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コラム:桁外れの成長達成、鍵はマクロよりミクロか
2017年6月10日 / 01:09 / 3ヶ月前

コラム:桁外れの成長達成、鍵はマクロよりミクロか

 6月6日、スタグネーション(景気停滞)懸念はさておき、3Dプリンターや人工知能(AI)といったテクノロジーがボトムアップ式に普及していけば、グローバルな生産性向上や成長加速のために必要な追い風となるだろう。北京のハイテク国際見本市で8日撮影(2017年 ロイター/Jason Lee)

[6日 ロイター] - スタグネーション(景気停滞)懸念はさておき、3Dプリンターや人工知能(AI)といったテクノロジーがボトムアップ式に普及していけば、グローバルな生産性向上や成長加速のために必要な追い風となるだろう。

過去20年間、先進諸国の経済成長は、標準以下にとどまるか、借金と資産バブルによって人工的に、そして多くの場合、危険を伴いつつ支えられたものだった。こうした弱さの背後にある重要な要因の1つは、生産性成長率が着実に低下傾向にあることで、ある著名エコノミストは、現代は「長期停滞(secular stagnation)」の時代に突入していると論じるに至っている。

米国の労働1時間あたりの生産は、過去5年間、平均して年0.6%しか成長していない。これに対して、2000年代初頭は3%以上の伸びだった。

その原因をめぐる議論は白熱している。「テクノロジーの改良において実現しやすいものはすべて達成してしまったから」という説もあれば、「人口の高齢化のために低投資・低成長という状況から抜け出せないでいる」という説もある。

だが、投資運用会社PIMCOは、コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが提供する裏付けデータをベースに、「すでに発見されたテクノロジーに適応していくことで、じきに生産性が劇的に増大することになる」と主張している。

「生産性向上にけん引されて、世界のGDP成長率が『かつての標準』である4%強を回復する状況も、ここ数年のうちに視野に入ってくるだろう。そのためには、既存のテクノロジーが拡散(普及)すればいいだけだ」とPIMCOのヨアヒム・フェルズ氏とマシュー・トレーシー氏は書いている。

彼らは、こうした展望は自分たちが基準とする見方ではないが、その可能性はわずかだが高まっていると警告している。しかし、超低金利・低成長率に慣れ切った投資家にとって、そのような変化がどれほどの驚きと刺激を与えるか、的確に表現するのは難しい。

超低金利(あるいはマイナス金利)と量的緩和にもかかわらず、成長率は低いという現在の経済状況に見られる難問・特性の多くは、構造的な生産性改善により解消されるか、少なくとも緩和されるだろう。

また、皮肉ではなく、ここで論じているのは、ここ数年失敗を重ねている、あるいはわずかな成果しか上げていないトップダウン式のソリューションではない。新たなテクノロジーが適応し、これまでにない形で互いに連携することによってアウトプットを増大させるという、ボトムアップ式の物語なのだ。

もちろん、こうした物語といえども、必ずしもハッピーエンドになるとは限らない。ロボット工学からコンピューター制御のプリンターによる3D製造に至るまで、こうしたテクノロジーの多くは雇用を破壊し、所得格差を増大させる可能性がある。だが、もしそのような状況が生じるとしても、テクノロジーの適応は加速させる必要があるだろう。

<医学分野でも生産性向上>

マッキンゼーは2015年の研究のなかで、過去半世紀にわたって生産性の成長率は年平均1.8%だったが、この2倍以上に加速する可能性があると述べている。

マッキンゼー・グローバル研究所のリポートは、「5部門(農業、食品加工、自動車、小売、医療)に関するケーススタディーからは、(G20からEUを除いた)G19およびナイジェリアにおける2025年までの年間生産性成長率は最高で4%に達するとみられ、(少子高齢化という)人口動態のトレンドを相殺して余りある」と述べている。

この予測の大前提は、既存のテクノロジーが適切に普及することであり、潜在成長率の4分の3は、単に、すでにかなり実践されている「ベストプラクティス」がさらに広い範囲で用いられることによるものだ。

その一部は、たとえば韓国や日本のような場所における、既存の小売在庫管理手法の利用に比べて特に複雑というわけでもない。なかには、アマゾンがAIとロボット工学を利用して倉庫・出荷管理の効率を向上させるなど、もっと未来的なテクノロジーもある。

米国における医療の例も見てみよう。この分野では、面倒なIT技術のせいで医師や看護師がコンピューターの画面に向かう時間が長くなり、患者からもっと有意義な情報を集めることが犠牲になっている。一方、新たなテクノロジーのコストが低下していることから、歯科医院が3Dプリンターを備えることも現実的になっている。

こうした動きは、テクノロジーが新興市場により深く浸透していくなど、地理的(水平的)な意味を持つ場合もあれば、アマゾンのような大企業に潰されることを防ごうと小規模な企業が巻き返しを図るなど、垂直的な意味を持つ場合もある。

テクノロジーの普及は雇用を破壊し、知財・金融両面で投資家に利益をもたらす傾向があるため、格差を拡大し、社会的・政治的緊張を高める。

製造業はこれまで長年にわたり、人件費の安さから得られる利益を求めて世界各地に広がっていったが、消費市場に近い場所へと引き寄せられていくようになるだろう。製造の労働集約性は低下していき、製品価値に占める独自ソフトウエア/プロセスの比率が高まるからである。

こうなると、反グローバリズムを掲げることの多いポピュリスト的な政治家がこのところ台頭しているように、テクノロジーの適応が政治的に阻害される可能性が出てくる。

もっともPIMCOのフェルズ、トレーシー両氏は、ハイテク主導の生産性向上は必ずしもゼロサム・ゲームにはならないため、競争と雇用を活性化させる可能性があると主張している。

成長の加速が確実に意味することの1つは、市場がより正常なイールドカーブへと修正されるにつれて、債券価格が打撃を受けるということだ。

とはいえ、債券投資家にとってさえ、より深刻な問題があるというのが現在の状況なのである。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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