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コラム:「トランプ不安」解消へ3つの根拠=熊野英生氏
2017年2月8日 / 05:53 / 8ヶ月前

コラム:「トランプ不安」解消へ3つの根拠=熊野英生氏

[東京 8日] - トランプ米大統領が何を発言するのかが読めないので、先行き不透明感が続きそうだと言われる。しかし、筆者は就任100日後の2017年4月末には、今よりもずっと不透明感は薄らぐと見ている。だから、現在の不安についての過大評価もきっと解消するだろう。

まず、トランプ大統領の意向だけで経済が動くわけではない。日本や中国が何年も通貨安誘導を繰り広げていると批判したが、ドル円レートは大幅な円高にはなっていない。昨年11月からのトランプラリーは、米経済の加速と利上げ予想によるドル高観測も加わった相乗効果である。ドル高傾向は、今後もファンダメンタルズに沿って継続するとみられる。

<ゲーム理論の教訓>

不透明感が変わる3つの予想シナリオ(根拠)を考えてみたい。まず、1つ目の予想として、トランプ大統領の発言は、次第にサプライズの度合いが小さくなるだろう。これは、私たちがいくつものトランプ発言を聞いて、馴れてくるからである。

就任100日後には、私たちは経験値を増やして、トランプ大統領の発言を今よりも冷静に評価できるようになるだろう。不透明とは、私たちの判断材料が乏しいという条件下では成り立つが、材料が増えると予想が立てやすくなって、不透明さは薄らいでいく。

2つ目の予想は、トランプ発言が摩擦を警戒して、刺激度を落としてくるというものである。メキシコとの間に壁をつくるとか、関税率を45%、35%に引き上げるという爆弾発言は、相手国から強い反発を受ける。国内でも移民排斥への批判はすさまじい。

ゲーム理論という分野で、最強の戦術は「しっぺ返し」だということが言われる。相手の一手に合意のときは優しく受容して、反対のときは強力に仕返しする。すると、相手は次第に仕返しを嫌がって合意になびいていく。

今後、トランプ大統領の政策は、さまざまな反論を受けるだろう。すると、前に進むほど摩擦の痛みに苦しんで、相手からの合意を得やすい行動に変わっていく。要するに、自然と封じ込められる力が働いて、小ぶりに変わっていくというシナリオである。

だから、日米2国間の自由貿易協定(FTA)への合意など早々に決めるのは損だと考えられる。環太平洋連携協定(TPP)のような多国間協議に後から米国が乗ってくる可能性は十分にある。

<内向き化は不利>

3つ目は、時間が過ぎていくと、今は巨大な不透明要因に見えるトランプ大統領が相対的に小さくなっていくだろうという予想である。

トランプ大統領の政策は、今のところオバマ前大統領の政策をひっくり返す意味で混乱を大きくしている。暗黙のうちにトランプ大統領は、オバマ前政権のレガシーを引きずっている。人々が望んでいる政権は、次第に前任者の否定からトランプ大統領自身の成果へとシフトする。他人を批判するのはやさしいが、建設的に議論するのは難しい。

また、旧来からのモンロー主義が色濃くなると、米国の国際的な存在感は小さくなる。2017年は、欧州各国で選挙があり、中国でも政治局常務委員が交代する。これらの新しいイベントの中では、内向きになっていく米国は不利である。

2017年の出来事が過ぎていくと必ずトランプ大統領の不透明感は、現在の地平から見るよりも小さく見えてくることだろう。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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