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コラム:米株高騰を招いたトランプ相場の「落とし穴」
2017年4月6日 / 02:29 / 6ヶ月前

コラム:米株高騰を招いたトランプ相場の「落とし穴」

[3日 ロイター] - 米リフレ政策期待を背景とするいわゆる「トランプ相場」による株式市場の高騰は、2つの相互に関連する問題をはらんでいる。つまりそれは、トランプ大統領とバリュエーションだ。

 4月3日、米リフレ政策期待を背景とするいわゆる「トランプ相場」による株式市場の高騰は、2つの相互に関連する問題をはらんでいる。写真はトランプ米大統領の帽子をかぶるトレーダー。NY証券取引所で3月撮影(2017年 ロイター/Lucas Jackson)

トランプ政権が医療保険制度改革(オバマケア)代替法案を撤回したことで、減税、インフラ投資、規制緩和といった面でも同様の失敗が繰り返されるリスクが明確になった。株式市場のバリュエーションが歴史的に見て高水準にあり、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ局面に入っている今日、こうしたリスクは大きな脆弱(ぜいじゃく)性の原因となっている。

大統領選挙後に見られたリスク資産の価格上昇を支える中心的な論理は、共和党がホワイトハウスと議会の双方を握ったからには、経済成長を加速するだけでなく、経済成長が企業の収益改善につながりやすくするような政策を強行するだろう、という考え方だった。

そのような動きが生じるのはこれからかもしれないが、S&P500銘柄に関して、株価売上高倍率が史上最高、過去10年間の収益で計算した株価収益率も、「ドットコム・バブル」の崩壊後には見られなかった高水準にあることを思えば、誤解の余地はほとんどない。

ヤルデニ・リサーチの市場ストラテジスト、エド・ヤルデニ氏は、「いずれも目がくらむほど高い水準だ。しかし、トランプ氏が規制緩和を進め、減税の実施に成功すれば、この水準も正当化されるかもしれない。彼の政策がGDP(国内総生産)成長率とS&P500社の売上高を押し上げるうえでどれだけ役に立つかは分からない。とはいえ、企業収益の追い風になるのは確かだ」と書いている。

「ただし、トランプ氏の勝利により、ファンダメンタルズやバリュエーションに関する合理的な評価とは何の関係もない、溶解システムを作動させたというリスクはある」

確かに、消費者信頼感指数や中小企業景況感指数などは上昇しているが、これらセンチメントに基づく経済指標と、実際に動いた金額を記録するよりハードな指標とのあいだには、顕著な乖離(かいり)が現れている。アトランタ地区連銀が発表する予測「GDPナウ」では、第1・四半期の米国の経済成長率は1.2%にすぎない。

もちろん、センチメントが独自の現実を生み出すことはある。だが、アナリストが予測する企業収益改善のペースは、選挙前よりも減速している。選挙前には、法人税減税も、海外利益の国内還流に対する減税措置も、甘い期待程度のものでしかなかったにもかかわらず、である。

政策による刺激によって促される前に、米国企業社会において投資、雇用、成長という好循環が突然始まると期待するのは、ばかげている。そのような政策変更が現在の政権運営のもとで行なわれると期待するのもリスクが大きい。実際にそうした政策変更が実現したとしても、その政策がうまくいくと見るのは憶測にすぎない。

<バリュエーションと将来利回り>

また、FRBの政策担当者のなかに、バリュエーションの高水準を指摘する声が増えつつあるという事実がある。これは恐らく、少なくとも今回は、彼らが金利設定の調整において、そうしたバリュエーションの高さを実際に織り込み始めている可能性を示唆している。

ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は先週、FRBが引き締めのペースを加速すべき理由として「高水準の資産市場価格」を挙げ、一部の資産市場が「少し高めに」なっていると述べた。またサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁も、特に株式市場は「少しバブル気味かもしれない」と指摘している。

ローゼングレン総裁同様、ウィリアムズ総裁は、FRBで金利決定を担当する連邦公開市場委員会において今年は投票権を持っていないが、財政政策への期待という点で市場は「少し現実よりも先走っている感がある」とも述べている。

市場の動きが実体経済に裏付けられ、財政・経済政策によって上げ相場がさらに拡大する可能性はあるが、他方で、市場の過熱を防ぐ意味も込めてFRBが金融引き締めを予想よりも加速させる可能性もある。

状況がどのように推移しようと、1つの事実は残る。過去の実績からして、将来の利回りが期待できないレベルまで、現在のバリュエーションが上昇してしまっているということだ。

いくつかの指標からすると、バリュエーションの中央値は世界的に過去最高の水準にあり、将来の利回りが、債券投資をわずかに上回る程度になることを示唆している。

ソシエテジェネラルのロンドン法人でクオンツストラテジストを務めるアンドリュー・ラプソーン氏は、「高いバリュエーションは将来の利回りを予想するうえで非常に参考になることが分かっている」と書いている。

「たとえば利回り2.0%以下(つまり配当よりも小さい)の債券よりも総利回りが大きければ、リスクがはるかに大きくても株式を保有する見返りとして十分だと考えるのであれば、今日のバリュエーションでもかまわないということになるだろう。株式投資にはリスクプレミアムが伴うべきだと考えるのであれば、今日の水準には問題がある」

現在の株式市場の投資家は、そろって現在のバリュエーションを容認する方向に賭けているが、トランプ政権が公約している、あるいは示唆している各種の計画の相当部分を実現しない限り、これが成功するとは考えにくい。

だが、米国において包括的な税制改革が最後に実施されたのは、1986年のレーガン政権時代である。時代も今とは大違いだし、共和党も現在とは大きく異なり、もっと一枚岩だった。それを考えると、これはリスクの高い賭けである。

税制改革が断片的で、海外利益の国内還流に対する減税措置のように手っ取り早く成果を挙げることを意図したものになるとしよう。減税分の大半は、自社株の買い戻しを通じて株式市場に還元されるだろう。

経済成長とインフレを20世紀の標準的な水準に押し戻すようなリフレーションが生じる可能性は、それよりもはるかに低い。株価は、最終的には確実に、この事実を反映するはずである。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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