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コラム:米シリア攻撃、「トランプ・ドクトリン」の始まりか
2017年4月10日 / 07:00 / 5ヶ月前

コラム:米シリア攻撃、「トランプ・ドクトリン」の始まりか

 4月7日、トランプ米大統領が就任してから3カ月もたたないこの時期に、同大統領がシリアへの軍事攻撃を行うと予想していた人はほとんどいなかっただろう。写真はトランプ大統領と国家安全保障チームとのミーティング風景。ホワイトハウス提供写真。フロリダ州で6日撮影(2017年 ロイター/The White House/Handout via REUTERS)

[7日 ロイター] - トランプ米大統領が就任してから3カ月もたたないこの時期に、同大統領がシリアへの軍事攻撃を行うと予想していた人はほとんどいなかっただろう。

トランプ政権は1月以降、シリア反体制派への支援をひそかに減らしており、同国のアサド大統領存続の可能性を残す形でシリア問題の終結を図ろうとしているように見えた。

米国が6日実施したシリア空軍基地へのミサイル攻撃によって、必ずしもその見方が変わったわけではない。同基地は、それより72時間前、化学兵器を使用したとみられる攻撃の拠点となったと考えられている。

だが、そのような素早い攻撃行為を通して、トランプ大統領は、シリア政府だけでなく、ロシアや中国、そしてとりわけ北朝鮮といった米国の敵となり得る国に対し、米国の決意を示す強力で断固たるメッセージを送ったと考えている。

何かしらの行動は避けられなかっただろう。オバマ前大統領がまだホワイトハウスにいたとしても、同様の措置を講じていたかもしれない。

2013年にシリアの首都ダマスカス近郊で化学兵器が使用された後、米国は軍事行動を検討していたが、それはロシアの仲介による合意で回避された。この合意により、シリアは化学兵器を放棄することとされた。シリア政府は保有するすべての化学兵器を引き渡したとして、化学兵器禁止条約に署名していた。このように実にひどい明らかな違反は罰を受けてしかるべきだった。

攻撃を命じるトランプ大統領の素早い判断は(それこそ皆を驚かせた要因であるが)、オバマ政権からの転換を明示するものだ。オバマ政権ではそのような行動を決断する際、事前にオープンに議論されることが多かった。

一夜限りの、空軍基地1カ所のみを標的にした攻撃は、2013年にシリアで化学兵器使用後に米国政府が検討していた軍事行動と比べるとはるかに限定的である。シリア空軍や他の施設に対して圧倒的な攻撃を行い、アサド大統領の失墜にまでは至らないだろうが、権力を弱体化するよう意図的に仕向けることもできただろう。

米国の行動は、ロシアを激怒させ、今回の攻撃を2003年のイラク戦争と比較させた。一方、米国は、シリア内のロシア軍に被害を与えないよう万全を期していたようだ。これは、ヒラリー・クリントン氏が大統領選に当選したら検討するとみられていた一部の計画とは劇的な違いを示している。その計画には、米ジェット機がロシアの航空機を撃墜可能な「飛行禁止区域」の設置が含まれていた。

ここで第1の疑問は、今回の攻撃が米国の対シリア政策にとって何を意味するかだ。化学兵器を使用したとみられる攻撃が起きる前、ティラーソン国務長官とマティス国防長官の2人とも、米国政府はもはやアサド大統領の退陣にこだわらないことを示唆していた。

現在でもそうであるかはまだ分からない。トランプ政権がオバマ政権が進めてきたアプローチに戻り、シリア反体制派を支援することで、同国の支配層をできる限り弱体化しようとする可能性は残されている。

しかし差し当たり、そうしたことは比較的ありそうもないようだ。トランプ政権は、シリアでの主な優先事項は今後も過激派組織「イスラム国」掃討であり、同組織が事実上、首都とする北部ラッカに迫ろうとしている。

最も重要なのは、米国がアサド大統領の退陣を望んだとしても、そのための確かな方法がないことだ。軍隊を大量に派遣して介入する気もない。トランプ大統領は、イラクとリビアにおける教訓として、地域の絶対的指導者を排除することは往々にして悪い考えだということを繰り返し強調している。

少なくとも当面は、今回の攻撃は限定的な処罰であり、米国が支援する中東地域の新たな体制変革の始まりではなさそうだ。

とはいえ、予期せぬ影響が広範囲に及ぶ可能性はある。

今回の攻撃に隠された2番目に重要なメッセージは恐らく、北朝鮮、そしてその主な支援者である中国に向けてのものだろう。トランプ政権は、軍事力の脅威によって、北朝鮮の指導者である金正恩朝鮮労働党委員長が核とミサイル開発を遅らせるよう、あるいはやめるよう説得されることを望んでいる。これもまた実現しそうにないように見えるが、6日の攻撃は米国からの脅威に対する信ぴょう性を高めている。

イランも今回の米攻撃を注視している。同国は米国の軍事的脅威と制裁に直面し、核合意の下で自国の核開発を制限している。トランプ大統領は、前政権下で結ばれた同合意について、生ぬるく、再交渉したい考えを示している。

しかしながら、地政学的に最も重要な持続的影響は、米ロ関係かもしれない。

ロシアが化学兵器使用について事前に知っていたかどうかは不明だが、米国が行動を起こして以来、ロシアが腹立たしく思っていることは間違いないだろう。米国のシリア攻撃は、ロシアが米大統領選でトランプ氏を当選させるよう介入したとの疑惑があるにもかかわらず、あるいは、恐らくそうした疑惑の結果も鑑みて多くが予想している通り、トランプ政権がより強硬な態度を取るかもしれないという、明らかなメッセージを発している。

これはまた、米政権内部の変化を示すサインかもしれない。

バノン首席戦略官兼上級顧問が5日、米国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外された。バノン氏失脚の兆候は、辞任に追い込まれたフリン氏の後任であるマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の権限強化にすでに表れていた。

6日の攻撃は今のところ、トランプ外交政策の「マクマスター化」を最もはっきりと示す兆候と言えるかもしれない。つまりそれは、比較的明白でシンプルな目標とともに、明確に定義された、限定的だが断固たる行動、ということである。

一方、最悪な場合、今回の攻撃がトランプ大統領の「考える前に行動する」という衝動的な行動の予兆との批判が的を得てしまう可能性もある。

どちらにせよ、外交政策において他国介入の際に「トランプ・ドクトリン」なるものがあるとすれば、6日のミサイル攻撃は十中八九、その始まりと見ていいだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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