Reuters logo
コラム:日経平均、来年末「1万6000円」の現実味=丸山俊氏
2015年11月24日 / 02:05 / 2年後

コラム:日経平均、来年末「1万6000円」の現実味=丸山俊氏

[東京 24日] - 世界経済減速懸念もどこ吹く風か、日経平均株価は2万円台をうかがうところまで回復した。背景には、年金一元化を契機とした3共済の運用見直し、日本郵政グループ3社の上場とゆうちょ銀行・かんぽ生命の運用見直し、補正予算編成方針に加えて、欧州中銀(ECB)の追加緩和示唆、米利上げ観測復活に伴う円安など、様々な要因がある。

これらの好材料は株価におおむね織り込まれつつあるが、まず新展開が注目されるのがECB要因だ。もし追加緩和が実施されれば、欧州マネーが一段と流入してくる可能性がある。ECBが今年1月に量的緩和を採用したとき、マイナスの短期金利に直面した欧州マネーの利回り追求が米国国債だけでなく日本国債に及んだ。ポートフォリオリバランス効果は外国株式にも向かい、利上げを模索する米国株より日本株が選好された。

今年1月から2月における食品・医薬品株の大幅なアウトパフォームは低ボラティリティー株に狙いを定めた欧州勢の利回り追求を抜きには語れない。米国の利上げがカウントダウンを迎える中で外銀のドル調達コストは一段と上昇しているため、歴史的な低金利水準であっても日本国債や日本株に欧州マネーが流入している。ECBの追加緩和は、日銀の追加緩和(期待)に勝るとも劣らないプラス効果を資産価格にもたらすだろう。

また、中国に対する市場の見方にも変化が表れつつある。金利自由化により金融機関の預金獲得・貸出競争が激しくなれば、1980年代後半から90年代前半の邦銀がそうだったように、中国国内で新たな信用バブルが生み出される可能性が否定できない。これまで新興国の信用バブルは先進国の低金利を背景とする資本流入によって引き起こされるのが常だったが、規律を欠いたまま金融自由化を推し進めれば、中国の、中国による、中国のための信用膨張を避けるのは難しいからだ。

欧州ロングマネーの資金流入と中国経済の上振れリスクこそ、現在の株価には十分織り込まれていない上げ材料であり、来年春先に向けて日経平均株価は2万円を上回ると予想している。そうした中、米連邦準備理事会(FRB)は12月にも利上げを実施する公算だが、市場は比較的冷静だ。

ただし、政策金利が引き上げられれば、年末に向けて金融機関だけでなくマネー・マーケット・ファンド(MMF)や海外中銀などの短期安全資産の運用ニーズが急激に高まるだろう。その場合、FRBがリバースレポ増額、特にカウンターパーティーあたりの上限引き上げなどの措置を取れば、実質的に市中の流動性(特にMMF)を回収することになる。つまり、FRBのバランスシート規模は維持されるものの、引き締めと同じ効果が生じる可能性がある。

米利上げは実体経済に及ぼす影響は限定的であると思われるが、年末要因も重なるため、短期金融市場の動向に十分注意したい。

<来年の株価を左右する4大要因>

問題は日経平均2万円後の2016年における株価シナリオだ。そもそも、世界経済成長見通しが政策によって大きく改善すると考えている投資家は少ないだろう。先進国株価が金融緩和によって押し上げられる局面は実際、終わりを告げつつある。

確かに、16年1月に召集される通常国会では、15年度補正予算や16年度税制改正の法案成立が見込まれるほか、運用体制を整えたゆうちょ銀行が本格的に運用見直しに着手する見込みだ。海外景気の持ち直しや賃金上昇の高まりなどにより、国内景気も徐々に踊り場を脱する可能性が高い。

しかし、いずれも日経平均株価を一段と押し上げるには力不足だ。筆者は16年の日本株を見通す上で、1)17年3月期の企業業績、2)16年7月の参議院選挙結果、3)参院選後の安倍政権の政策、の3つの株価カタリストに注目し、シナリオ別に同年末の日経平均株価を予想している。

メインシナリオでは、1)17年3月期の期初に会社側が開示する同期の収益計画が4期ぶりの減益となる、2)参院選で自公連立与党が勝利するものの衆参両院での圧倒多数(3分の2)には届かない、3)社会保障制度・雇用制度改革が実現しない、との前提で、16年末の日経平均株価は1万6000円(ドル円相場は1ドル=110円)まで下落していると予想する。

このうち最も重要なテーマは、日経平均2万円以上を維持するのに必要な成長力の底上げに参院選後の安倍政権が真剣に取り組むか否かだ。

日本経済に成長の伸びしろがあるとすれば、それは「投資」ではなく「消費」である。特に現役世代の消費性向が低い(高所得層、つまり中高年齢層の貯蓄率が高過ぎる)日本経済では、医療・介護・年金といった社会保障不安を取り除いたり、子育て世帯への公的扶助を充実させて女性の労働力化を促したり、解雇ルールを明確にして硬直的な雇用慣行を改めて労働市場の柔軟性を高めたりすることで、現役世代の消費が増加する余地は大きい。

ただし、そのためには高齢者・大企業・組合・高所得者などの既得権益者に負担を強いることになる。歴代政権が避けてきた消費増税と社会保障・雇用制度改革に安倍政権が本格的に取り組めば、憲法改正に勝るとも劣らない功績となろう。逆にそれができなければ、アベノミクス相場は参院選前に最高潮を迎える可能性が高い。

<日銀はダウンサイドリスク>

最後に金融政策について言い添えれば、日銀は「期待に働きかけて株高をもたらす存在」ではなく、「現実を見て株安を阻止する存在」に変質しつつあると見ている。仮に量的・質的緩和を拡充するとしても政策手段には限りがあることは明白であり、外貨建て資産買い入れといった思い切った新次元の手段を取らない限りは、日銀を日経平均2万円後の株高要因として見ることはできない。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に続く3共済(国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済)の運用見直し一巡後は、日銀が現行の国債買い入れペースを維持していくことは徐々に困難になっていく。16年後半には現実問題として緩和縮小が意識されるようになるだろう。

13年5月にバーナンキ前FRB議長が緩和縮小を示唆したときのように金融市場にボラティリティーの高騰をもたらし、資産価格ショックが走る可能性も否定できない。バーナンキ前議長は緩和縮小発言から8カ月後の14年1月末に2期8年の任期を終えて退任した。黒田日銀総裁は18年4月に1期5年の任期を終えるが、17年4月に消費税率引き上げ(8%から10%)があることは金融政策判断をより一層困難にするだろう。

また、米国でもFRBが保有する米国債の償還が本格化し、利上げの進捗(しんちょく)に合わせて償還資金の再投資を止め、バランスシートを正常化させるステージに入っていく可能性が高い。16年(特に後半における)日米の金融政策は波乱含みの展開と覚悟した方が良さそうだ。

逆に16年末も日経平均株価が2万円を上回り続けているための条件は、1)安倍政権が社会保障・雇用改革に真剣に取り組む、2)金融自由化が進む中国で預金・貸出競争が過熱して信用バブルが起こる、3)大統領選後の米国で債務上限引き上げ・所得減税の財政回帰が起こる、4)日銀が外貨建て資産を購入するなどの「新次元緩和」が導入される。このいずれかのシナリオが実現しないと難しいのではないか。

*丸山俊氏は、BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト。早稲田大学政治経済学部卒業後、三和総合研究所に入社し、クレディ・スイス証券を経て2011年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below