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コラム:新興国発のインフレがやってくる
2017年3月13日 / 23:50 / 6ヶ月前

コラム:新興国発のインフレがやってくる

 3月10日、新興国市場はまもなく、デフレというよりも世界的なインフレの発信地となるかもしれない。写真は、中国の国旗と建設現場で働く作業員。北京で2013年4月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[10日 ロイター] - 新興国市場はまもなく、デフレというよりも世界的なインフレの発信地となるかもしれない。問題は、それが貿易障壁を通じて発生するのか、それとも人口動態によって発生するのか、という点だ。

1980年代以降に起きた中国、インド、旧ソ連圏のグローバル経済への融合は深刻なデフレショックをもたらし、実質的に世界の労働力のプールを倍増させた。複雑な世界サプライチェーン網に中国が加わったのは、関税が最低限化もしくは撤廃され、西側の消費財が中国や他のアジア諸国の安価な労働力を使って製造できるようになった時期とまさに重なる。

しかし、現在は廃止された「一人っ子政策」を長く推進していたことで高齢化が進んだ中国では、新規労働力供給が需要を上回っていた時期は終焉を迎え、2011年以降、都市部における新たな労働力は継続的に需要を下回っている。

製造拠点を中国からもっとコストの安いインドなど他のアジア諸国に移転する動きは拡大しているが、近年、世界的な価格上昇のインパクトはコモディティー価格下落の陰に隠れているようだ。

「中国の労働力縮小と人口高齢化はインフレ圧力をもたらすだろう」と、資産運用会社ピクテのクリストファー・ドネイ氏は顧客向けメモで指摘。「労働コストが上昇し続け、コモディティー価格がこれまでの低水準から回復するならば、インフレ率はいずれ上昇する」

国際決済銀行(BIS)の2015年の調査によると、ある国で労働人口が拡大するとインフレを抑圧する傾向がある一方、高齢者や若年層の増加はインフレ上昇を招きやすいことが分かっている。

ピクテの推計では、人口動態だけで、2025年の中国総合インフレ率は、2002─2015年の平均と比べ25%上昇する可能性がある。2025年の中国国内におけるインフレ率は3%程度にすぎないかもしれないが、同国が過去25年担ってきた役割に容易に取って代わるような安価な労働力が見当たらないため、それは世界的なインフレにかなりの影響を、長期的に与える可能性がある。

しかしこれは、中国にとって悪いことではない。製造業や輸出への依存度を下げ、消費主導の経済成長を目指すために賃金上昇を必要としているからだ。

人口動態の変化には逆らえず、米国と世界におけるインフレ圧力が高まる運命にある一方で、人口高齢化の素晴らしい点は、それが緩やかに進むため政策立案者や企業に適応する時間を与えてくれることだ。

<より破壊的なリスク>

より破壊的な差し迫ったリスクは、新興市場が時間をかけて価格を上昇させることではなく、新たな貿易戦争がグローバルなサプライチェーン網から部分的に新興市場を締め出し、価格を急速に押し上げることだ。

ドナルド・トランプ氏は、中国などが自国を有利にするために世界の貿易システムを操作し、米国経済と製造業の雇用を空洞化させていると非難して大統領に当選した。

「Death by China(中国による死)」の著者であり、トランプ政権で新設された国家通商会議の委員長を務めるピーター・ナバロ氏は、第2次世界大戦後から続く「リベラルな貿易秩序」に狙いを定めた政権の通商政策を明確に打ち出した。エコノミストたちにとっては悩みの種だが、ナバロ氏は貿易赤字を重視し、「もし条件が平等なら存在するすべてのサプライチェーンと生産能力を取り戻す」ことを米国は目指すべきだと語っている。

現時点でナバロ氏は、起こりそうもないそのような変化を駆り立てるべく他国に米国製品を自発的に買うよう求めている。だがもし同氏とトランプ大統領がこの件を非常に真剣に捉えているのであれば、関税や貿易障壁は避けられないだろう。

思い出してほしい。世界銀行からのデータによると、世界の関税率は1980年代初めは平均30%で、1990年代初めには40%に上昇したが、2010年までに約6%にまで低下し続けた。世界のインフレ率も同様の軌跡をたどっており、1990年代の30%から現在は約3.3%にまで低下している。

米国が関税や国境税、その他の貿易障壁を実施すれば、貿易相手国から報復的な対応を招くことから、そのように緩やかに低下してきたインフレ率は、急速に逆回転することになるかもしれない。そうなれば、インフレショックをもたらしかねない。国境税によって、米自動車価格は6─7%上昇して、平均2000ドル(約23万円)から2500ドルの値上がりになるとアナリストたちはすでに予想している。

米連邦準備理事会(FRB)は1回限りの価格上昇のようなものとして「スルー」するかもしれないが、それが賃金と物価のスパイラルに寄与しないことはあり得ず、金利の急上昇を引き起こすだろう。

その一方で投資家は、人口動態がもたらすインフレが彼らにとって最悪の問題だとすれば、それはまだ幸運だろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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