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コラム:ブラックスワンは舞い降りるか、6つのリスクを考える
2017年7月28日 / 10:35 / 3ヶ月前

コラム:ブラックスワンは舞い降りるか、6つのリスクを考える

[東京 28日 ロイター] - 世界経済は好調だが、2008年9月のリーマンショック直前も、似たような楽観ムードが広がっていた。ブラックスワンはどこから舞い降りてくるのか。今はスーパーテールリスクだが、現実化すると大きなショックを与えかねない6つの「地雷」について考えてみた。 

 7月28日、世界経済は好調だが、リーマンショック直前も、似たような楽観ムードが広がっていた。ブラックスワンはどこから舞い降りてくるのか。アンカラで2015年撮影(2017年 ロイター/Umit Bektas)

<360度視界良好な世界経済>

国際通貨基金(IMF)は24日、2017年の世界の成長見通しを3.5%、18年を3.6%と発表した。その中で17年と18年の中国の見通しを6.6%から6.7%、6.2%から6.4%へと上方修正。日本も17年を1.2%から1.3%に引き上げた。

当面は好調な経済が持続するという「ご託宣」だ。実際、株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数).VIXは、26日までの10営業日に10を下回り続けた。この期間は過去最長で、「低リスク」を満喫している市場心理の「楽観」を端的に示している。

世界経済は、今のところ360度「視界良好」だが、得てして「好天」がずっと続くと多くの人が思った直後に大きなショックが来るケースがある。その典型例がリーマンショック直前の市場環境だった。

そこで、今は現実化の可能性がかなり低く、「スーパーテールリスク」と呼べるが、いったん顕在化したら、大きな衝撃度を与えるブラックスワンの姿を6通り考えてみた。

<1つ目のリスク、トランプ政策空振りへの失望>

1番目は、トランプ米政権の政策が空回りし続け、市場関係者が「嫌気」し、米株式市場が急落を始めるケース。

米上院は26日、医療保険制度改革法(オバマケア)の大部分を廃止する法案を45対55の反対多数で否決。27日にはトランプ政権と共和党指導部が国境税導入の見送りを決定した。

また、広報部長に就任したスカラムチ氏が、プリーバス大統領首席補佐官、バノン首席戦略官兼上級顧問を汚い言葉で非難したと米誌ニューヨーカーが報道。政権中枢の亀裂が表面化している。

このまま税制改革法案や予算案の審議が停滞した場合、今年末にかけて市場の不満や失望が充満し、何かのきっかけで「暴発」するリスクは、引き続き注視が必要だろう。

<2つ目のリスク、FRB資産圧縮で米ローン延滞率急増>

2番目は、米連邦準備理事会(FRB)の資産圧縮が今年9月から始まり、予想を超えて米長期金利や超長期ゾーンの金利が上がり始めるケース。

教育ローンや自動車ローンの延滞率が上がり出し、信用度の低いジャンク債の価格が急落し始め、米金融市場に借り手の信用度への警戒感が台頭し、リーマンショックの再来の前兆かという不安心理が広がり出すというシナリオだ。

1番目の政治的なリスクと「合わせ技」になった場合、想定外のショック発生のリスクが高まりかねいないだろう。

<3つ目のリスク、アジア地区のドル建て負債が火薬庫に>

3番目は、FRBの利上げや資産圧縮でドルの流動性が引き締まり、ドル建て債務を抱える新興国の金融や実体経済に過度のストレスがかかることだ。

国際決済銀行(BIS)によると、アジア太平洋地域の途上国が抱えるドル建て債務は、2016年9月末で約1.1兆ドルを超える。

米長期金利が上がり出せば、そうした国々の返済余力に黄信号が点灯し、それが信用不安へとダメージが広がるリスクがある。

特に地方政府や国有企業などの債務問題を巡り正確な実態が明らかにされていない中国で、大銀行のドル資金繰りに懸念が発生するようなことになれば、大きなショックの発火点になる可能性がある。

<4つ目のリスク、湾岸諸国が保有資産を大量売却>

4番目は、アラブ諸国とカタールとの国交断絶の長期化。緊張がさらに高まればペルシャ湾岸諸国の通貨とドルとのペッグ制が動揺し、通貨安の圧力が強まりかねない。その場合、通貨防衛の「軍資金」確保のため保有するドル資産を売却するだろう。

湾岸諸国は世界中で金融資産や不動産を保有しており、手持ち資産の売却が大規模に実行されれば、予期せぬ市場で価格急落が発生し、ショックが波及する可能性がある。

米政府などデータによると、湾岸諸国は米国債を約2400億ドル保有しており、米国債売却への思惑が出た場合、米長期金利の乱高下を招くこともあるだろう。

<5つ目は、ECBの出口戦略と欧州金融システム危機>

5番目は、欧州中銀(ECB)の緩和政策からの出口戦略発動で、鎮静化してきた欧州の「危ない銀行」の経営危機とシステミックリスクの表面化だ。

足元では、イタリアやスペインの国債利回りが低下し、表面上、どこにも金融危機の芽はないようにみえる。

しかし、今年6月25日、イタリア政府が欧州連合(EU)の破綻処理ルールに従わず、ベネト・バンカなど2行に公的資金を注入し清算してしまったことなどをみても、ECBの超緩和政策によって金融システムの弱さが隠されてきた面がある。

出口政策の実行に伴って、その隠れていた部分が水面上に浮かび上がってくると、南欧諸国で連鎖的に金融システムへの懸念が表面化するリスクが高まるだろう。

<6つ目はアベノリスク>

最後のテールリスクは、日本の政局。1強の安倍晋三政権が支持率低下で動揺した場合、アベノミクス相場を支えてきた海外勢がまとまった規模で日本株売りに転じると、日本発の「ショック」が発生する可能性がある。

海外勢は、この4年間で日本株を約12兆円買い越している。この「氷山」が動き出すと市場インパクトは拡大することになるだろう。

実際、一部の海外勢は、最近の日本の政局動向に対する関心度合いを高めているという。

いずれも今のところは、ほとんど発生のないに近いリスクと言える。しかし、それが一転して現実になる可能性を高めると、意外性の高さをパワーとして衝撃が加速度的に大きくなるのは、リーマンショックの際に経験済みだ。

どのリスク発生の確率が相対的に高いのか、今のうちに「頭の体操」をしておくことをお勧めしたい。

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