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コラム:マクロン仏大統領と小池都知事と日銀人事=嶋津洋樹氏
2017年7月7日 / 08:53 / 2ヶ月前

コラム:マクロン仏大統領と小池都知事と日銀人事=嶋津洋樹氏

[東京 7日] - 2日の東京都議会選は、小池百合子知事率いる都民ファーストの会が圧勝する一方、自民党が歴史的敗北を喫するという結果に終わった。報道によると、自民党内では敗因として、強引な政策運営や、森友・加計学園問題での説明不足など多様な要因が挙げられているという。安倍政権の「驕(おご)り」に国民が反発したとの評価もあり、首相の責任を問う声もあるようだ。

もっとも、政権の「おごり」に対する国民の反発という割に、都民ファースト以外の野党の存在感はほとんどなかった。共産党は確かに改選前に比べて2議席を増やしたが、立候補者のほぼ全員が当選した都民ファーストとの勢いの差は歴然だろう。民進党に至っては、東京都が蓮舫代表のお膝元であるにもかかわらず2議席減少。今回の都議会選は、特定の党の敗北というよりも、既存政党の否定と言えそうだ。

実際、今回の都議会選は「小池一強」を生み出したという点で、国政における「安倍一強」となんら変わるところがない。都民ファーストに必ずしも政治経験が豊富とは言えない議員も含まれていることを踏まえると、小池都知事を取り巻く環境は「安倍一強」に匹敵する「小池一強」となる可能性もあるだろう。しかも、小池都知事の政治的、思想的な方向性は安倍晋三首相に近い。

都議会選をあたかも国政と同列に論じることに違和感がないわけではないが、政権の「おごり」に国民が反発したという評価だけでは済まされない変化がありそうだ。

<新鮮味と実務能力の双方を求める有権者>

筆者がそう感じるのは、今回の都議会選がフランスで6月に実施された国民議会選と重なるからだ。例えば、都民ファーストを率いた小池都知事と、新党「共和国前進」のマクロン仏大統領はいずれも直近の政権で閣僚を経験。古巣と袂(たもと)を分かつ格好で自らの政治団体を立ち上げたうえで選挙に臨み、それぞれ都知事選と大統領選を突破し、議会での多数派獲得にも成功した。

しかも、都議会選で自民党と民進党が議席を減らしたのと同様、仏国民議会選では共和党と社会党の勢力が後退。特に中道左派の社会党は過半数を失っただけでなく、歴史的な敗北を喫した。また、仏大統領選で急進左派の支援を受けて善戦したメランション候補が率いる「屈しないフランス」が17議席と、国民戦線の8議席を上回る勢力となった。このことも、都議会選で共産党が党勢を拡大したことと重なるだろう。

直近の欧米政治の流れを振り返ると、トランプ米大統領に代表される通り、ナショナリズムやポピュリズムを前面に押し出した人物が席巻。これには、ルペン仏国民戦線党首やファラージ元英独立党党首、ウィルダース・オランダ自由党党首なども当てはまるだろう。ところが、足元ではそうした人気も衰え気味だ。いずれの国でも、急進左派は一定の支持を集めているが、その恩恵を中道左派が受けているとも言い難い。

その間隙を縫って登場したのがマクロン仏大統領であり、小池都知事なのだろう。2人に共通するのは、一定の政治経験がありながらも、看板をかけ替えることで新鮮味を打ち出すのに成功したことだ。それは、2人の率いる政治勢力が経験の浅い議員とともに、いわゆる鞍(くら)替え組が多いことからも明らかだろう。

こうした手法は、過去とのしがらみを断ち切りたいという理想と、実のある改革に取り組むためには一定以上の経験が必要になるという当たり前の現実の両方に対応したものと言えるが、同時に中途半端な結果に終わるリスクもはらむ。小池都知事、マクロン仏大統領は今後、単に改革へ取り組み、成功させるというだけでなく、新鮮さを保つという難題にも応え続ける必要がありそうだ。

国民が政治に新鮮さを求めるというのは今に始まったことでもないし、珍しくもない。直近では、ヒラリー・クリントン候補が米大統領選で敗北した一因とされているうえ、オバマ大統領が共和党のブッシュ(子)大統領から政権を獲得した際のスローガンは「チェンジ」だった。そもそも、戦後の米国で、ブッシュ(父)大統領がレーガン大統領の後を継いだことを除くと、同一政党が2期8年を超える長期政権を担ったことはない。

小池都知事と都民ファーストの躍進の背景に、国民の新鮮さを求める声があったとすると、安倍政権の巻き返しは一筋縄ではいかないだろう。というのも、安倍政権に対する批判として挙げられる「忖度(そんたく)」や「おごり」という言葉には、新鮮さと真逆の意味しかない。報道によると、安倍政権は近く内閣改造に踏み切るとのこと。その際、新鮮味と実務能力をいかにバランス良くみせるかが、その後の支持率を左右する可能性がある。

そして、この新鮮さを保つという流れはその他の人事にも影響するだろう。金融市場で話題になり始めた次の日銀総裁についても、経験や実務能力と同じかそれ以上に新鮮さが求められることもありそうだ。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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