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コラム:春まで株高か、共和党政権の経験則=木野内栄治氏
2017年2月10日 / 06:16 / 7ヶ月前

コラム:春まで株高か、共和党政権の経験則=木野内栄治氏

[東京 10日] - トランプ米大統領の政権運営に対する不安と期待が交錯している。例えば、米国10年債利回りは、大統領選挙の頃には1.8%程度だったが、12月央には2.6%程度まで急騰した。しかし、それ以降はボックス相場だ。

直近ではそのボックスの下限である1月央の2.326%の水準割れを試している。連れて、為替市場もドル安気味で、トランプ政権の政策に対する不安が感じられる値動きとなっている。

そこで、今年と同じように民主党から共和党に政権が移行した年を見ると、年後半のNYダウは下落する傾向が強い。景気に関しても、政権1年目に必ず後退期に入っている事実は見逃せない(分析対象期間は戦後。以下同じ)。

具体的な景気の後退期間は、アイゼンハワー政権1年目の1953年7月からの10カ月間、ニクソン政権1年目の1969年12月からの11カ月間、レーガン政権1年目の1981年7月からの16カ月間、W・ブッシュ政権1年目の2001年3月からの8カ月間だ。

逆に、共和党から民主党に政権が移行した年は、ケネディ政権やオバマ政権のように、従前からのリセッションが底入れすることはあっても、新たに景気後退に陥ったことはない。

こうして見ると、民主党から共和党に政権が移行した1年目に景気が必ず後退してきた理由は、共和党伝統の「小さな政府」政策やそれに対する事前の不安感だろう。やや緊縮的な財政政策が適用される政権1年目の10月前後に景気の失速を招いているのだろう。

<減税よりインフラ投資に景気後退回避の鍵>

ここで見逃せないのは、トランプ大統領と類似性が指摘されることが多いレーガン大統領も、政権1年目には景気後退に陥ったことだ。レーガン大統領は、減価償却に対するインセンティブ拡充などによって企業の税負担を軽減し、個人の所得減税も実施した。しかし、減税政策は景気に対して、すぐには効果が出なかったわけだ。

トランプ大統領が選挙中に公約した減税やインフラ投資がどのようなタイミングで実施されるかは不明だが、ライアン下院議長は8月までに税制改革を法案化したいと発言している。

そうなると、例えば法人減税のメリットが生じるのはおそらく来年3月頃の納税時期だろう。それも10―12月の1四半期分だけのわずかな額にとどまる懸念もある。ある程度の金額が民間にシフトするには、さらに時間が必要ともなりかねない。加えて、減税分の全てが活用されるかも定かではない。

これに対し、インフラ投資は直接的ですぐに効果が出やすい。通常ならば10月からの新会計年度入り後に、公共事業に対する入札などが行われる。契約金額は巨額であり、インフラ投資の金額分の経済効果は必ず期待できる。

さらに、建設会社が建設機械を購入し、人員を雇うなど民間部門での投資と雇用の誘発効果も年内に顕在化する。つまり、減税とインフラ投資では支出に対する有効需要の創出効果や効果が出る時期がまるで異なる。よって、インフラ投資が積極的に行われるなら景気後退リスクは大きく後退すると言える。

では、大型インフラ投資は現実化するのか。その鍵を握るのは、かねて指摘しているように、米国企業に海外利益のリパトリエーション(本国還流、以下リパトリ)を促す「リパトリ減税」の有無になるだろう。リパトリ減税とは企業が海外利益を米国内に還流する際の税率を下げる政策だが、徴税効果アップで税収増が期待できるので、早々に打ち出されるのなら、そこからの税収増を財源として当て込むインフラ投資に軸足が置かれるはずだ。

インフラ投資が主に民間資金を活用するにしても、リパトリ減税を行うなら、その効果を減殺してしまう法人減税はトーンダウンするだろう。自ずとインフラ投資に軸足が置かれることになろう。

ただ、リパトリ減税が打ち出されないなら、法人減税に軸足が置かれることになり(あるいは同時実施でもリパトリ減税を利用するメリットが減殺され、徴税効果は出にくくなり)、大型インフラ投資は遠のく可能性がある。法人減税より先に判明する可能性があるリパトリ減税議論の行方に注目したい。

<過去の例では2月から4月前後まで米株は堅調>

さて、共和党に政権が移行した年は、年後半に米株安に見舞われたと前述したが、実は2月から4月前後まではNYダウが堅調となる傾向を確認できる。

議会演説などを通して政権交代に伴う不透明感が晴れてくることが、この時期の株高の背景だろう。トランプ政権では大統領令を中心に、ややエキセントリックな政策が先行した。しかし、今後は議会との協業政策が中心となってくるので、今まで以上にエキセントリックな提案が出てくるとは考えにくい。

例えば、銀行規制緩和、あるいは実際の効果が遅い減税策の話であっても景気刺激策に関する話題ならば、まずは株式市場ではポジティブに受け止められるだろう。

また、需給の改善も期待できる。今年は所得減税が見込まれているので、マーケットでも昨年終盤には利食いを控え、年初から利食いが集中したバイアスがあった。確かに、かつて所得減税を公約したレーガン大統領就任直後の1月にも米株は軟化した。しかし、その利食いは1カ月程度で吸収しており、当時のNYダウの底値は2月13日だった。

加えて、通常の季節性の回復も期待できる。例年この時期からは税還付が始まり、5月までの累計は毎年30兆円程度に達する。今年1月は上場投資信託(ETF)を含む米国内株ファンドから資金流出が続いていた。しかし、2月1日までの1週間では米国内株ファンド分野は資金流入に転じたことが確認されている。

<日米金利のかい離修正で市場の混乱は鎮静化へ>

また、米国10年債利回りが昨年12月央以降の保ち合い下限に位置しているのに対して、日本の10年債利回りは保ち合い上限に位置している。背景はトランプ大統領が中国と日本が通貨安政策を行っていると決め付け、「他国はマネーサプライと通貨安誘導で有利な立場にある」と発言したことだ(1月31日)。ここで大統領が言う「マネーサプライ」が日銀の金融緩和策を指しているとの懸念の声が上がっている。

これを受け、日本の10年債利回りは0.087%(1月31日)から0.106%(2月6日)にプラス0.019%ポイントと上昇気味だ。同期間の米国10年債利回りがマイナス0.045%ポイントと低下していることとは対照的で、これらを受け、為替はドル安円高となっている。

しかし、日銀は金利水準を重視しており、場合によっては国債買い入れ額を増やすこともいとわないだろう。直近でも、3日に日銀は5年超10年以下の国債買い入れを若干増額すると通知した。増額幅が小幅でかえって失望を招き市場金利を跳ね上げてしまったが、同日に実際の買い入れを伴う指値オペも行った。その後も買い入れオペを続けている。

中央銀行は無限の信用創造力を持っており、1940年代の米国での金利釘付け政策時も当初のイールドカーブは5年間も引き上げられなかった。今回も、早晩、債券市場は落ち着くと考えるべきだろう。それに伴い為替市場も平静を取り戻す可能性が高いと言えよう。

トランプ大統領は安倍首相とフロリダでゴルフを予定するなど友好的な態度で、メキシコやオーストラリアの首脳に対するときとは異なる対応に見える。ここからしばらくは債券・為替市場が落ち着く第一候補の時期と考えられるだろう。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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