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コラム:米大統領を狙うコミー氏の「スモーキング・ガン」
2017年6月11日 / 00:41 / 4ヶ月前

コラム:米大統領を狙うコミー氏の「スモーキング・ガン」

[8日 ロイター] - 「スモーキング・ガン」(決定的な証拠)というのは、極めて異例だ。考えてみてほしい。銃が発砲すれば、銃口からは煙が立ち上り、米連邦捜査局(FBI)はその形跡をたどることができる。

 6月8日、トランプ大統領から1カ月前に解任されたコミー前FBI長官(写真)は、上院情報委員会の公聴会で証言し、「スモーキング・ガン」(決定的な証拠)を放った。ワシントンで撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

だが、トランプ大統領から1カ月前に解任されたコミー前FBI長官は8日、上院情報委員会の公聴会で証言し、その1つを放った。それはトランプ政権の政治的運命を傷つけるばかりか、致命傷にもなり得る。

ニクソン大統領の辞任を運命づけた有名な「スモーキング・ガン」は1972年6月、ホワイトハウスの大統領執務室で録音された。ホワイトハウスの工作員がウォーターゲート・ホテルの民主党全国委員会本部に侵入し逮捕されてから1週間後のことだった。

ニクソン氏は「ウォーターゲート事件」の捜査を中止するようFBIに求めた。米連邦最高裁判所はテープ提出を支持する判断を下し、同テープが司法妨害の明らかな証拠となった。それから3日後の1974年8月、ニクソン大統領は辞任した。

このテープはニクソン氏の有名な「私はペテン師ではない」という断固たる主張がうそだと証明した。ニクソン氏はペテン師だったのだ。

コミー前長官の証言から、FBIが再びロシア疑惑の捜査にあたっており、犯罪現場の1つがペンシルベニア通り1600番地(ホワイトハウスの住所)であることが明らかとなった。

捜査対象の1人は、米国史上最も在任期間が短かった国家安全保障担当の大統領補佐官だったマイケル・フリン氏だ。トランプ大統領自身も、ロシアを巡る捜査においてコミー氏を解任したと公に認めれば、捜査対象となる可能性がある。そうなれば、トランプ氏は自らコミー氏に「スモーキング・ガン」を渡してしまったことになる。

コミー氏は証言のなかで、司法妨害のケースとなり得る要点を示した。これらは、2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を捜査するため任命された元FBI長官のモラー特別検察官によって吟味されるだろう。

明らかにされた事実は、単刀直入だが、それでも衝撃的だった。モラー氏と捜査チームは、コミー氏とトランプ大統領の会話を詳細に記録したメモを手に入れたことになる。FBI長官だったコミー氏はなぜメモを取ろうと感じたのか。

「実際のところ、彼(トランプ氏)が私たちの会話についてうそをつくかもしれないことを、私は懸念していた」とコミー氏は発言。「したがって、記録に残すことが本当に重要だと思った」と述べている。

コミー証言から明らかになったのは、フリン氏が2月13日に辞任に追い込まれるはるか以前から、ロシア当局者との接触についてFBIから聴取を受けた際にうそをついた容疑で、刑事捜査の対象にされていたということだ。そしてフリン氏が辞任した翌日、ホワイトハウスでトランプ氏は、2人きりになったコミー氏に対し、捜査をやめて「フリン氏を放っておけ」と伝えたことだ。

「フリン氏は当時、有罪になる危険性が大きかったのか」と、上院情報委員会のリチャード・バー議員(共和党、ノースカロライナ州)はコミー氏に尋ねた。「大統領は司法妨害をしようとしていたと感じるか」と。

これに対しコミー氏は、「ロシアとのつながりに関連した彼(フリン氏)の供述に関しては、FBIが開かれた刑事捜査を行っていた」と回答。「私が大統領と交わした会話が司法妨害にあたるのかどうかについて私が語るべきとは思わない。ただ非常に憂慮すべきことだと、とても懸念すべきことだと思ったが、会話での大統領の意図を理解し、それが犯罪にあたるのかどうかについては、特別検察官が取り組んでくれると、私は確信するに至った」とコミー氏は語った。

捜査から何らかの容疑が浮上する場合、これは訴因の1つになる可能性がある。

2つ目の訴因は「私は大統領の言葉を文字通り受け止めている。その言葉とは、私が解任されたのはロシアを巡る捜査が理由だというものだ」とするコミー氏の証言だ。「私のやり方の何かが、大統領に圧力を与え、そこから解放されたいという思いにさせたのだろう」

トランプ氏が「でっち上げ」と常に呼ぶ捜査を阻止する意図をもってコミー氏を解任したのであれば、それは司法妨害と解釈され得る。

「合衆国大統領があなたに捜査をやめるよう求めた。同僚たちの反応はどうだったか」と、ダイアン・ファインスタイン議員(民主党、カリフォルニア州)に聞かれると、コミー氏は「私と同様、彼らもショックを受け、不安に感じたと思う」と答えた。

だが最も憂慮すべきことは、コミー氏が初めて、大統領の行いがFBI捜査の「領域」に入るかもしれないと述べたことだろう。つまりそれは、モラー特別検察官とFBIが、トランプ大統領を刑事事件の捜査対象として見る可能性を意味している。法律は、FBIによる捜査を不正に妨害し、影響力を及ぼし、あるいは遅らせることを犯罪としている。

ここで、ウォーターゲート事件から得られるかもしれない教訓に戻ろう。司法省が現職の大統領を訴追することはほぼ不可能だ。だがニクソン大統領が辞任する2カ月前の1974年6月、同事件を担当する連邦大陪審が同大統領のことを「未起訴の共謀共同正犯」と呼んだとのニュースが流れた。同事件の被告には、ニクソン政権で司法長官を務めたジョン・ミッチェルや、H・R・ハルデマンやジョン・アーリックマンらホワイトハウスの側近が含まれ、3人とも実刑判決を言い渡された。

当時、下院司法委員会は大統領に対する弾劾条項を重視していた。容疑のなかには、大統領就任宣誓に違反する権力の乱用だと同委員会が定義する司法妨害が含まれていた。宣誓は、国家の法律が断固として守られるよう注意すべく行われるものだ。

共和党が支配する議会がトランプ大統領の弾劾手続きを行うと期待するのは、不可能と言っていいほど困難だ。弾劾は司法手続きのようだが、根本的には政治的なものだ。何であろうと、議会が弾劾すべき犯罪だと言えばそれはそうなる。

とはいえ、そのような判断は、最終的には米国民の手に委ねられている。国民が大統領はペテン師だと考えるなら、2018年の中間選挙で民主党に投票し、下院と上院における共和党支配をひっくり返せばいい。それが実現した場合、2019年1月の新しい議会で真っ先にやるべき仕事は、もしかしたら弾劾の審理かもしれない。

しかし当面のあいだはモラー特別検察官が、21世紀の米国史上最大の事件にひそかに取り組むことになるだろう。

*筆者はピュリツァー賞を受賞した著述家。著書に “Legacy of Ashes: The History of the CIA”(「CIA秘録─その誕生から今日まで」)など。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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