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コラム:FRBがこだわる「フィリップス曲線」の信頼度
2016年1月28日 / 02:15 / 2年前

コラム:FRBがこだわる「フィリップス曲線」の信頼度

[27日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は27日に終わった今回の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置いた。世界的な金融市場の混乱に配慮したわけだが、同時に雇用増加が物価を押し上げるとの確信もさらに強めている。

 1月27日、今後の利上げペースについて、年内に4回というFRBの示唆する見通しと、市場の織り込むシナリオには依然としてはっきりした違いがある。米ワシントンのFRB本部で26日撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst)

市場はこの姿勢に好意を示さず、株価は下落した。恐らく株式市場は、FRBがいずれ自身が表明している利上げペースを緩めるとの見方を変えていない。

バークレイズのエコノミスト、マイケル・ギャペン氏は顧客向けノートに「FOMC声明における一番の驚きは、冒頭で労働市場の勢いの強さに言及があった後で、経済成長鈍化を指摘した点だ。通常の場合、声明ではまず経済成長の認識が示されてから、労働市場の評価に移る。今回最初に労働市場のしっかりした勢いが取り上げられたのは、経済活動の鈍化が特にわれわれの予想通りに一時的要因によるものであるとすれば、FOMCは労働市場から発せられるシグナルをより信頼していることを表している」と記した。

エネルギー価格下落に起因する悪影響が一時的だという考え方の根幹をなすのは、マクロ経済において失業率と物価上昇率が歴史的にかなり安定した相関関係にあることを示すフィリップス曲線の存在だ。

昨年、何人かのFRB当局者は失業率と物価上昇率の相関度が低下している可能性があるとして、フィリップス曲線の妥当性に疑問を投じた。

しかしこうした意見は、FRBのイエレン議長のこれまでの発言だけでなく、今回のFOMC声明の論理展開でも強く否定されることとなった。

声明は「インフレ率は短期的に低いままで推移すると見込まれるが、エネルギーや輸入価格の下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される」としている。

これはフィリップス曲線が機能しているというFRBの想定がいかに揺るぎないかを如実に物語っている。雇用によるインフレ醸成の力が、エネルギー安による一時的な物価押し下げ効果を圧倒するというのがその主張だ。

FRBはこうした見方とバランスを取る形で、「世界経済と金融動向を注意深く監視する」との認識も声明に盛り込んだ。もちろんこれによって、中国経済や金融市場の動揺が新興国とコモディティ、ひいては米国経済に打撃をもたらす可能性にFRBが留意していることを意味する。つまり世界経済の情勢が悪化した場合は、闇雲(やみくも)に利上げはしないと投資家に対して請け合う意図があったのだろうが、これだけでは投資家が期待していたほどの安心感はもたらさなかった。

<路線堅持>

今後の利上げペースについて、年内に4回というFRBの示唆する見通しと、市場の織り込むシナリオには依然としてはっきりした違いがある。

CMEグループのフェデラルファンド(FF)先物は現在、3月の利上げ見送り確率を70%と見込んでおり、26日とほぼ同水準だ。より長期でも、12月でも政策金利の誘導目標が今の0.25─0.50%にとどまる確率は約33%と、声明発表前からほとんど変化していない。

前国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は、最近ピーターソン国際経済研究所への寄稿文の中で「米国のフィリップス曲線は生きている。(わたしはできることなら『なお活発に機能している』と言いたいが、それは誇張になる。失業率と物価上昇率の関係が決して非常に緊密というわけではない)」と記した。(here

これはつまり、失業率低下は引き続き物価を押し上げるが、そのペースは弱まっているということだ。ブランシャール氏はまた、消費者の予想物価上昇率は長期的に安定度が強まっているとも論じた。それが正しければ、物価が急加速して自己永続的なインフレが起きる可能性は小さくなるので、FRBにとっては束の間の景気過熱を許容するコストも低くなるだろう。

物価が逆に下振れるかどうかとなると不透明感は増すように思われる。ただ市場の各種相場水準からすれば、少なくともFRBが長期的に2%の物価上昇率目標を達成できると、投資家が想定していないと見受けられる。

一歩引いて眺めてみると、今回のFOMC声明にはリスク資産にとって好ましい材料は乏しい。FRBは雇用が物価を押し上げるので予定通り利上げするという考え方を維持しただけでなく、12月の利上げ開始以降で「経済成長が鈍化した」と認めてしまった。

次の焦点は2月10日に予定されるイエレン議長の議会証言になるだろう。そのころまでにはFRBの姿勢が幾分変化しているかもしれない。

しかし当面、FRBの今の立ち位置から金利正常化プランの後退までの距離はまだそれほど短くはないように見える。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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