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コラム:イタリア企業買収めぐる日立の「誤算」
2016年4月8日 / 10:21 / 2年後

コラム:イタリア企業買収めぐる日立の「誤算」

日立製作所(6501.T)が昨年、鉄道信号システム大手アンサルドSTS(STS.MI)を買収したことは、同国が外資に門戸を開放したという点で朗報だった。しかし買収価格をめぐるヘッジファンドとの反目は、日立にとって誤算かもしれない。ファンドは日立が価格を引き上げられるはずだと主張しており、その言い分は当たっているようだ。

 4月6日、イタリア企業買収価格をめぐるヘッジファンドとの反目は、日立にとって誤算かもしれない。写真は同社のロゴ。都内本社で2012年7月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

日立は昨年、フィンカメニカSIFI.MIに7億6000万ユーロを支払い、上場しているアンサルド株40%を買収。その後、残りの株式取得に向け株式公開買い付け(TOB)を開始した。しかし多くの少数株主が抵抗。ヘッジファンドのアンバー・キャピタルの主張では、日立によるアンサルドの買収価格は低過ぎると同時に、フィンカメニカの赤字子会社であるブレダに払った買収価格は高過ぎたため、少数株主は不当に低い金額を提示されることになった。やはりヘッジファンドのエリオット・アドバイザーズも価格引き上げを求め、アンサルド株を29%近くまで買い増した。

日立はファンドの要求を脅しだと一蹴。アンサルド株の保有比率を50%強まで引き上げたところで買い増しを中止した。厄介なのは、この状態ではアンサルド事業と日立の別のイタリア事業との統合を進められないことだ。

日立はアンサルドを完全子会社化することで得られるであろうシナジー効果を一部転用し、少数株主の価格引き上げ要求に応じて問題を解決することが可能だ。最も近い事例は独シーメンス(SIEGn.DE)による英エンジニアリング会社インベンシスの事業の買収で、この場合には買収事業の売上高の約10%に相当するシナジー効果が引き出せた。このケースに比べると、日立の買収は重複事業が少ない。保守的に見積もると、節約できるのはアンサルドの売上高の4%前後だろう。

これでも相当な軍資金になる。税引き前の節約額は5800万ユーロ程度になる計算。税金と年10%の金利を勘案した割引現在価値は3億9500万ユーロだ。日立が当初に示した買い付け価格、9.5ユーロがシナジー効果勘案前の公正価値だったとすれば、効果を勘案すれば12.80ユーロまで引き上げても割に合うだろう。

少数株主側にとっての弱みは、日立がアンサルドを上場させたままでもいくらかのシナジー効果を得られる可能性があることだ。株主側はおそらく、日立ならヘッジファンドとの口論よりもほかにやるべきことがあり、そちらを優先するはずだと見込んでいるのだろう。

(ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS)

●背景となるニュース

*日立は3月23日、アンサルド株を1株10.50ユーロで取得し、持ち分を50.8%に増やしたと発表した。これに先立ち、9.50ユーロの買い付け価格でTOBを開始し、未保有の60%の取得を目指したが失敗した。3月16日の声明によると、合計6.4%を保有する投資家がTOBに応じていた。

*アンサルド株29%を保有するエリオット・アドバイザーズは3月24日、日立のTOB価格が「アンサルドSTSを大幅に過小評価していた」ことが確認されたとの声明を発表した。

*日立は2015年、フィンカメニカからアンサルドを7億6000万ユーロで買収。非公開の車両製造会社ブレダも3600万ユーロで買収し、日立レールイタリアの事業とした。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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