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コラム:パリ攻撃、米地上軍のシリア派遣はあるか
2015年11月18日 / 06:43 / 2年前

コラム:パリ攻撃、米地上軍のシリア派遣はあるか

 11月16日、パリ同時多発攻撃を受けて、米国がシリアやイラクでの軍事介入を強化すべきとの圧力は明らかに高まっている。仮に過激派組織「イスラム国」が米国市民を狙った攻撃を行えば、オバマ大統領は「もっと何か」をやらざるを得なくなるだろう。写真は米首都ワシントンの連邦議会議事堂とパリ攻撃の犠牲者を追悼して掲げられた半旗(2015年 ロイター/Kevin Lamarque)

[16日 ロイター] - パリ同時多発攻撃を受けて、米国がシリアやイラクでの軍事介入を強化すべきとの圧力は明らかに高まっている。仮に過激派組織「イスラム国」が米国市民を狙った攻撃を行えば、オバマ大統領は「もっと何か」をやらざるを得なくなるだろう。

その「何か」とはどのようなものか、そして、いかなる結果をもたらすのだろうか。

ただでさえシリアやイラクへの介入強化に慎重なオバマ大統領としては、現在の「パリ後」の圧力をなだめるためには空爆を強化するだけで十分とするかもしれない。

フランスも、すでに実施している短期間の激しい報復爆撃で当面は十分と考える可能性はある。それは今年初め、イスラム国によって自国パイロットが凄惨な焼身刑に処せられた後のヨルダンと同じである。その後は、より日常的な戦闘に落ち着く可能性もある。

だが、イスラム国が米国民を攻撃する場合、軍事介入をエスカレートさせることはオバマ大統領にとってほとんど義務となる。同じような空爆を増やすだけでは、復讐の要求を満足させることはできない。

もし攻撃を受けたとすれば、それがたとえ1年前であっても、そうしたジェスチャーだけでは不十分だったろうし、大統領選の最中であれば、なおさらだ。少しでも意志が弱いと見られれば、その後12ヶ月、愛国心は共和党の専売特許となり、ヒラリー・クリントン氏はホワイトハウスと関係を断たなければならなくなる。

米国が介入を強化するならば、その形式はひとつだけ。地上軍を投入することだ。

誰もそれを侵略とは呼ばないだろうが、規模の如何を問わず、それは侵略である。シリアへの侵入経路として最も可能性が高いのはヨルダン、そして政府の承認が得られた場合は、トルコであり(ただしトルコは米国による2003年のイラク侵略の際には米軍の自国国境通過を許可しなかった)、より小規模な部隊が北東部からイラク国境経由で侵入することになろう。

米国はヨルダンに相当の軍事インフラを抱えており、現地政府も米国の言いなりである。今年5月には米陸軍の指導のもと、数千名のヨルダン兵が演習に参加した。

すでにヨルダンは、シリアに続く軍事化した「人道回廊」の設置を検討している。これは容易にシリア侵入に転用できるだろう。2013年以降、米国はヨルダン駐留部隊を強化しており、攻撃機、対ミサイル装備、戦略プランナーを含む多数のプランナーといった戦争遂行のインフラを整えている。

南方からイスラム国を攻撃することは、その後のアサド政権打倒のための行動に向けてダマスカスを孤立させるうえでも有益だろう。軍事的には、侵入部隊の左側面を防御するうえで、イスラエルとその支配下にあるゴラン高原が好都合な位置にある。最後に、ヨルダン軍が参加することで米国による侵略に「親アラブ色」をつけやすくなるだろう。

イラク経由で北東部から多数の部隊をシリアに送り込むのは、イスラム国がこの地域に拠点を築いているだけにリスクが大きい。外国人戦闘員がトルコ国境を越えて米軍部隊の側方に迫ることもできる。とはいえ、適度な数の空挺部隊・特殊部隊をクルド人支配地域経由で密かに動かすことは可能だし、イスラム国を第二戦線から攻撃するために必要でもある。

クルド同盟内部を除けば、イラク本土に米軍が大幅増派されるというのは考えにくい。イラクの砂漠地帯で米兵が再び死亡する状況は米国内では受け入れがたいだろうし、バグダッドのイラク政府も、イラン側の協力者も、多数の米軍戦闘部隊の駐留はまず了承しないだろう。

イラク内戦という泥沼に米軍を再投入しなくても、イスラム国のシリア側勢力とイラク側勢力への軍事的分裂はかなりの程度自然に進むだろう。シリアから切り離されればイラク領内のイスラム国は十分に弱体化し、恐らくはクルド人勢力により、また恐らくはイラク・イラン合同勢力により、個別に撃破できるだろう。

だが問題は、こうしたマッチョ志向の戦略ゲームが、そもそもイスラム国を生み出したものとまったく同じであるという点だ。イラク、リビア、アフガニスタンで米国が経験してきたように、戦場で勝利を収めるのはたやすいのである。

イスラム国を打倒することができるとして(その拡散的な性格や多くのスンニ派ムスリムからの政治的な支持を考えると、かなり大胆な仮定だが)、報復も収まったとすると、その後はどうなるだろう。「解放された」地域を統治するのは誰か。ロシアはただ傍観しているだろうか。クルド人はシリア北部でどのくらいの土地を手にするだろう。トルコはそれにどう反応するだろうか。

シリアの国土は荒廃し、国内難民で溢れている。復興の費用は誰が負担するのか。イラクやアフガニスタン以上にシリアの復興が成功すると考えるならば、その根拠は何か。イラクにおいてアルカイダからイスラム国が生まれたように、シリアはイスラム国の後継者を生み出す温床になる可能性がある。

シリア・イラクへの地上部隊派遣というシナリオは予測しやすい。想定される戦略も十分明確に考察できる。だが本当に重要なのは、「戦後」にどう取り組むかだ。そのための計画はあるのだろうか。

*筆者は、米国務省に24年間勤務。著書にイラク再建の失策を取り上げた「We Meant Well: How I Helped Lose the Battle for the Hearts and Minds of the Iraqi People(原題)」などがある。最新刊は「Ghosts of Tom Joad: A Story of the #99 Percent(原題)」。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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