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コラム:短期円安トレンドの現実味=佐々木融氏
2017年4月27日 / 09:43 / 5ヶ月前

コラム:短期円安トレンドの現実味=佐々木融氏

[東京 27日] - 日銀は26―27日の金融政策決定会合で、大方の予想通り、長短金利操作目標、資産買い入れ方針ともに据え置いた。2017年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)見通しは前年比1.5%から同1.4%に引き下げたが、現実的にはもう少し引き下げても良いくらいだったので、ある意味、予想の範囲内と言えるだろう。

黒田東彦日銀総裁の記者会見も目新しい発言は出なかった。リスクテーク志向を強め始めた市場に対する影響は、ほとんど皆無だったと言っていいだろう。

4月23日のフランス大統領選第1回投票以降、市場は目先のイベントに対する不安感を後退させ、先行きに対する楽観的なムードを徐々に強めている。

周知の通り、第1回投票では、中道・独立系のマクロン前経済相がトップとなった。英国民投票や米大統領選と異なり、今回は世論調査の精度に信頼感を持つことができそうだ。5月7日の決選投票でもマクロン候補が極右政党・国民戦線(FN)のルペン候補に勝利する可能性が高まったと考えられる。決選投票に関する世論調査では、マクロン候補がルペン候補を20%ポイント程度引き離している。

北朝鮮情勢はまだ緊張感が高いままではあるが、朝鮮人民軍創建85周年を迎えた25日のアジア時間が過ぎていくにしたがって、リスクオンモードが高まり、アジア時間朝方は強かった円が日本時間夜10時を過ぎた頃には、1日の変動率で見て、主要通貨の中で最弱通貨となっていた。

もちろん、北朝鮮情勢の緊迫感が後退したわけではないが、市場は同情勢に対する懸念を後退させ始めているように見える。

<109円がサポートとして機能か>

また、26日に発表されたトランプ米政権の税制改革案は、大方の予想通り、具体策に欠ける内容だったが、もともと期待は大きく後退しているので、失望にもならなかった。

こうした中、市場はリスクテークに積極的となっている。投資家の不安心理の度合いを示すVIX指数は今年1月末から2月初旬の水準まで急低下し、NYダウは3月初旬に記録した最高値まであと1%以内のところに迫っている。ナスダック総合は初の6000台に乗せた。独DAX指数も最高値を更新し、仏CAC指数は約9年ぶりの高値を更新した。

ドル円相場は109円前後にテクニカル的に重要なポイントが集まっていた。例えば200日移動平均線と月足の一目均衡表の雲の上限はともに109円ちょうど近辺にある。

したがって、明確に108円を下抜けるか、110円台に乗せるかは比較的重要だったが、どうやらいくつかのリスクイベントを無事通過したように見える今、市場はリスクテーク姿勢を強め、円が弱くなり始めた結果、ドル円相場の109円ちょうど近辺のポイントがサポートとして機能した模様だ。

ドル円相場は、3月15日の米連邦準備理事会(FRB)による利上げをピークに約1カ月の間、下落基調を続けてきた。FRBが利上げをするまでドルが上昇し、利上げ後反落するのはいつものパターンだ。

昨年12月の利上げ後は2カ月弱かけてドル円相場は6%程度下落したが、今回も3月15日の利上げ後4月17日に付けた108.13円まで約1カ月間で6%程度下落している。そろそろ円安方向にそれなりの反発があっても良い頃だろう。

<ドル円と日経平均株価の上値余地>

その際、上値のめどになりそうなのは114円程度と考える。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む今年中の利上げ回数とドル円相場は過去1カ月間、相関を強めている。現在は残り1.5回程度の利上げしか織り込んでいないが、これがあと2回(つまり今年合計3回)を完全に織り込み、現在の相関関係が続くとすれば、ドル円相場は114円台半ばまで上昇する計算となる。

また、日米10年金利差が、利上げを決めた3月14―15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)直前の水準まで戻って、現在の相関が続いた場合も、ドル円相場は114円台前半に戻す計算となる。

FF金利先物市場は、今年合計3回の利上げをまだ一度も織り込んだことがない。3月の米消費者物価指数の伸びが予想をかなり下回る弱い結果だったこともあり、目先すぐに年内あと2回以上の利上げを織り込むのは難しいだろう。したがって、ドル円相場の上値のめども113円台後半から114円ちょうど近辺と見ておいた方が良さそうだ。

ちなみに、最近の日経平均株価は、ドル円相場との相関をある程度維持しつつも、ドル円相場よりも堅調に推移する傾向がある。特に注目に値するのが、過去2週間の短めの相関関係において、ベータ値(感応度)がかなり高くなっている点だ。

これまではドル円相場が1円円安方向に動くと日経平均株価はおおむね150―200円程度上昇するという関係が続いていたが、過去2週間を見ると、ドル円が1円円安になると日経平均株価は300円以上上昇する関係となっている。仮に今の相関を維持したままドル円相場が114円ちょうどまで上昇したとすると、日経平均株価は2万円を超えることになる。

ただ、目先1―2カ月程度の短期的にはドル高・円安を予想するが、政治情勢を含むファンダメンタルズに基づいた中長期的なドル安・円高予想は変わらない。筆者はトランプ大統領による保護主義政策により、ドルは結局、円に対して下落し続けると考えている。また、トランプ大統領の財政政策・税制改革は最終的には、市場の期待に応えることはできないだろう。年末までの時間軸で考えた場合、ドル円相場は100円方向に円高が進むと見ている。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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