Reuters logo
コラム:シリアと北朝鮮クライシス、米政権の「危険な綱渡り」
2017年4月13日 / 03:21 / 5ヶ月前

コラム:シリアと北朝鮮クライシス、米政権の「危険な綱渡り」

 4月11日、トランプ米大統領が命じたシリアへのミサイル攻撃は、北朝鮮に対してメッセージを発信する意図を含んでいたのか──。そんな疑問があったとしても、米海軍の空母打撃群が週末に、朝鮮半島の近海に向かったことによって解消されたはずだ。写真は韓国の浦項にて、合同軍事演習に参加する米軍兵士(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)

[11日 ロイター] - トランプ米大統領が命じたシリアへのミサイル攻撃は、北朝鮮に対してメッセージを発信する意図を含んでいたのか──。そんな疑問があったとしても、米海軍の空母打撃群が週末に、朝鮮半島の近海に向かったことによって解消されたはずだ。

シリア内戦と北朝鮮の核兵器開発という、トランプ政権が直面している2つの重要な外交危機には、奇妙な対称性が見られる。どちらも、米国にとって地政学上の2大ライバルであるロシア・中国との関係に亀裂を起こし、どちらについても容易な解決策は見当たらない。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にせよ、シリアのアサド大統領にせよ、米国政府は彼らが消えることを望んでいる。北朝鮮が抱く核兵器開発の野望には地域紛争を引き起こすリスクがあり、長引くシリア内戦は中東を不安定化させ、過激派組織「イスラム国」のような武装集団の温床となっている、と米国政府は考えている。

北朝鮮については、軍事的な選択肢はどれも好ましくない。ほとんどの選択肢には、誰もが避けたいと願っている紛争勃発のリスクが伴う一方で、恐らく同国の核開発計画には影響が出ないだろう。

オバマ前政権は現地の反政府勢力に限定的な支援を行うことでアサド体制を覆そうとしたが、成功しなかった。トランプ政権内には、地上部隊による大規模な介入を公然と主張する声はない。たとえトランプ大統領がそうした作戦に対する議会承認を獲得できたとしてもだ。

トランプ政権は、せめてロシアや中国と本格的な交渉を行うことで、両国が事態の収拾に手を貸すよう説得できないかと考えている。

その一方で、米国の軍事行動が拡大すれば、核保有大国のあいだで対立が生じるリスクが増大する。6日の米シリア攻撃において重要な発言権を有していたH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)とジェームス・マティス国防長官などの政権上層部は特に、このことを理解している。

シリア攻撃の際、米軍はロシア軍関係者の犠牲を出さないことを最優先し、ロシア政府に事前通告を行い、標的となったシャイラート空軍基地に駐留していたとみられるロシア軍顧問の危険を最小限に抑えた。

今回の攻撃が、米軍事力によるアサド政権打倒という広汎な試みの幕開けになるとは考えにくい。マクマスター補佐官は、週末に行われたフォックスニュースのインタビューのなかで、攻撃の目的はこれ以上の化学兵器使用を抑止することに大きく限定されていた、と述べている。

ティラーソン米国務長官のモスクワ訪問の主目的は、アサド政権に対する立場を変えるようロシアのプーチン大統領を説得することになるだろう。だが今回の攻撃によって、トランプ大統領がプーチン大統領との関係を改善する機会は損なわれてしまった。プーチン氏はティラーソン国務長官には会わない予定だと伝えられている。

少なくとも、ロシア政府がシリアとイランに対する軍事援助を強化する可能性は高いようだ。この援助には恐らく、今後の米軍事行動を困難にするような対空兵器の供給が含まれると思われる。

地中海の米艦による巡航ミサイル発射を受けて、ロシアはこの海域の哨戒のために艦艇を1隻派遣した。中国が保有する唯一の航空母艦も、朝鮮半島沖で訓練航行中だ。この海域での米軍の軍事行動があった場合、対抗する可能性があることを示唆している。

また、今回の米軍による攻撃の後、ロシアがシリア上空での飛行制限に関する交渉から離脱したと報じられており、不慮の事件が発生するリスクが高まっている。その後「衝突予防ライン」の再設定が行われたかどうかについて、報道は分かれている。

米軍によれば、合意の現状や用いられている手法についてコメントしないが、ロシア側当局者とのコミュニケーションは維持しているという。

こうした対立が、もっと広範囲での関係悪化を招く可能性もある。

米国のシリア攻撃に対して、ロシア政府がウクライナでの武力行使の拡大や東欧の不安定化といった形で報復してくる可能性がある。北朝鮮に対する攻撃によって中国との関係が崩壊することになれば、中国政府は南シナ海でいっそう攻撃的な姿勢を強めるだろう。

あるいは、ロシアや中国とも、サイバースペースでの報復を試みる可能性があり、そうなれば誰も収拾することができない新たな種類の戦争が始まることになる。

先週末のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談は、部分的にせよ、こうした食い違いのいくつかを解消すること、少なくとも、どちらの側もそれぞれの立ち位置を理解することを意図していた。トランプ政権は、米国が侮りがたい存在であること、それでも相互協力という選択肢を維持したいと考えていることを、シリアに対する攻撃を通じて、中国政府に伝えたいと願っている。

少なくとも今のところ、米国の狙いは成功しているかもしれない。

中国の国営メディア「環球時報」は、中国人アナリストの発言として、北朝鮮の核への野心は中国側の「我慢の限度」に近づいているとの見方を報じ、中国政府が北朝鮮に対してより強硬な姿勢を取る可能性を示唆した。

ただし、米軍事行動に反対する中国政府の立場も改めて報じられており、このアナリストを含めた専門家は、そうした軍事行動が「耐えがたい結果」をもたらす可能性がある、と警告している。

米国政府は、北朝鮮やシリアの指導部に対する心理的圧力を維持する姿勢だ。米当局者によれば、アサド大統領を直接狙う「暗殺作戦」という選択肢も検討こそされたが、この段階で却下されたという。また米軍部隊は、北朝鮮の金正恩氏への直接的な攻撃も訓練しているという。

今のところは、恐らくロシアや中国からの反発もあるため、こうした選択肢は外交上のポーズに過ぎない。米国がイラクで学んだように、体制交代は、さらに多くの問題を引き起こすだけの結果になるかもしれない。だがこのことは、2003年以来、激動する国際情勢が米国政府にとってどれほど変化したかを思い起こさせる。

マクマスター補佐官はフォックスニュースとのインタビューで、トランプ政権は今週、ロシアやシリアへの対応、さらには中国との首脳会談と、驚くほどの「同時並行作業」をこなしたが、誰も「汗一つかかなかった」と語っている。だが、いずれの問題も片付いていない。今後、汗だくの日々がやってくるとしても不思議はない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below