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コラム:株高と債券高、ドル板挟みはいつ終わるか=鈴木健吾氏
2017年6月14日 / 09:27 / 3ヶ月前

コラム:株高と債券高、ドル板挟みはいつ終わるか=鈴木健吾氏

[東京 14日] - 米国では6月に入って、主要株価3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック)がいずれも史上最高値を更新するなど活況を呈している。一方で、金利市場でも米10年国債利回りが一時、昨年11月以来となる2.12%台へ低下するなど、こちらも活況だ。

本来は逆相関のはずの株式と債券がいずれも買われるという、過剰流動性を背景とした「ぬるま湯(ゴルディロックス)」相場の様相を呈している。

ドル円相場にとっては株の上昇はリスクオンの円安要因ともいえるが、米金利の低下によるドルの重さが勝る形となり、ここにきて1ドル=110.00円を割り込む動きがみられている。米国をはじめとする世界の株式市場の活況は、出遅れ感のあった日経平均株価を2015年以来の2万円台に一時押し上げ、結果として円高なのに株高という状況を生み出した。

米債が買われる(金利が低下する)のは景気に悲観的だからであり、米株が買われるのはその逆だ。ドルにとっては板挟み状況だが、どちらが正しいのだろうか。

<「株バブル」否定と「金利低下」肯定の論拠>

米株式市場を担当するアナリストにいわせれば、米株の上昇は基本的に企業業績の向上を反映しているため、バブルでも割高でもないという。米連邦準備理事会(FRB)による今回の利上げが始まる直前の2015年11月以降をみても、トムソン・ロイターのデータによれば、S&P500指数の株価収益率(PER)は現在に至るまで16倍から18倍程度を安定的に推移している。

つまり、株価が上昇しても1株当たり利益(EPS)が伸びているため全体的なバリュエーションは決して割高になっていない。さらにアナリスト予想集計によれば、2017年から2018年にかけてのS&P構成銘柄は全般的に10%程度の利益増加が予想されており、今後、本当に約10%の業績拡大が現実化すれば同程度の株価上昇は当然に正当化されるとしている。

加えて米国のファンダメンタルズ改善も株高要因として挙げる。上記2015年11月以降に絞っても、当時5.0%だった失業率は直近4.3%まで低下し、前年比プラス0.5%だった消費者物価は今年2月には一時、同2.7%まで上昇した。

当然、景気拡大は株価上昇に寄与する。この間、緩やかな景気拡大を背景にFRBが3回(この6月も利上げすれば4回)も利上げしたにもかかわらず、2015年11月末に2.2%台だった米10年国債利回りが直近2.1%台と、利上げ開始前から逆に低下している方が変ではないか、というのが株式市場からの見方だ。

一方で金利市場をみているアナリストはそう楽観的ではない。そもそも2009年6月から始まった米国の景気拡大局面は4月時点で94カ月に達しており、戦後平均(58.4カ月)を大きく上回っている。カンフル剤になると期待されたトランプ政権の景気刺激策や、その財源の一部として取り上げられた財政規律を度外視した米国債増発(金利上昇要因)についても、一連の混乱で実現の可能性は大きく低下した。

こうした中、ファンダメンタルズも怪しい状況という。雇用統計で今、最も注目されている賃金の伸びはいつまで経っても加速せず、物価は今年序盤をピークに下振れし始めた。

FRBは2019年まで年3回ペースでの利上げを示唆しているが、このペースで利上げを実施すれば景気をオーバーキル(過剰引き締め)してしまう可能性があり、早晩利上げをいったん停止する公算が大きい。そうなれば米金利は一層の低下を余儀なくされる可能性がある。加えて、世界中の金融緩和による流動性の増加で、金利水準・流動性・信頼性の面から米国債に対する需要は強い状況が続くという。

<ドル115円方向で予想維持>

いずれもそれなりに説得力があり、どちらが正しいかは結果論だ。しかし、筆者は米国経済に対してさほど悲観的ではない。確かに1―3月期国内総生産(GDP)は前期比年率1.2%程度に落ち込み、インフレ率も直近低迷がみられるものの、前者は暖冬や所得税還付の遅れ、後者は携帯電話料金の引き下げといった一時的要因の影響が大きい。

賃金の伸び悩みは確かにみられるが、失業率低下と労働分配率の上昇が継続している中、いずれ加速せざるを得ないだろう。4―6月期のGDPはそれなりに反発し、FRBは6月に加えて9月にも利上げを実施、12月にはバランスシート縮小を宣言するだろうと予想している。これらはドルの下支え要因となろう。

他方、米国のファンダメンタルズ以上にドルのリスクなのはトランプ大統領を巡る動向だ。目先、ロシアゲート疑惑や政策執行能力の低さなどが嫌気され、ドルの上値を押さえる可能性は高そうだ。

ただ、今のところロシアゲート疑惑が大統領の弾劾・罷免まで進む根拠には乏しいとみられる上、政策面では今月8日にドッド・フランク法の適用を緩和する2017年金融選択法が下院を通過し、またインフラ再建計画を公表するなど、それなりの進展もみせている。

一時高まったトランプ政権に対する期待は現状きれいにはがれ落ち、プラスどころかマイナス評価となっているが、夏場から秋口にかけての2018年度予算や税制改革、景気刺激策を巡るやり取りを経て多少見直され、またロシアゲートに対する懸念も後退するだろうとみており、そうなれば米国のファンダメンタルズに沿ったドル上昇がより強まるのではないかと考えている。

1ドル=110円近辺で推移するドル円相場の今後の見方は上下に割れているようだが、105円か115円かと聞かれれば、引き続き筆者は115円方向を予想しており、米景気に悲観的な金利市場より、楽観的な株式市場の見方に近いスタンスを維持している。

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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