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コラム:トランプ・タントラム、FRBは新興国の混乱放置か
2016年11月20日 / 00:07 / 1年後

コラム:トランプ・タントラム、FRBは新興国の混乱放置か

[17日 ロイター] - 新興国市場がかんしゃくを起こしたのは、米連邦準備理事会(FRB)が予定していた量的緩和の縮小(テーパリング)の延期を余儀なくされた時以来だ。

 11月17日、今回の「トランプ・タントラム(トランプ氏勝利に対するかんしゃく玉破裂の意)」は、2013年の「テーパー・タントラム」に似ている。写真は、トランプ氏が表紙の雑誌。NY市で9日撮影(2016年 ロイター/Shannon Stapleton)

世界は今、以前ほど優しく、寛大な場所ではなくなっている。「トランプ大統領」誕生で保護貿易主義の懸念とインフレ期待が高まっていることに対し、新興国市場が自らベッドから飛び起きたことを考えると、今後も助けがやって来ることは恐らくないのだろう。

米大統領選におけるトランプ氏勝利という衝撃を受け、MSCI新興国株価指数.MSCIEFは6%下落。新興国の為替市場も同様で、新興国債券市場は4%下げている。

今回の「トランプ・タントラム(トランプ氏勝利に対するかんしゃく玉破裂の意)」は、2013年の「テーパー・タントラム」に似ている。当時のFRBによる国債買い入れ縮小観測を受け、経常赤字を抱える新興国市場で急落を招いた。

だが、今回は非常に異なった結果となる可能性がある。

筆者の子どもたちがまだ赤ちゃんだったころ、夜泣きへの対処法で「ファーバー式」という賛否両論の方法があった。ファーバー博士が提唱したこの方法は、赤ちゃんを「泣かせっぱなし」にして、他者の力を借りずに落ち着く能力を身に付けさせるというものだ。

これが残酷なのか、それとも優しいのかは何とも言えないが、新興国市場の財務相たちは、安心するための毛布を手にしたいのかもしれない。イエレン母さんとフィッシャー父さんがこの先、優しい環境を作ってくれることはほぼなさそうだからだ。

「新興国市場への支えが急に消え、トランプ大統領と米国債利回り上昇は、投資家が抱える新興国市場というテーマの再評価を迫ることになる」と、ガイ・ステア氏率いるソシエテ・ジェネラルのアナリストらは顧客向けメモにこう記した。

トランプ大統領が新興国市場にとってひどいニュースである主だった、また互いに関連する理由は2つある。インフレと保護貿易主義だ。

トランプ氏はこれまで、相当な規模の減税と共にインフラ投資という景気刺激策を行うと強調しているが、そうなれば向こう8年間で、米国の財政赤字が膨れ上がる見通しだ。長期金利は急上昇し、5年債利回りも上昇した。

アトランタ地区連銀の賃金伸び率トラッカーは3.9%に上昇し、FRBのインフレ目標の2倍に達した。これは、2008年の金融危機以降で最高水準である。

FRBは12月の利上げのみならず、来年は数回の利上げを余儀なくされるかもしれない。

<悪影響>

米利上げとドル上昇は、新興国市場に悪影響を及ぼす。資本の呼び込みや、世界の工場としての役割に必要な資金を調達するためのコストが上昇し、自国通貨建ての輸出価格の下落を招くからだ。

新興国市場が、30年に及ぶ米債券市場の強気相場から恩恵を得ていたことも忘れてはならない。

「懸念すべきは、もし投資家が債券利回りの長期的な低下傾向が終わったという見方にシフトしているなら、その影響は計り知れないほど厳しいものになり得るということだ」とステア氏は指摘する。

「長引く低金利と中央銀行の非伝統的な金融政策が、間違った資本配分につながったことは明らかだ。新興国市場における投資利益率の低さ、または低下は、先進国市場の利回り上昇が、新興国の為替市場にはつらい状況となることを再び証明することになりそうだ」

もう1つの問題は、トランプ氏の主要政策に含まれる保護貿易主義だが、もし厳しく実行されるようなら、世界の成長はひどい打撃を受けることになる。新興国市場の場合はなおさらだ。

「米国経済への衝撃を最小限に抑えるため、税制改革が保護貿易主義政策を補うことになると思う」と、ヘッジファンド、ユーライゾンSLJキャピタルのスティーブン ・ジェン氏は投資家向けに書いている。

「もちろん、トランプ氏がいつ、どのようにこうした政策を実行するかについては大いに不確実性が漂うが、実行の有無については、私はほとんど疑っていない。それ故、アジア通貨でショートポジションを維持することは、私には理にかなっているように思える」

2013年の「テーパー・タントラム」は新興国市場に大きな打撃を与えたが、その主な原因は当時のバーナンキFRB議長が9月に国債買い入れを縮小する見込みを明らかにしてから3日後に米株が4%超も下げたことだった。FRBは結局12月まで縮小を延期した。周知の通り、それ以来、予期していたほど早期に利上げはできていない。

今回もまた新興国市場にとって悪いニュースではあるが、ダウ平均株価.DJIは米大統領選後、連日のように最高値を更新し、トランプ氏を好感しているようだ。そうした動きが一変しなければ、またたとえそうなったとしても、FRBが新興国市場に心を砕く余裕も理由も、以前ほどない、というのが現状である。

米国の長期国債利回りUS10YT=RRが上昇し続けるなら、新興国市場の投資家も泣き疲れて眠ることをきっと学ぶに違いない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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