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コラム:トランプ新政権は史上最大の「リアリティー番組」
2017年1月24日 / 06:21 / 8ヶ月前

コラム:トランプ新政権は史上最大の「リアリティー番組」

 1月20日、トランプ新政権が、米国史上で最も型破りで奇妙な政権の1つになるとしても不思議ではない。写真は米ワシントンで就任宣誓を行うドナルド・トランプ新大統領(2017年 ロイター/Jim Bourg)

トランプ新政権が、米国史上で最も型破りで奇妙な政権の1つになるとしても不思議ではない。ドナルド・トランプ大統領と彼の前任者バラク・オバマ氏のあいだには、気質、世界観、また政治手法において、これ以上考えられないほどの違いがある。

新政権に期待できるのは、せいぜい、待ち望まれていた新鮮な風を吹き込むことくらいか。しかしそれは同時に、深刻な、危険と言ってもいいほどの混乱を生む結果になるかもしれない。

とはいえ、ここ2カ月のあいだに、新政権についてどのようなことが予想できるか、さまざまな手掛りが集まってきた。

トランプ氏の優先課題を恐らく最も正確に伝えているのは、1月11日に行われた同氏の記者会見、そして当選後に行われた何回かのインタビューだろう。しかし、次期大統領が外部の世界とのコミュニケーション手段として使っていたのは、もっぱらソーシャルメディアだった。

残念ながら、彼の発言は、トランプ氏を批判する人々が彼に対して抱いているネガティブな印象全般を裏付けるばかりだった。

今や世界で最も大きな権力を持つ人物は、危険なまでに怒りっぽく、大衆文化における自分の名声と、他の人物との相対的な優劣に異常なほど関心を注いでいるように見える。

1月に入ってトランプ氏は、テレビ番組「アプレンティス」の新シリーズにおけるアーノルド・シュワルツェネッガー氏の人気がかつての自分に及ばないことを揶揄するツイートを2件投稿している。

もっとも、ツイッターを使うトランプ氏の習慣が劇的な効果をもたらす可能性もある。これまででも、大企業に対する批判、特に海外移転が雇用を奪うとトランプ氏が攻撃したメーカーへの批判は、大きな効果を発揮してきた。

フォード、ゼネラル・モータース、トヨタは、いずれもメキシコなどへの工場移転計画に対してトランプ氏の攻撃を浴びる側に回り、計画の一部はすでに公式に撤回された。自動車業界の幹部の1人は「ガーディアン」紙に対し、今やどの企業も、トランプ氏のソーシャルメディアでの投稿の槍玉に挙げられることを恐れていると語っている。

防衛分野においては、トランプ氏は、新型「エアフォース・ワン(大統領専用機)」のコスト超過、そしてF35戦闘機の悪名高いトラブル多発と予算超過について、ボーイングとロッキード・マーチンをやり玉に挙げた。いずれにおいても、トランプ氏は納入価格の引き下げを勝ち取る可能性が高い。

もちろん、政治や国際関係の分野でこうした戦術が功を奏するかどうかは不透明だ。

トランプ氏は同じように無遠慮なアプローチを用いて中国に対する態度の硬化を示そうとしており、特に台湾問題をめぐって、すでに中国政府を立腹させている。

北朝鮮に関しては、核ミサイル実験は「起こらない」と述べて危険な一線を越えたように見える。これがどのような意味を持つかはまったく不明である。シリア情勢をめぐってオバマ政権でも見られたように、曖昧なメッセージを発信すると、思わぬ面倒を招く可能性がある。

ロシアについては、トランプ氏は、恐らく米ロ両国にとって支出削減となる核兵器関連の協定をまとめるといった、何らかの「重要な取引」を実現することを真剣に願っている。だが国内の政治的プレッシャーを考えれば、プーチン大統領を相手にトランプ氏が本当に何か合意に達することができるかどうかはだいぶ怪しくなっている。

広く欧州全体に目を向ければ、複数の国々が防衛支出を増額しており、たとえ実際にはそれが規定の流れであったとしても、トランプ氏としては少なくともある程度の成功を主張することができる。トランプ氏は個人的にブレグジットを熱烈に支持しており、当選後には複数の強硬なブレグジット支持者と会談することを忘れておらず、英国にとっては貴重な援軍になるかもしれない。一方、ドイツのメルケル首相との関係がスムーズなものになるとは考えにくい。

就任後、トランプ氏は政府の実務にどっぷりと漬かることになるだろう。トランプ・タワーに引きこもった2カ月間、彼が本当に心を砕いていたのは、政権運営のためのシステムと構造の構築だったかもしれない。しかしこの面でも、トランプ氏は前任者たちによる実践とは非常に異なる道へと米国を導こうとしているように見える。

すでに明らかになっているが、トランプ氏の政権は、ケネディ政権以来、いや当時でさえ見られなかったほど、大統領自身の親族ネットワークを軸にすることになるだろう。その中心人物となるのは、恐らくトランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏だ。想像せずにはいられないのは、トランプ一家が、真の政治王朝の構築に向けて娘のイバンカさんの登用を少なくとも漠然とは考えただろうということだ。

またトランプ氏の周囲には、多くは彼自身と同じくらい型破りなイデオロギーの持ち主が集まることになるだろう。彼ら自身でさえその可能性にまったく思い至らなかったような形でトランプ氏が発言の場を与えた人々だ。

右翼ニュースサイト「ブライトバート」の前代表であるスティーブ・バノン氏のような人物が、かつて例のないほど大統領の戦略に影響を与え、大統領に親しく接する機会を手にしている。トランプ氏が彼らに対する厚遇を続ける限り、彼らの忠誠心も確保される可能性が高い。共和党の連邦議員や、そもそもトランプ氏の候補指名を望まなかった人々よりも、はるかにトランプ氏への忠誠心は確実なのである。

トランプ政権の閣僚に指名された人々は非常に裕福であり、一部の試算によれば、その資産総額は、それ以外の米国民全体の3分の1の合計資産に匹敵するとされる。

国務長官に就任するレックス・ティラーソン氏は、エクソンモービルCEOとしてビジネスで培った識見を、今や、国全体の利益になる取引を勝ち取るために使うという任務を与えられている。

「アプレンティス」の名物司会者であったトランプ氏は、閣僚らがその任務に成功しなければ、そのうち何人かに「お前はクビだ」と宣告することを明らかにしている。

「狂犬」の異名を持つ国防長官に就任予定のジェームズ・マティス氏については、恐らくそうなる可能性は低い。人望の厚い海兵隊出身のマティス氏は、上院での承認公聴会において、さまざまな問題、特にロシアに関して、トランプ氏の見解に否定的な姿勢を示した。彼の存在によって、国家安全保障面でのトランプ政権の正統性は大幅に高まっている。もし彼が政権を離れるようなことがあれば、そのダメージは相当なものだろう。

閣僚就任予定者たちの任務は容易ではない。トランプ氏があまり支持を与えない可能性もあるから、なおさらである。ティラーソン氏の承認公聴会において予想外だった瞬間の1つは、同氏が対ロシア政策についてまだトランプ氏と詳細な協議を行っていないと認めたときだった。

著名人たちにボイコットされようとも、就任式典はトランプ氏自身が予言するように「素晴らしいショー」になる。米国、そして世界の多くの人々にとって、トランプ大統領の就任はローマ帝国の衰退と滅亡を思い起こさせるかもしれない。だがそれは同時に、史上最大の、そして地政学的に最も重要な、テレビのリアリティー番組とも言えるだろう。

「米国を再び偉大に」するかどうかはともかく、それを見ずには済まされなくなることは確実である。

(20日 ロイター)

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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