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コラム:ジカ熱はエボラに匹敵する脅威か
2016年2月2日 / 00:00 / 2年前

コラム:ジカ熱はエボラに匹敵する脅威か

 1月28日、小頭症との関連が指摘される「ジカ熱」感染がアメリカ大陸で拡大しており、エボラの流行に匹敵するほどの規模と複雑さを秘めた感染危機に直面しているように思える。写真は小頭症の赤ちゃんのX線写真をみる神経科医。ブラジルのレシフェで26日撮影(2016年 ロイター/Ueslei Marcelino)

[28日 ロイター] - ニューヨーク大学メディカルセンターの産婦人科医であるタラネ・シラジアン医師の患者には、過去数カ月に中南米やカリブ諸国に渡航した妊婦がいる。

先天的に頭部が小さい「小頭症」との関連が指摘されている「ジカ熱」感染が明らかに拡大しており、生まれてくる子供が影響を受けているかもしれないと彼女たちは恐れているという。

──関連記事:小頭症の赤ちゃん急増、ブラジル襲うジカ熱の脅威

シラジアン医師は彼女たちが直面するかもしれないリスクについて伝えたいが、情報を得るのに苦労している。そもそもデータが手に入らない。

だが明らかなのは、アメリカ大陸が、2014年に西アフリカで発生したエボラ出血熱の流行に匹敵するほどの規模と複雑さを秘めた感染危機に直面しているように思えることだ。

中南米諸国では、この数カ月の間に小頭症の赤ちゃんが数千人規模で誕生し、蚊に媒介されるジカウイルスとの関連が指摘されている。世界保健機関(WHO)は、同ウイルスが米国も含めてアメリカ大陸全域に広がる可能性を警告している。

2014年のエボラ出血熱と同様、ジカ熱の流行も、過去には限定的だったものが感染地域を拡大するなど大きな変化を遂げている。ジカウイルスが初めて確認されたのは1947年だが、ヒトへの大規模な感染が見られるようになったのは2007年以降にすぎない。その数は昨年、急増した。それ故、すでに余裕のない各国の医療制度や科学的知識が実態に追い付けないでいる。

とはいえ、エボラとの違いもまた明らかだ。そのことが国や個人または家族にとって、対処するのを一段と難しくさせるかもしれない。

ジカの症状はたいてい、エボラよりずっと軽くて済む。軽度の発熱や発疹が出るくらいで、感染者の最大8割が何も外的症状を起こさない。その点では、エボラとは比べものにならない。

エボラは2014年、シエラレオネ、リベリア、ギニアなどで1万1000人以上の命を奪ったとされる。症状も非常に恐ろしく、大量の出血を伴い、ウイルスを含む血や汗によって他者に感染する。

エボラのような感染症の流行を断ち切る方法は比較的容易だが、心理的な残酷さを伴う。

筆者は2005年、アンゴラでエボラに似たマールブルグ病(出血熱)の流行を取材したことがある。ウイジェ近郊の村で、妊婦が吐血した。流行の初期であれば、夫はほぼ間違いなく、妻を看病し、自分も含め残りの家族全員が感染していただろう。だが夫は子供たちを家から遠ざけ、妻を隔離した。数日後に医者が到着したときには妻はもう死んでいた。家族は生き延びることができたが、夫が精神的に壊れてしまったことは想像に難くない。

一方、ジカには異なった残酷さがある。それは生まれてくる子供に対する不安であり、症状が軽いが故に感染地域に暮らす女性は手遅れになるまで感染したことに気づかない。

超音波検査が可能だったとしても、小頭症は妊娠最終期まで分からない場合が多い。また、中絶が合法な国でもそのように遅い時期では違法となることも多いだろう。小頭症は出産時や出産後に判明することもある。

小頭症になると、知的障害や身体障害を伴い、寿命も短くなる。世話をする負担も大きく、貧困家庭や貧しい国にとっては大変な困難となる。

罹患率や障害の程度、感染の地理的範囲はどのくらいなのかなど、まだ知らないことが多過ぎる。そのような状況のなか、妊娠している可能性のある女性に、中南米やカリブ諸国への渡航を避けるよう警告することは全く理にかなっている。だがそうした地域の国々で生活する多くの人にとっては役に立たない。

拡大する「ジカ熱」感染

拡大する「ジカ熱」感染

エルサルバドルは国民に対し、妊娠を2年間遅らせるよう前例のない措置を呼びかけた。非識字率が高く、性教育や避妊手段が非常に限られている同国で、それがどのように達成できるかはまた別の問題だ。いかなる国でもそれは不可能かもしれない。出産年齢の終わりを迎えようとしている女性は待とうとはしないだろう。

ワクチン開発に取り組んでいる米テキサス州の研究者は、10年かかる可能性を指摘する。ただ、より多くの研究者が取り組めば、もっと早くできるかもしれない。差し当たり、ジカウイルスとの闘いは同ウイルスを媒介する蚊に焦点が当てられることになるだろう。

蚊の駆除に、ブラジルはすでに多くの兵士を動員している。西アフリカでエボラが流行したときのように、米国や他の主要大国がそうした取り組みに力を貸すことも考えられるだろう。

結局のところ、エボラのときと同じように、流行が大規模なほど、感染国や感染の可能性がある国が裕福なほど、リソースは集まるものだ。最悪の事態となれば、国民が安全に子孫を残せるよう米国はどのような手段もいとわないだろう。

ジカウイルス感染が拡大するというWHOの予想が正しいとしたら、それはこれから起こることになる。それまでわれわれは、エボラのときのように、不可能に近い医療政策課題と、数えきれない数の人々の悲劇とトラウマを目にすることになるのだろう。

*筆者はロイターの防衛担当記者。現在休暇中で、PS21の理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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