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コラム:株高の最大リスクは米国境税、日米のつれ高遮断へ 
2017年3月2日 / 08:42 / 8ヶ月前

コラム:株高の最大リスクは米国境税、日米のつれ高遮断へ 

[東京 2日 ロイター] - トランプノミクスへの期待感で米株が上昇、日本株も2日の市場で昨年来高値を更新した。だが、2月28日の議会演説では封印した「国境税」を持ち出した場合、米国に輸出している国・地域の経済に大きな打撃となりかねない。

 3月2日、トランプノミクスへの期待感で米株が上昇、日本株も昨年来高値を更新したが、トランプ氏が「国境税」を持ち出した場合、米国に輸出している国・地域の経済に大きな打撃となりかねない。メキシコとの国境付近、カリフォルニア州で1月撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

日本からみると、日米株価のつれ高が遮断され、対米輸出比率の高い企業の株価下落に市場の注目が集まるだろう。足元の株高に対する最大のリスクは「国境税」の存在だと指摘したい。

<巧みなレトリックみせたトランプ大統領の議会演説>

トランプ米大統領の2月28日の議会演説は、過激な色彩を抑制したのが最大の特徴だったと言える。「私は自由貿易主義を強く支持します」という発言は、大統領就任後初めてではないか。「同時に公平な取引でなければならない」とも付け加えたが、世界貿易機関(WTO)ルールに違反してもいいと考えていると猜疑(さいぎ)的に見いていた人々にとって、やや意外な発言だったと思う。

ただ、「米政府が保護主義を放棄すれば、人々は困窮し、荒廃する」とのリンカーン大統領の発言を引用し、米国内の雇用回復を目指す自身の政策に間違いがないという主張を巧みなレトリックで表明。国境調整に関し、何らかの新たな対応を実施する「予兆」を感じさせた。

マーケットは「米国のインフラに官民の資金で、1兆ドルの投資を生み、数百万人の新規雇用を創出する法案をお願いしたい」という部分に着目し、米国だけでなく日本でも大幅高となった。

<国境税と国境調整、事実上の輸入課徴金>

しかし、「国境税」もしくは「国境調整」が具体的な姿を現してくると、足元の楽観的な見方が大幅に後退する可能性を指摘しておきたい。

トランプ大統領は、大統領選挙の期間中から国境税に言及。メキシコからの輸入品に35%、中国からの輸入品に45%の高関税をかけると言ってきた。

一方、共和党は法人税の引き下げと一体的に対応し、輸出品の収益を課税対象から外し、輸入品にかかるコストを控除対象から除外する仕組みを公表。事実上、輸出補助金や輸入課徴金と同じ効果が出るように設計されている。下院の共和党案では、採用される税率は20%となっている。

トランプ大統領の議会演説で、国境税や国境調整に関する具体的な提案や数字は全くなかった。

東京市場の関係者の中には「保護主義色が薄く、このまま推移すれば円安/株高が継続しそうだ」(国内金融機関)との楽観的な見方が少なくないが、果たしてどうか。

国境税は無理としても、ホワイトハウスと共和党との調整の結果、国境調整で何らかの妥協案が出てくる可能性は、かなりあるとみるべきではないか。

仮に下院共和党の20%の税率が採用された場合、日本の輸出産業だけでなく、日本経済にとってもかなりの打撃になる可能性があると予想する。

<大きな打撃予想される日本の輸出>

日本の輸出は国内総生産(GDP)ベースで約70兆円と、全体の14-15%を占める。国別のデータはないが、国別の輸出額シェアをみると、対米は輸出全体の20%。ざっと試算すれば、GDPベースで14─15兆円の対米輸出に何らかの影響が出かねないということになる。

また、個別企業でみても、大幅な輸出減少のケースが容易に想定できる。共和党の輸出調整システムが採用された場合、日本から輸出された乗用車は、販売ディーラーの段階で控除品目から除外され、20%の税率が上乗せされる。

ディーラーが税金分をそのまま販売価格に上乗せするとは限らないが、仮に半分の10%を上乗せされた場合、米国車との価格競争で劣位になり、大幅な販売減少になると予想される。それはそのまま、生産メーカーの輸出減となる。

また、20%分を販売ディーラーへの補助金として補てんすれば、日本メーカーの営業コストは激増し、連結ベースでの大幅な減益は避けられない。

国境調整が具体的に姿を見せた時、米株市場の上昇とその他の国の株式市場の連動性は断ち切られ、その他の国々の株価は下落基調に転じるだろう。

日本の場合、東南アジアや中国で生産し、米国に輸出しているケースも多く、企業の打撃は想定以上に大きくなりそうだ。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げでドル高になり、円安/株高を期待してきた一部の市場関係にとっては、国境調整の全容判明後に、大幅な日本株調整に直面しかねないと覚悟が必要だ。

また、米多国籍企業は中国やその他の新興国で生産し、製品を米国に輸入している。この輸入品にも20%の課税が行われ、価格競争力が低下する展開も予想される。

実際、米連邦準備理事会(FRB)が1日に発表した地区連銀経済報告の中で、ボストン地区のある調査先は、国境税に関し「将来的に生産設備をどこに置くかという企業判断に起きな影響を及ぼす。詳細がある程度明らかにならなければ、企業が新規投資に消極的になるだろう」とコメントしている。

国境税もしくは国境措置に関するトランプ大統領やロス商務長官、ムニューシン財務長官ら主要閣僚の発言から当面、目が離せないだろう。

何らかの具体策が判明した時に、大幅な市場価格の調整現象が派手に起きないことを祈らずにはいられない。

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