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コラム:アベノミクス景気、いざなみ超えは可能か=岩下真理氏
2017年5月18日 / 08:58 / 5ヶ月前

コラム:アベノミクス景気、いざなみ超えは可能か=岩下真理氏

[東京 18日] - 現在、日米ともに戦後3番目に長い景気拡大局面にある。日本では3月時点で52カ月となり、「いざなぎ景気」と呼ばれる戦後2番目に長い57カ月(1965年10月から1970年7月)を、9月で抜くことができる。

戦後最長記録は73カ月の「いざなみ景気」(2002年1月から2008年2月)だ。新興国経済が台頭して世界をけん引、国内では当時の小泉純一郎首相のもと構造改革が進められていた。その記録を抜くには、現在の2012年11月の谷を起点として74カ月目にあたる2019年1月まで、景気拡大局面の継続が必要となる。

天皇の生前退位のご意向により、2019年から元号変更の予定であり、それに伴う特需は事前に期待できるだろう。2018年をうまく乗り切ることができれば、アベノミクス景気が戦後最長となるのも決して夢ではない。

<1971年と2008年の教訓>

18日発表の日本1―3月期実質国内総生産(GDP)1次速報値は、前期比プラス0.5%、年率プラス2.2%と市場予想平均の年率プラス1.7%から上振れ、5四半期連続のプラスとなった。戦後最長の景気回復期にあった2005年1―3月期から2006年4―6月期までの6四半期連続以来、約11年ぶりの快挙だ。

今回は消費と輸出の貢献が大きい。天候要因に振れる消費も、今回は携帯電話や衣服関連の支出が押し上げて前期比0.4%増と5四半期連続のプラス、設備投資も同0.2%増と2四半期連続のプラスとなり、内需の寄与度はプラス0.4%ポイントと強い。

国内需要デフレーターは前年同期比0.1%と5四半期ぶりのプラスに転じた。15日発表のESPフォーキャストの5月調査(回答期間は4月27日から5月8日)をみると、予測平均で4―6月期以降は毎期1%台前半の安定成長を続けていく姿が示されている。

だが、リスクは常にある。戦後の日本の景気循環で、山をつけて後退局面に転じるきっかけを振り返ると、古くは1971年のニクソン不況、最近では2008年のサブプライムと米国発の弱さが原因で大きな打撃を受けた。その点、今回もトランプ政権の政策運営に揺れる可能性は高いだろう。

9日にトランプ大統領がコミー連邦捜査局(FBI)長官を解任後、「ロシアゲート」と名付けられる政治的な混乱から、政策の早期実現が難しくなるとの見方が広がっている。17日の米国株は、昨年11月の大統領選以降で最大の下げ幅を記録し、ドル指数も大統領選挙後に5%強上昇した分は剥げた。アベノミクスにとって最大のリスクは、トランプノミクスの失敗だ。

また、1970―80年代の日本では、オイルショックによる原油高が景気後退局面に導いた。足元では、25日の石油輸出国機構(OPEC)総会で減産延期の合意が見込まれており、原油価格は当面、安定的な推移が見込まれる。WTIベースで1バレル40―60ドル程度のレンジなら、居心地の良い水準と言えるだろう。

他方、1980年代以降の日本では、円高も景気後退を招く重要な材料となった。今回もトランプ政権への期待剥落、もしくは保護主義色を強めた場合、いずれも円高リスクとなる。前者は過度な期待は禁物ながら、23日には2018年度予算を公表する予定だ。後者は政権内の強硬派が主要会議のメンバーから外され、穏健派重用のもと、米国第一のトーンは当初よりも和らぐと筆者はみている。

なお、米大統領選挙年の翌年には、強力なアノマリー(経験則)がある。過去5回(1997年以降の4年毎)を見ると、ドル円は年初より年末の方がいずれも円安だ。今年初めのドル円は117円台半ばにあり、さらなる円安はややハードルが高いように思われる。

だが、米連邦準備理事会(FRB)と欧州中銀(ECB)がともに年末までに金融政策の出口戦略を進めるなら、静観する日銀との対比で円安シナリオは残るだろう。その代わり、中間選挙年(2018年)の円高リスクを警戒したい。

<米経済の鍵握るIT関連需要の持続力>

足元で米国経済にも弱気な見方が増えている。米国では戦後の景気拡大局面の平均は58.4カ月と5年弱だが、現在はリーマンショック後の谷となる2009年6月からもうすぐ8年を迎える。何かのきっかけで急に失速してもおかしくはない。

確かに新車販売の4カ月連続の減少、マインド指標の頭打ち感は気になる弱さだ。前者は低金利長期化に伴う需要先食いにより、ピークアウトはやむを得ない。後者のマインド指標、例えばISM景気指数なら、勢いは鈍化も50超えは続いている。筆者は、1―3月期は天候要因も含めた季節的な弱さであり、遅れた所得税還付の実施で消費は持ち直すとみている。

4月雇用統計で業種別雇用者数の特徴は、レジャー・飲食店(前月比5.5万人増)、教育・ヘルスケア(同4.1万人増)などのサービス業で雇用が大きく伸びたことだ。消費拡大ではサービス支出が肝となろう。

また、雇用統計の数字から算出する労働投入量では、2%台の成長は可能にみえる。5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、1―3月期の成長減速は一時的との判断が示された。今後発表の5―6月指標の点検で、懸念が杞憂に終わると筆者はみている。

この先のポイントは、まずは世界的なIT関連需要の強さがいつまで続く(半導体サイクルから短くとも7―9月期までは続く)かだろう。IT関連需要は、従来の一部スマホにとどまらない。第4次産業革命の波(クラウド需要のすそ野)は、人手不足と省力化の対応策も手伝い、人工知能(AI)活用、モノのインターネット(IoT)や工場自動化(FA)などへとかなり広がっている。

仮にスマホの在庫調整が始まっても、局地的現象なら、全体の半導体市況の強さはしばらく続くことも可能だろう。それでも、ベテランのエコノミストほどその持続力に一抹の不安を感じるのは、過去に需要読み間違えで早めの在庫調整を何度か経験しているからだ。

米国ではそれ以外に、ドル高の悪影響は企業収益などにじわりと効いてくるのか(FRBの景気判断において、ドル高懸念の文言はない)、トランプ政権の税制改革の遅れ(FRBの景気シナリオには財政政策は十分に盛り込まれていない)を見極める時間帯が続こう。

前者は過去2年、原油安とドル高のダブルパンチだった状況と比べ、原油価格の安定はプラス効果がある。後者は半導体市況に弱さがみえる前に、青写真を示せれば、期待をつなげるだろう。FRBは上振れリスクを意識しており、利上げ前倒しの可能性の方が高いとみる。

加えて、欧州の存在を忘れてはならない。フランス大統領選でマクロン氏勝利となり、政治リスクが大きく後退した。経済状況も下振れリスクが後退している。

ユーロ圏1―3月期実質GDPは、前期比年率プラス1.8%と緩やかな回復を持続。他方、ユーロ圏4月の消費者物価指数は前年比プラス1.9%に上昇。食品・エネルギーを除くコア指数は2月の前年比プラス0.9%から4月には同1.2%、サービス価格も4月には同1.8%まで上昇してきた。

ECB内では、4月から月600億ユーロに減らした国債買い入れ額のさらなる減額議論が、意外と早く進む可能性がある。次回6月8日開催のECB理事会では、声明文の文言変更も考えられる。欧州での投資資金フローの変化は、日米に及ぶ可能性があり、注意が必要だ。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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