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コラム:大統領選の両候補は核問題をどう語ったか
2016年9月28日 / 08:56 / 1年前

コラム:大統領選の両候補は核問題をどう語ったか

[27日 ロイター] - 今年の米大統領選の特徴として、核政策について掘り下げた議論が比較的乏しかったことが挙げられるが、それは26日夜のテレビ討論会で少しだけ変わったように思える。

 9月27日、今年の米大統領選の特徴として、核政策について掘り下げた議論が比較的乏しかったことが挙げられるが、それは26日夜のテレビ討論会で少しだけ変わったように思える。写真は共和党のトランプ候補と民主党のクリントン候補。NY州で26日撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst)

民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補が初めて直接論戦を交わすこととなったこの討論会の最後のテーマ「アメリカを守る」では、かなりの時間が核の脅威に費やされた。主に候補者自身によって進められた議論は現実的な内容だった。

両候補とも、実際に存在する核兵器の脅威に今後も取り組むべき政治的理由を抱えており、今回の討論は、残る2回の討論会でこのテーマを掘り下げていくために、まさに必要とされていた出発点となり得る。

核に関する議論は、サイバーセキュリティー問題から発展。同問題についての議論は次第に、過激派組織「イスラム国」との戦いにおける最善策についての議論へと変わっていった。クリントン候補は、米国民をテロから守るには、同盟国の協力を必要とする「諜報活動の増強」が必要だと提言した。

「テロと真剣に向き合うべく、世界史上、最も歴史ある軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)と協力している。人口の大半がイスラム教徒である国が多くを占める中東諸国とも協力している」とクリントン候補は説明。「イスラム諸国や国内のイスラム社会との協力を必要としているときに、ドナルドはいつも彼らを侮辱する」

これに対し、トランプ候補は「長い間、彼らと協力してきた。そしてこれまで誰も見たことがないほどの大混乱に直面している」と反論。「中東を見るがいい。大部分があなたの指示の下で、完全に混乱状態に陥った。イランと核合意を始めたこともお見事だった。制裁で窒息死しそうだった国が息を吹き返し、遠からず主要国となるかもしれないのだから」

こうしたやり取りは興味深い話題へとそれていく。そのなかでトランプ候補は、国際テロとの戦いにおいてNATOを鼓舞した功績を自分のものにしようとし、広く報道されている証拠とは裏腹に、2003年のイラク戦争には反対だったと繰り返し主張した。

討論会の司会を務めたNBCのレスター・ホルト氏に証拠を持ち出され、イラク戦争に関するトランプ氏の意見はクリントン氏のそれとどう違うのかと聞かれると、トランプ氏は次のように答えた。

「クリントン氏よりも、かなり優れた判断力を持っている。それについては疑問の余地がない。気性も彼女よりずいぶんましだ」

討論会を見ていた観客からは笑い声が起きた。

おかしなことだが、ここからまた重要な核政策の問題に議論は戻っていく。クリントン候補は、NATOやテロに関するトランプ候補の主張に食ってかかり、イランの核プログラムを制限することになる合意に向けた協議の初期段階における自身の役割をアピール。そして、好戦的な発言をしやすいトランプ候補の傾向を批判した。

「彼(トランプ氏)は、日本や韓国、あるいはサウジアラビアでさえ核兵器を保有するようになっても構わないと繰り返し述べている」と、クリントン候補は指摘。「核兵器の拡散を縮小すべく、可能な限りあらゆる手段を講じることは、民主党も共和党も支持する米国の方針であるのに、彼は『東アジアで核戦争が勃発しても結構だ』とすら言っている」とクリントン候補が発言すると、トランプ候補は「間違っている」と口を挟んだ。

しかしクリントン候補はそのまま話を続け、「実際、核兵器に対する彼の尊大な態度は非常に深刻な問題だ。世界でわれわれが直面する最大の脅威である。特に、テロリストがいかなる核物質をも手に入れた場合にそれは脅威となる」と語った。

これに対し、トランプ候補は、米国の同盟国が防衛にかかるコストを正当に負担すべきだと言っているだけだと猛烈に反論。トランプ候補はまた、核問題においてクリントン候補が抱く懸念を次のように繰り返した。

「同意できることが1つある。世界にとって最大の問題は、あなたやあなたの大統領が考えているような地球温暖化ではなく、核武装、核兵器だということだ。核は最大かつ唯一無二の脅威だ」

討論会の最後に政策に関するなかで触れられた、核兵器はいつ使用可能かという問題は複雑であり、どちらの候補も真正面から取り上げようとはしなかった。現行の政策では、ある一定の切迫した状況下における核の先制使用は可能だが、オバマ大統領は核の先制不使用政策を検討しているとの報道がある。(ただし最近では、オバマ大統領はそのような政策変更に傾いていないとする報道も見られる)

トランプ候補は司会者のホルト氏から核先制不使用について見解を求められると、ロシアは米国よりも「格段に新しい能力」を備えた核戦力を拡大していたと説明。「そうしたことを終わらせて一掃したいし、先制使用はもちろんしない」とする一方、「同時に、備えていなければならない。あらゆることを排除しない」と曖昧な発言を行った。

一方、クリントン候補は、米国は他国との相互防衛条約を尊重すべきだとし、核の先制使用に関する質問を完全に回避。ここでもイラン核合意を擁護した。

26日の討論会における両候補の主張は正しいものだった。核兵器は、米国と世界中の一般市民が直面する最も喫緊の脅威である。米国とロシアの核弾頭数は何千発にも上り、その多くはミサイルに搭載され、脅威の度合いは高まったままだ。核弾頭1発だけで、都市1つを壊滅するのに十分な威力を持つ。これら核兵器のごく一部を使用しただけでも、世界中で氷河期が訪れるとされるいわゆる「核の冬」がもたらされることによって文明が終わる可能性がある。

米国はどれくらい核兵器を保有すべきなのだろうか。それらは即時の警戒態勢に置かれたままであるべきなのだろうか。米国は30年で推定1兆ドル(約100兆円)を費やし、爆撃機やさまざまな種類のミサイルや3元戦略核戦力の弾頭を近代化すべきなのだろうか。

議論は恐らくまだ尽きないだろう。クリントン陣営は、核兵器を支配するには信頼できない人物にトランプ候補を仕立てたいはずだ。一方のトランプ候補は、核戦争の危険を認識しており、それを阻止する役割を果たせることを示したいだろう。

残された討論会2回の司会者が、人類存続における最大の脅威について有益な議論を仕掛けることに関心があるなら、両候補ともそうした議論に積極的に関わり、米国民のみならず世界中の視聴者も自身の存続に関わる同義論に大いに関心を寄せていることを目の当たりにするだろう。

*筆者は科学誌「ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスツ(BAS)」の編集長。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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