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コラム:量的緩和は「期待外れ」に終わるのか
2015年12月25日 / 07:12 / 2年前

コラム:量的緩和は「期待外れ」に終わるのか

 12月22日、米FRBが利上げ局面に入った今、他の主要国の中央銀行としても、「特例措置」への情熱が冷めていることに気づいているのかもしれない。写真は鏡に映る日銀本店。都内で2012年11月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[22日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げ局面に入った今、他の主要国の中央銀行としても、「特例措置」への情熱が冷めていることに気づいているのかもしれない。

あるレベルでは、低成長・低インフレ国の中央銀行としては、金融緩和の根拠はいっそう増えている。FRBの動きは、グローバルな金融条件を引き締めたが、他の中央銀行がこれに呼応する動きはまったく出てこない。米国の利上げによってドル.DXYは上昇したが、他国の中央銀行としては、特例的な金融政策を続けることによって自国通貨安を維持し、新たな輸出市場を獲得することができる。

だが、16日のFRBによる政策金利の25ベーシスポイント引き上げ以前でさえ、他国の中央銀行は、さらなる利下げと資産買い入れに対して優柔不断になっていた。

欧州中央銀行(ECB)は12月はじめ、マイナス金利を拡大したもののわずか10ベーシスポイントの利下げに抑え、債券買い入れプログラムについても拡大ではなく期間延長に留めることによって、市場を落胆させ、ECB内部での意見の対立を裏付けた。

日本銀行はFRBによる利下げ決定の後、債券買い入れプログラムを修正した。だが日銀はそれに先立つ10月30日、より大規模な新規の措置を発表せず、その一方で2%のインフレ達成という目標の達成を自ら先送りしたことで投資家を驚かせている。

さらに、日銀が18日に発表した金融緩和の補完策は結局、日経平均.N225の急落を引き起こした。

ヘッジファンド、SLJマクロ・パートナーズのスティーブン・ジェン氏は、顧客に対する書簡のなかで、「先進各国の中央銀行は、非伝統的な政策の成果が『収穫逓減』となるポイントに達してしまっており、さらなる金融緩和を正当化することに困難を感じている。全体として、これ以上市場に『衝撃と畏怖』を与えることは不可能だ」と述べている。

「2016年には、悪いニュースはもはや良いニュースにならず、経済にとって良いニュースがリスク資産価格にとって悪いニュースになるのではないかと推測している」とジェン氏は言う。

2008年の深刻なリセッションのさなかにFRBが集中的な市場支援措置を開始して以来というもの、悪いニュースは投資家にとって奇妙な魅力を帯びるようになった。悪いニュースがあれば、各国中央銀行からさらに大規模かつ思い切った支援が約束されるからだ。そうした支援は金融資産価格の下支えを意図したもので、実際にそのような効果をもたらしている。支援措置が終了するにつれて、反対の効果、つまり資産価格の下落が予想される。

米国における良いニュースによってFRBの利上げ継続が可能となり、国外での悪いニュース、あるいは評価の分かれるニュースがECBまたは日銀による新たな支援措置の呼び水にならないとすれば、なおさら資産価格は下落するだろう。

<(まだ)存在しない資産の買い入れ>

日本は特殊なケースだが、日銀が発表した変更内容を見れば、量的緩和(あるいは資産買い入れ)が迷走しつつある様子を実感できる。

日銀は、より残存期間の長い国債を買い入れることにしたほか、不動産投資信託(REIT)の銘柄ごとの買い入れ限度額を引き上げ、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる」企業を対象とした新たな上場投資信託(ETF)買い入れに年間3000億円を投じると発表した。

だが、少し気になる。そのようなETFが日本に存在するようには思えない。いわんや、そのような企業とはどのようなものか、衆目の一致する定義など見当たらない。

他方で、「日本設備投資・人材投資ETF」を立ち上げることが夢だったという人にとっては、非常に資金力の豊富な金融機関がファンドの購入に手を挙げてくれたことになる。

日銀はすでに日本で発行されているETFの半分を保有している。ただし、日銀によるETF買い入れは、主要な日本の株価指数と連動するファンドを対象としてきたという事実がある。

ここでの日銀の狙いは明らかである。そして、量的緩和の実際の効果について日銀がいら立ちを感じていることも露呈している。

量的緩和を支える大義名分の一つは、円安JPY=と資金調達コストの低下を受けて新規市場を模索している企業が、新たな生産に向けた投資を決意するような条件を創出することだ。

もしそうした効果が生じているのであれば、生産も賃金も上昇しているはずだ。だが日本企業は逆に、(高齢化という)人口動態を理解していることもあって、社内留保を積み増しするだけで、賃金上昇という形で利益を配分することに消極的だった。

日銀の緩和補完措置のニュースを受けて日経平均が下落したのは、恐らくそれが理由だろう。こうした考え方を敷衍(ふえん)すれば、論理的には、量的緩和とはもっぱら企業およびその株主である富裕層に対する補助金であるという結論に至ることになる。

2016年は、データの裏付けに従って、各国中央銀行が金融引き締め、あるいは現状維持を選ぶ年になってもらいたいものだ。さらに緩和を拡大すべきとする根拠は強くないのだから。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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