2017年10月6日 / 10:20 / 9日前

コラム:企業内部留保の争点化、日本経済には「一歩前進」

 10月6日、企業の内部留保の増大をどのようにとらえるべきかが、衆院選の争点の1つになりそうな情勢だ。写真は都内で記者会見に臨む、希望の党を率いる小池百合子党首(2017年 ロイター/Issei Kato)

[東京 6日 ロイター] - 企業の内部留保の増大をどのようにとらえるべきか──。この点が衆院選の争点の1つになりそうな情勢だ。私は、企業が利益剰余金を積み上げたままでは企業間競争に乗り遅れると思わせる国内市場の活性化や、規制緩和が必要だと考える。

「課税」という「直球」勝負の政策対応には数多くの異論がありそうだが、企業の内部留保に主要政党の関心が集まるなら、それは日本経済にとって「一歩前進」と考える。 

発端は、希望の党の公約に掲げられた「消費税凍結と内部留保の社会還元」という項目だ。そこには、消費増税の凍結とともに「300兆円の大企業の内部留保に課税することにより、配当機会を通じた株式市場の活性化、雇用創出、設備投資増加をもたらす」と明記されている。

これに対し、安倍晋三内閣の主要閣僚は6日、一斉に反撃した。世耕弘成経済産業相は6日の閣議後の会見で「内部留保の増加自体を問題にするのは、会計学上正しくない」と指摘。

安倍政権になってから、内部留保に当たる企業の利益剰余金は101兆円増えている一方で、設備投資やソフトウエア投資も93兆円ほど増えており、「企業がもうかった分は、ある程度投資に回っていると考えている」と述べた。

また、麻生太郎財務相は「二重課税になる」と述べ、否定的な見解を表明。茂木敏充経済財政担当相は「規模が分からないとプラス、マイナスを評価しにくい」と語った。

希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は6日の公約発表会見で、こうした批判を予期していたのか、二重課税の指摘に関連し、「米国や韓国、台湾でも既に実施されている」と説明。

さらに課税されないように企業が設備投資や企業内保育園の設立などに資金を充てれば、「ためられたお金が動くきっかけになる」とも語った。

<4年超で114兆円の増加>

財務省の法人企業統計によると、2017年4─6月期の企業の利益剰余金は388兆円。前期の390兆円から2兆円減ったものの、第2次安倍内閣が発足した時期に当たる2012年10━12月期の274兆円から114兆円増加した。

この間、企業収益は増加基調を継続。日銀の大規模緩和の反射的効果として円安が進み、それが企業収益をサポートしたとすれば、114兆円の内部留保の増加はアベノミクスの果実とも言える。

問題なのは、その間に企業の労働分配率が低下傾向を続け、国内設備投資もかつての景気拡大期のように増加していないことだ。企業が追い風を受けながら、その利益を抱えたままになっているのではないか、との「疑念」がわき起こる環境になっていた。

実際、麻生財務相も6日の会見で「設備投資などへの有効活用が必要」と述べている。

ところが、この大きな問題について、これまで野党第1党の民進党があまり関心を示してこなかったこともあり、国会論戦をはじめ国政レベルで大きな問題として取り上げられることはなかった。

希望の党の公約に盛り込まれたことで争点化しつつあるが、「課税」という対応が果たして効果的なのかどうか。

私は、課税されると分かっていて、企業がそのままキャッシュを利益剰余金として処理することはないだろうと予想する。

京都の町屋の間口が狭く、「ウナギの寝床」のようになっているのは、かつての課税基準が「間口の長さ」だったからだ。黙って課税されるような企業はないだろう。

確かに設備投資や賃上げに資金を振り向ける企業もあるだろうが、リスクを伴う設備投資を回避し、合法的な資金のシフトをあれこれと検討する企業が多いと予想する。

私の目からは、「課税」は「北風」政策のように見える。「少子高齢化」などを投資しない理由として挙げる企業経営者を「焦らせる」ような環境を作るのが、「太陽」政策になるのではないか。

たとえば陸運業界は運転手不足が深刻な問題になっているが、人工知能(AI)を使った渋滞回避のルート選定や、AIとITを駆使して荷物の移し替えを合理化するような設備投資はあまり進んでいない。

しかし、1社が導入すれば、競争上、不利になるので横並びでAI投資が進むだろう。その口火を切るような実験プランの導入などに政府や自治体が関与するケースは少ない。

抽象的なペーパープランを見せられるだけでは、企業経営者の意欲は刺激されない。企業の意欲を刺激する鍵は「AI」と「人手不足対応」だと考える。

人手不足であればこそ、平時では「不安感」をもたらすビジネスの合理化が進めやすくなる。日本は他の先進国に比べ、AI投資をしやすい環境にあることを認識するべきだろう。

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