに対する世界的な反動の始まりを示していたのだろう。あるいは、他の多くのことには賛同しないであろう有権者たちの緩い連帯をもたらしたのかもしれない。

「言うまでもなく、変化は絶え間なく、それは人間の存在においてわれわれの大半が好ましく思わないことの1つである」とグッドハート氏は記している。奇妙なことだが、まさにこうした感情が、多くの年月で英国が経験してきたなかで最も痛みを伴う変化が起きるのを後押ししたのである。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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