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コラム:ダボス会議に漂うトランプ氏の「存在感」
2016年1月20日 / 08:43 / 2年前

コラム:ダボス会議に漂うトランプ氏の「存在感」

 1月19日、20日開幕する世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、実際に参加予定のない米著名実業家ドナルド・トランプ氏(写真)の存在を感じることになるだろう。アイオワ州で撮影(2016年 ロイター/Mark Kauzlarich)

[ダボス(スイス) 19日 ロイターBREAKINGVIEWS] - 20日開幕する世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、実際に参加予定のない米著名実業家ドナルド・トランプ氏の存在を感じることになるだろう。

米大統領選に出馬しているトランプ氏を想定外の選挙活動に駆り立てるポピュリズムの根源は、ダボス会議が象徴する不平等にある。そして今年もまた、世界中のビジネスリーダーや政治的指導者たちが、その解決策を20日から23日までスイスのダボスで話し合うのだ。

特に2008年に金融危機が始まって以降、体制を脅かしかねないほど有権者の不満を引き寄せた政治家は数多くいるが、なかでもトランプ氏はその最たるものだ。

トランプ氏とその仲間に象徴されるような分裂は、理論的には利点もある。政治や企業の利益が確立されている腐敗した体制はいずれ、民主主義制度の信用を傷つける。それはやがて経済不安に、ひいては暴力的な革命につながりかねないことを歴史は示唆している。だが、ある種のポピュリズムも同様に、恐ろしいリスクをはらんでいる。

「民主主義におけるポピュリズムの歴史は素晴らしいとは言い難い。自己修正がきかないケースが多々ある」と、大手投資銀行ラザードのケネス・ジェイコブス最高経営責任者(CEO)は先週、ロイターBrakingviewsのイベントで語った。「2つの大戦に挟まれた期間の欧州や、多くの中南米諸国の場合は戦前と戦後を見れば、それは一目瞭然だ」と同CEOは話した。

議論の余地がないのは、あらゆる形の現代ポピュリズムの根源は同じだということだ。つまりそれは、社会契約に対する不満や、経済発展の恩恵は非対称的に分配されているだけでなく、もはや一般市民が手にすることが不可能だという揺るぎない認識である。

国際非政府組織(NGO)オックスファムは、ダボス会議を前に発表した報告書のなかで、それが今日の世界にまさに当てはまりそうな驚くべき証拠を提供している。11月に大統領選を控える米国だけではなく、世界中について言えることなのだ。

格差に関する同報告書によれば、世界の資産家上位62人(うち男性53人)の総資産は、下位50%(36億人)の総資産に匹敵する。わずか5年前は、上位388人の総資産と匹敵していた。さらに、この上位62人の総資産は2010年以降にほぼ倍増しており、5420億ドル(約63.2兆円)に達している。

ダボスに集結する億万長者やCEOや首相は、金融危機以降、富や所得の不平等に関する根本的な問題を痛感している。今年は「第4次産業革命を制する」とのテーマで、富の格差を悪化させている技術やオートメーションについて議論する。また「不平等の政治」や「不平等の課題」と題したセッションも行われる予定だ。

そんななか、不平等の副作用と診断されてもおかしくないポピュリズムが、ダボス会議のアジェンダに含まれていないというのは残念な話だ。

専門家は、米国のニューディール政策や中国の市場経済への転換といった比較的無血の改革がポピュリズムの中心にあったと主張する。双方とも、確立された秩序のなかで大きな変革をもたらし、多くの人々を貧困から抜け出させ、中流層の仲間入りをさせる効果を発揮した。

ただ、当時のニューディールから派生した政策の数々が、現在打ち砕かれているという考えこそが、大統領選の共和党候補指名争いでトランプ氏を勢いづかせていることにつながっているように見える。

民主党候補指名争いでも同じような現象が起きている。一部の世論調査によると、バーニー・サンダース上院議員がヒラリー・クリントン前国務長官をリードしている。

両者とも犠牲者心理に訴えており、これはポピュリズムの悪い側面を往々にして特徴づけるようなやり方だ。サンダース氏は裕福なエリート層、「ダボス人」を激しく非難し、トランプ氏は自身の支持基盤である失業者の悩みと、権威主義的にグローバリゼーションへと向かう政府を関連させて、イスラム教徒やメキシコ系移民を標的にする。グローバリゼーションはダボス会議の存在たらしめる、まさに前提条件である。

「米国の資本主義における契約とは、いたってシンプルだった。つまりそれは、自分が金持ちになるチャンスがある限り、あなたが金持ちになっても構わない、ということだ。われわれにとって現在の課題は、それがもはや根本的に機能していないのかどうかということだ。次は成功できないという印象が広がっている」と、ダボス会議に出席するラザードのジェイコブスCEOは語った。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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